四人事院月報 No.914パワー・ハラスメントを生まない組織文化へ-公務職場におけるコーチング導入の有用性-研究ノート パワハラ防止対策としてのコーチングの有用性では、コーチングはどのようにパワハラ防止に貢献できるのでしょうか。先行文献の調査と専門家等へのインタビューから得られた知見を基に整理します。1 組織全体の心理的安全性の構築手段としてのコーチング心理的安全性とは、職場で安心して発言や行動ができる状態を指し、ハラスメントの抑止において重要な要素とされています。そのため、パワハラ防止には、個人の意識改革に加え、組織全体の心理的安全性の向上が不可欠です。専門家等へのインタビューでは、「コーチングを受けることでコーチとのパートナー関係が築かれ、上司が相対的価値観に基づく考え方ができるようになれば、温かい太陽の光を注ぐようなマネジメントスタイルを取れるようになるため、パワハラ型のコミュニケーションを取らなくなると思う」「コーチングの「受け止める」という承認スキルを学ぶことにより心理的安全性が高い環境を作り出せる」などといった意見がありました。す。2 義は、人事院規則一〇︱一六(パワー・ハラスメントの防止等)第二条において、「「パワー・ハラスメント」とは、職務に関する優越的な関係を背景として行われる、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動であって、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害することとなるようなものをいう。」と規定されています。状況としては、苦情相談事案数が二〇二三年度に過去最多となる一、三五五事案に達し、その内訳としては、「パワー・ハラスメント、いじめ・嫌がらせ」が四四三事案(全体の三二.七%)と最多の相談内容でした(人事院、二〇二四)。受けて精神疾患を発症し、公務災害と認定された職員がいることが明らかになっています(人事院、二〇二四)。人事院(二〇一八)の調査によれば、三〇代職員の七八.二%が「強い不満を感じた上司がいる」と回答しており、上司から受けた厳しい指導について三八.三%がパワハラと感じ、五六.九%がパワハラとまでは言えないが不満を感じたとしています。さらに、内閣人事局(二〇二〇)の調査では、定年前に辞めたいと考える三〇代職員のうち二二.五%が「ハラスメント等、職場環境の悪さ」を理由に挙げています。内閣人事局(二〇二四)の調査でも、三○代職員の三五.三%が離職意向の要因として「ハラスメント等、職場環境の悪さ」を挙げており、全体平均(二九.九%)を上回っています。これらの結果は、若手から中堅層が職場環境に敏感であり、早期離職や人材流出のリスクが高いことを示唆しており、対応の重要性が増しています。このように、パワハラはメンタルヘルスに悪影響を及ぼすほか、離職率の増加と人材の流出の要因となり、さらには生産性の低下、法的リスクと経済的コスト、公務の信頼性の低下などにもつながりかねず、職員、組織、社会に深刻な影響を及ぼすと考えられます。 国家公務員の職場におけるパワハラの定義と国の機関におけるパワハラに関する相談等の状況国家公務員の職場におけるパワハラの定人事院が受けた国家公務員からの相談の公務災害補償の状況からも、パワハラを31
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