fle.人事院月報 No.912新たな公務員人事管理に関する勉強会委員による寄稿人事行政報告(注1)令和六年度初任行政研修を受講した総合職職員に対し採用後三か月程度で実施したアンケート調査(二〇二四年一二月二五日公表、以下、総合職調査、n=七五一)(注2)国家公務員の中から三割をランダム抽出して行った「令和六年度 ケート」(二〇二五年六月二四日公表、以下、働き方改革調査、n=六三、三二九)(注3)大森彌二〇〇六『官のシステム』東京大学出版会(注4)自発的残業と非自発的残業の詳細については、田中万理二〇二四「企業に損失もたらす長時間残業をどう減らすか」(二〇二四年四月五日掲載)等を参照。(注5)筆者が行っている共同研究(「地方公務員のキャリア形成・能力開発と働き方に関する調査プロジェクト」https://sites.)においても、地方公務員が研究対象ではあるものの、大部屋主義から生じる職場環境が女性を中心に無定量・無限定に働けない人の登用や昇進意欲を阻害している可能性があることなどが実証的に明らかになっている。(注6)内閣人事局「令和七年国会対応業務に関する調査結果」国家公務員働き方改革職員アンwslps/.jp/googcom/hgu下、高い水準で取り組む職員が多くいたからこその、日本の少ない定員での質の高い公共サービスが維持されてきており、こうした職員のモチベーションとモラールを損なわないような制度の再構築が求められているように思われる。(注3)といわれる組織単位におおまかに仕事が割り振られる、職員相互に協力しながら仕事を実施するといった行政組織の特徴から生じる働き方の問題も大きい。その結果、自発的残業・非自発的残業(注4)から長時間労働を肯定する文化が残り、個々の仕事の実績を個別に評定しにくい、人事異動が職員のためよりも組織のためになりやすいといった課題が改善しにくい。ゆえに、管理職もプレイングマネージャーになってしまい、マネジメントが十分に行われないなど、マネジメント文化が組織に蓄積されず根付かない(注5)。り、長らく維持してきた閉鎖型任用制に基づく人事管理が急速に対応を迫られる中で、こうした課題の解決には困難を伴う。第一に、業務量や業務の質など、霞が関の中だけで解決できない問題がある。第二に、職務・職責をベースとした人事運用など、ジョブ型の要素を含んだ取組の導入が提案されているものの、メンバーシップ型の組織の中で、ジョブ型の仕組みを取り入れるときに、各省庁の人事管理実務の変化や負担の増加、また人事評価を超えて職場の在り方がどう変化するのか見えにくい。第三に、近年は同じ霞が関の中でもデジタル庁外部労働市場との流動性の高まりによなど、民間企業出身者が多く勤務し、国家公務員という仕事・職場のイメージから変容している省庁と、旧来型の閉鎖型任用制を中心とした人事管理を行う省庁が混在してきている。変化の方向性を国家公務員全体として打ち出すことの難しさがあるように思われる。とはいえ、人材獲得競争時代において、どんなに公務が魅力的でも、「職員=人」に着目したマネジメントができない職場が選ばれ難くなることは必至であり改善が求められる。したがって、課題解決に向けて人事院への期待は大きい。第一に、各省庁の人事管理を人事院の専門性に基づきこれまで以上に具体的な形で支援していくこと、第二に、勉強会で共有されたような各省庁の人事管理実務における省庁ごとの興味深い取組を社会に発信すること、第三に、内閣人事局と協力しながら国会対応の質問通告の約半数が開催日の前日以降に行われるような立法府の姿勢(注6)についても改善を促すように強く訴えていく必要がある。最後に、人材獲得競争の観点から総合職の改革に注目が集まりがちだが、一般職を含む全ての職員にとって、働き方改革や職務評価の見直しが求められている。必ずやらなければいけないことを一定の専門性の23
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