人事院月報 2025年10月号 No.914
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パワー・ハラスメント防止対策としてコーチングを研究しようと思った理由国家公務員からの苦情相談は近年増加傾向にあり、その内訳としては、「パワー・ハラスメント、いじめ・嫌がらせ」が最も多くを占めています。私はそのような情報に接しながら、職員相談員として国家公務員からの苦情相談に耳を傾けていました。パワー・ハラスメント(以下「パワハラ」という。)に関する相談を受ける中で、私は「パワハラを受けてメンタル不調となり、休職に至った」「パワハラにより職場環境が悪化し、職場全体が疲弊している」といった訴えを耳にすることがありました。しかしながら、こうした深刻に思われる訴えが、実際にはパワハラとして扱われるケースが少ないように感じられ、その乖離に違和感を覚えました。例えば、当事者がパワハラを受けたと感じる行為でも、「業務上必要かつ相当な範囲」と判断され、パワハラと扱われないことがあります。このような状況を把握するうちに、次第に「たとえ業務上必要な指導であったとしても、職員のメンタル不調や職場環境の悪化をもたらすような指導がなぜ起こるのか」「どうすれば予防できるのか」一2025 10月号 人事院月報 という問題意識を持つようになりました。さらに、制度や研修といった仕組みだけではパワハラが解決できない原因は「人と人との関係性」にあるのではないか︱︱と考えるようになりました。そして、以前から学んでいたコーチングが自己認識や対話力を高め、この「人と人との関係性」に働きかけるのに有効な手法であると感じていたことから、コーチングをパワハラ防止対策に活用できるのではないかと考えるようになりました。コーチングは人との関係性に着目し、行動変容を促す手法として一般に知られています。先行研究から、コーチングが組織文化の改善や職場のパフォーマンス向上に寄与する可能性が示されていますが、パワハラ防止対策の観点からコーチングに焦点を当てた研究は限られており、現時点ではコーチングが職場においてパワハラ防止に十分に活用されているとは言い難い状況です。こうした問題意識から、私はコーチングがパワハラ防止にどのように有効であるかを示し、公務組織における新たな対策の視点として提言を行いたいと考え、その取組として、人事院の「職員による人事行政に関するリサーチ活動への支援制度」(注)を活用しました。研究ノート中部事務局第二課任用係長国際コーチング連盟ACC(Associate Certified Coach) 奥田恵美28 国家公務員の職場でパワー・ハラスメントが深刻化する中、制度だけでは解決できない人と人との関係性の課題に問題意識を持ち、コーチングがパワハラ防止に有効ではないかと考えました。 そこで文献調査と専門家や実務家にインタビューを行った結果、コーチングは心理的安全性の向上や行動変容を促す手法として、パワハラ防止に有効であることが示唆されました。パワー・ハラスメントを生まない組織文化へ-公務職場におけるコーチング導入の有用性-

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