人材獲得競争時代における国家公務員の人事管理・人材マネジメントの在り方について名古屋大学大学院法学研究科教授荒見玲子職員は六七・二%、「働きがいを感じる」職員も五五・六%に上る。一方で、「上司のマネジメント」「キャリア支援」「育児との両立」など、希望と実施の乖離が大きい分野も多い。特にキャリア支援に関しては、上司や人事当局との中長期的な対話の必要性が強く求められる一方で、実施度は著しく低い。育児に関しても、男女ともに希望する関与が実現しにくい現状が浮き彫りになった。国家公務員の仕事に志はあっても、進路としての選択や就業継続に躊躇してしまう人も増えるのはやむを得ない。勉強会でも、職員の酷使ありきではなく、業務の取捨選択、プライオリティの明確化や、職員個々の状況に着目した業務・人員配置の柔軟な差配等、マネジメントの重要性を認識し、機能させることがまず必要ではないかと議論がかわされた。こうした課題は、日本の公務職場の閉鎖型任用制や大部屋主義(大森二〇〇六)寄稿2025 8月号 人事院月報 人事院の総合職調査(注1)や内閣人事局の働き方改革調査(注2)では職員の勤務継続の意向が半数を割っているという。この傾向は、公務員の地位が相対的に低下していることの表れとも見えるが、少子化による人材獲得競争の激化や、官民問わず社会課題への貢献意識の高まり、そして転職市場の活性化を踏まえると、むしろ社会の成熟を示す自然な現象とも捉えられる。むしろ、国家公務員という職業が、志を持つ人々にとって「やってみたい」「続けたい」と思える仕事・職場環境であるかが正面から問われている。本稿では、新たな公務員人事管理に関する勉強会(以下、勉強会)での議論を手掛かりに、人事管理・人材マネジメントについて焦点を当てて考察する。働き方改革調査では、この五年間で「休暇の取得」「ハラスメント対応」「上司への相談」「デジタル活用」などに関して前進が見られ、「働きやすい職場」と評価する人事行政報告22 人事院では、令和5年4月から、行政を支える公務組織が、国民本位の能率的で活力があり、一人一人が躍動できる組織であり続けられるよう、今後の公務員人事管理の在り方に関し有益な知見を得るため、「新たな公務員人事管理に関する勉強会」を開催しています。 6月号では、今後の人事管理の在り方について委員による座談会を行い、その概要をお知らせしました。本号では、荒見委員、小田委員から頂いた寄稿を紹介します。新たな公務員人事管理に関する勉強会委員による寄稿
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