人事院月報 2025年8月号 No.912
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国際課国際専門官はじめに田中良明研究ノート~官民意識調査データの定量分析~離職意向を左右する職場要因は何?1 使用するデータ務員の人材確保上の困難等に課題意識を発し、民間企業を人材確保競争上の競合先と考え、官民労働者の意識調査のデータ分析を通じ、公務のどこに改善の余地が大きいのかを探索したものです。分析内容は、重回帰分析による重要要因の探索、差の差分析による因果推論となります。本稿では、紙幅の都合から前者のみを御紹介します。分析には、「働く人の意識に関するアンケート〜企業と公務の比較〜」(令和四年度年次報告書・人事院)の個票データを使用します。サンプルサイズは、公務五〇〇人、民間五〇〇人です。五件法による個人に対するアンケートであり、項目は、回答者の属性として、性別・年齢・所属組織(公務or民間)・勤務地等が、固有のものとして、個人の価値観(リスキリングへの関心、専門性の重視傾向等)、職場の状況への主観的評価(組織によるキャリア形成サポート、裁量の大きさ、人員配置の適切さ等)等があります。筆者は二〇二四年四月から二〇二五年三月まで、行政官国内研究員制度を利用し、政策研究大学院大学において、人事データ分析に関する研究を行いました。同制度は、行政官を国内の大学院に派遣し博士号や修士号を取得させることで、専門的な知識等の涵養を図るものであり、複雑かつ高度化する行政需要に対応できる人材の育成を目的としています。本稿では、筆者の行った研究の内容を簡単に御紹介したいと思います。本研究は、近年の国家公人事院月報 No.912   31較~(令和4年度年次報告書・人事院)」の個票データを用いて、国家公務員の転職意向・職務熱中度・職場満足度に影響を持つ可能性のある要因の分析を行った。官民の労働者1,000人を対象としたアンケートであり、質問項目には、個人の属性(性別、勤務地等)、職場の状況に対する主観的な評価(裁量の大きさ、柔軟な働き方等)が含まれる。・重回帰分析では、官民の労働者を対象に、転職意向等に関する重要要因の探索を試みた。結果、公務における重要要因として、「風通しの良さ」と「業務・必要人員の整理」が考え得る。(※1)・差の差分析では、公務労働者を対象に、本府省での過重労働による転職意向等に関する影響の因果推論を試みた。結果、直感に反し、有意な結果は見られなかった。(本稿では紙幅の都合から割愛)※GitHub上に本文全体・分析用Pythonコード・使用したデータを公開していますので、御興味のある方は御覧いただければ幸いです。(https://doi.org/10.5281/zenodo.15719480)Point・本研究では、「働く人の意識に関するアンケート~企業と公務の比

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