二一2026 6月号 人事院月報 不安全行動とは何か不安全行動とは、端的に言えば「不安全な行動(安全でない行動)」あるいは「安全を損なう行動」を指します。最もわかりやすい例は、違反でしょう。車両を運転する際に、制限速度を超えるスピードを出したり、高所で安全帯を着けずに作業をするといった行為は「不安全行動」とみなされます。しかし次のような場合はどうでしょうか。手順書どおりに作業を進めたのに、その手順書が新しい規則を反映していなかったため、結果として規則に反した作業をしてしまったというケースです。もちろん本人には違反をするつもりはありませんでしたが、結果的に規則から逸脱したわけですから、不安全行動とみなされます。また、次のような場合はどうでしょうか。雨が降ると滑りやすくなる廊下に、職場の人が傘を持ち込み、傘から落ちたしずくで廊下が濡れていました。そこへ、急いで駆け込んできた人が、足を滑らせて転倒。この場合、誰の、どの行為が不安全行動といえるでしょうか。一見すると、不安全行動とは、規則を破る人や、危険を顧みない人がとる行為と考えがちです。しかしこれまで見てきたケースでは、結果として不安全行動をとってしまったり、ある人の不安全行動によって別の人が被災する場合もあることがわかると思います。つまり不安全行動とは、誰もが意図せずとってしまう可能性があるのです。本稿では、まず不安全行動のプロセスについて解説し、それらを踏まえて、不安全行動の防止に向けた取組を紹介していきます。不安全行動のプロセス安全な行動をとるか、不安全な行動をとるか。この判断は、大別して三段階のプロセスを経て決定されます(図1参照)。06転倒や墜落・転落といった労働災害や作業手順の逸脱が発生する際には、多くの場合、人間の不安全行動が関与しています。本稿では、不安全行動の発生プロセスを踏まえた上で、それらを防止する取組を紹介します。リスク・テイキングのプロセス (芳賀,2000 を一部改変)図 1• 状況• 性別• 年齢• 経験• 個人差第1段階:リスクの知覚第2段階:リスクの評価第3段階:意思決定影響要因リスク回避(安全行動)主観的リスクの大きさ=事故・災害の確率× 事故・災害が起きた場合の 損失の大きさ①危険を冒せば得られる ベネフィット(利益)②危険の回避によって 生じるロス(損失)リスク・テイキング(不安全行動)文教大学 人間科学部心理学科 文教大学 人間科学部心理学科 准教授 長谷川尚子准教授 長谷川尚子寄稿職場の不安全行動について~不安全行動の発生プロセスと防止への取組~
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