外部環境を意識した人的資源管理へ―新たな公務員人事管理に関する勉強会での議論を通じて―慶應義塾大学法学部准教授小田勇樹身の志望者・就職者が漸減している点は、国家総合職の人気低下を示す一つの証左と言えるだろう。この十数年で新卒労働市場における国家公務員という職業の地位は低下していると考えられる。次に、中堅・若手職員の離職増加について見てみよう。国家総合職採用者の退職状況に関する直近の調査結果(令和七年三月末時点)(注3)を見ると、一般によく用いられる指標である採用後三年未満の退職率は五%前後で推移しており、大手民間企業と比べてもとりわけ高い値ではない。それが採用後一〇年未満の退職率になると、退職率が急激に上昇する。例えば、採用から一〇年が経過した平成二六年採用組は二三・二%に達しており、採用された職員のおよそ四分の一近くが既に退職してしまっているのである。今後の動向に関しても厳しい状況にある。採用から五年経過した令和元年採用組の五年未満退職率は一三・四%で、前述の平成二六年採用組が同じく採用五年時点で記録した退職率八・六%を大きく上回っている。若手の退職時期が早期化している可能性もあるが、五年経過時点での退職率が上の世代を大幅に上回っていることを踏まえると、今後の一〇年未満退職率が更に上昇する懸念もある。将来の幹部新たな公務員人事管理に関する勉強会改めてこの二年間の議論を振り返ると、給与水準、職場環境などの要素をどのように改善すればよいか議論してきたわけである(もちろん問題の構造はそう単純ではなく、離職者の増加が試験申込者数減少の原因になっている側面もあると考えられる。)。まず、国家公務員志望者の減少について見てみると、過去一〇年間で総合職・一般職ともに申込者は約三割減少(注1)し減少傾向が続いている。出身大学の面から見ても、東京大学新聞の調査によれば「国家総合職試験の合格者数、総合職試験での採用がある機関の就職者数」は減少傾向にある側面もあるかもしれないが、労働市場において高く評価されることが多い東京大学出(注2)。出身大学の多様化に関しては良い寄稿2025 8月号 人事院月報 (以下、勉強会)では、採用・人事・マネジメントに関する様々な議題について幅広い見地から議論を積み重ねてきた。勉強会の議論の概要に関しては人事院月報六月号掲載の座談会記事において総括されていることから、本稿では勉強会・座談会の議論を踏まえた上で昨今の公務員の人事管理が直面する社会環境について論じたい。本勉強会の議論を通底する問題意識は採用と離職の二つの問題であった。国家公務員試験申込者数の減少と、中堅・若手の早期離職増加という二つの現象に対して、その原因と考えられる採用試験、キャリア形成、24
元のページ ../index.html#26