人事院月報 2025年8月号 No.912
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3 おわりに想定した要素が、個人の属性を問わずポジティブな影響を持つ可能性を示唆しています。また、係数の絶対値も、当初分析とはやや結果が異なっています。「風通しの良さ」、「業務・必要人員の整理」の二つが、転職意向等に対して特に大きな影響を持っていそうに思えます(※4)。要素の当たりは付けられた感があります。最後に次節では、やや観点を変えて、それら要素のうち公務と民間で乖離のあるもの(公務の職場環境改善の観点から、特に介入余地の大きそうなもの)を探索してみたいと思います。⑷ 民間の平均値比較を行います。公務と民間で乖離の大きいものがあれば、介入余地の大きい可能性があるということになります。大きいものは「ミッション等への共感」ですが、先ほどまでの重回帰分析では相対的に影響度合は小さそうでしたので、ここでは参考扱いとします。次に乖離の大きい群は、「キャリア相談機会の付与」、「風通しさて、ここまでの分析で、概ね、重要な官民の平均値比較ここでは、各説明変数について、公務と結果は表4のとおりです。まず、乖離のの良さ」、「業務・必要人員の整理」となりました。まとめると、「風通しの良さ」、「業務・必要人員の整理」の二要素が、重回帰分析、官民の平均値比較の両面から、着目すべき要素として浮かび上がります。(ここまでの分析を踏まえ、原論文では政策提言への含意を表明しています。本稿では紙幅の都合で詳細は割愛させていただきますが、「風通しの良さ」の観点から、職場における相談機能や相互評価機能の向上、「業務・必要人員の整理」の観点から、職員の総勤務時間の管理機能の向上に関する方策に言及しています。)駆け足でしたが、如何でしたでしょうか。最後に、研究を通じて得た気付き等を共有させていただき、本稿の締め括りとしたいと思います。⑴ データ分析の有用性と限界今回初めて定量的なデータ分析を学び、その有用性と限界について認識しました。例えば、「若手の離職にはきっとあの要因が影響しているだろう」との相場観を2.753.263.20.253.093.242.9民間(その他)2.743.283.160.233.043.193.06標準偏差(全体)1.221.051.060.440.960.970.94表4説明変数の平均値比較(組織間)説明変数キャリア相談機会の付与裁量の大きさ時間・場所が柔軟な働き方ミッション等への共感風通しの良さ役割やスキルの重視業務・必要人員の整理※色分けの意味は下記のとおり(公務と民間(大企業)との比較)差が標準偏差の20%以上、30%以内差が標準偏差の5%以上、10%以内差が標準偏差の5%以内人事院月報 No.912離職意向を左右する職場要因は何?~官民意識調査データの定量分析~研究ノート公務民間(大企業)3.023.213.310.373.253.283.1835

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