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国家公務員の再任用制度

再任用の体験談

再任用の体験談

                                                  平成29~30年度再任用
(独)駐留軍等労働者労務管理機構職員

  私は防衛省所管の唯一の独立行政法人であります「駐留軍等労働者労務管理機構」に勤務して、平成29年3月に定年退職し、今はフルタイム再任用で2年目となります。平成22年4月に防衛省から当独法に出向し、総務課長を最後に退官いたしました。
 
 勤続年数38年のうち30年間、在日米軍基地への労務提供という、少し特殊な業務に携わってまいりました。現役時代は主に中央において対米交渉や組合対応などの企画立案の業務に従事しておりましたので、再任用となって初めて現場での実務を経験しております。

 まず、再任用を選択した理由からお話をさせていただきます。
 
 定年後の選択肢は4つあります。それは「再任用」か「民間企業への再就職」か「独立開業」か「完全リタイア」です。

 完全リタイアについては、公的年金の支給開始年齢が段階的に65歳へと引き上げられていますので、私の場合は、62歳になるまでは完全無収入となります。定年延長のことが話題にのぼって久しくなりますが、今年も先送りになりましたので、先は見えてきません。5年もの間、無収入ですと長年働いて得た退職金も全て食い尽くしてしまいます。悠々自適な余生なんてことは、とても言っておられません。人生100年時代をポジティブに生きるためには、できるだけ長く働き、収入を得る必要があります。

 また、平成29年度の人事院の調査によりますと、定年退職者のうち60歳以降も働く意思を持つている人は84.4%、そのうち再任用を希望する人が78.5%だそうです。私の場合も、多くの定年退職者がそうであるように、働くのであれば、たとえ給料が下がっても、定期的な収入があり、これまでの自分の経験が多少なりとも活かせ、かつ、知人が多く、組織の事情がよく分かっているところで働き続けた方が、精神的に楽だという理由から再任用を希望した次第です。

 この判断には、私が係長時代、退職自衛官の就職援護の仕事に2年間携わった経験も影響していると思います。
 当時は、自衛官だけでなく定年退職の事務官の就職援護も同時に行つておりましたので、求人開拓のためにハローワークや民間企業をかなり回っておりました。バブル崩壊の後でしたから、有効求人倍率も今と違い、全国平均で0.6ぐらいまでに落ち込んでいました。ですから60歳を過ぎた人が就職をすることなど不可能だというイメージが今も頭に残っています。そのことが潜在的に再任用を選択させた遠因にもなっていると思います。仮に、現役時代に社会保険労務士や司法書士といった国家資格を取得していたならば、また違った選択肢もあったかもしれませんが、今、それを言っても詮無いことです。

 次に、フルタイムかパート夕イムかの選択についてです。

 恐らくどこの省庁も同じだと思いますが、人事が退職予定者に対して、1年前に決めてもらわなければならないことは、再任用を希望するかどうかということもさることながら、フルタイム又はパートのどちらを希望するのかということです。なぜなら、フルタイムは定員内のポストへの配置になりますが、パートタイムは定員外ですので、次年度の予算概算要求を行わなければならないからです。退職年度の4月から5月頃に意向調査があります。ですから、定年の前年には、定年後どのような働き方をするのかということを決めておかなければなりません。そして、フル又はパートの選択は、それぞれの家庭環境、経済状況、健康状態によって異なってきますので、家族ともよく相談し、その決定をしっかり人事に対して意思表示しておく必要があります。

 ただ、この選択において考慮すべき重要なポイントがあります。その一つは、再任用は給与が安いということです。私の場合、現役最後と比較すると約6割の減収となりました。イメージとしてですが、せいぜい手取りで20万円程度。特に1年目は住民税が前年の収入に対してかかってきますので、20万円を切ります。ましてパートはフルの按分となりますから、手取額は言わずもがなです。
 また、ボーナスは支給月数が現役時代の約半分なのですが、実額は1/3以下です。この点はよくよく覚悟しておく必要があります。

 そして、もう一つ考慮すべき重要なことは、通勤時間の問題です。 
 私は現在、千葉県に住んでおりまして、横田支部は青梅線の昭島に事務所がありますので、通勤に片道約2時間を要しています。現役時代、防衛本省は市ヶ谷でしたし、本部は田町でしたので、通動時間は片道1時間程度のものでした。これが現役時代と逆だったら良かったのですが、60歳を超えると目に見えて体力が衰えてきますから、2時間の通動、往復4時間は苦痛となってきます。フルタイムの勤務は長続きしません。もし、勤務官署に遠い近いの選択肢があるようでしたら、是非とも、できるだけ近い勤務官署を選択されるようお勧めします。

 次に、配置先とポストについてですが、これについては各省庁の人事がそれぞれの基準に基づき、全体の人事異動調整の中で決めることですので、ここで私から申し上げられることはありません。
 因みに、私の場合、再任用1年目は、沖縄支部の課長代理のポストに配置されました。配置されたというよりは、自分が決めたというのが正しいかもしれません。それは総務課長は人事も担当しますので、春の人事異動調整の中でどうしても沖縄支部の課長代理が埋まらない。じゃ、私が行こうかということで1年間単身赴任しました。単身赴任は現役時代に岩国と浜松の2回経験がありましたので、生活面は苦になりませんでしたし、経済面においても単身赴任手当と広域異動手当合わせて約10万円が加算されましたので、何とか生活することはできました。むしろ、現役時代に沖縄勤務の経験がありませんでしたから、新鮮でとても楽しい良い経験ができました。妻にも旅行ができて、喜ばれました。勤務官署に遠方の支局や支所がある方は、こういったことも選択肢になるかもしれません。

 次に、再任用として働く時の心得です。4月1日、その日を境に全てが変わります。仕事が現役時代と比べ、質、内容、量ともに変わるのはもちろんのこと、人間関係も作り直しです。

 まず、仕事について言えば、”指示をするのではなく、指示を受ける側。人を動かすのではなく自分が動かなければならない立場”になります。このことは頭では分かっていても、現実にその日になってみなければ実感できません。例えば、咋日まで課長だった人が、今日からは専門職又は係長になるのですから当然と言えば当然なことです。これまでの自分の専門部署に配置されたならば、周りの人も過去を知ってくれているので、ある程度敬意を持って接してくれますが、専門外の部署に配置されたならば、周りは、本人がこれまでどんな環境や立場で仕事をしてきたかなど、全く関係ない。特に、若い人はその人が仕事ができてしっかり働いてくれるかどうかの尺度しかない。仕事ができなければ、自分が仕事のフォローをしなければならないのですから、厄介な年寄りが来たとしか思ってくれません。ですから、還暦を迎えても、なお一から人間関係を作っていかなければならないという大変な気力と労力が必要となります。たまには食事や飲みに誘うなど気遺いも必要かもしれません。

 一方、上司との関係の方がもっと大変です。私もそうでしたが、いや、今も時々そうなんですが、「仕事のやり方はこうすべきだ。ああすべきだ。」とつい言いたくなる。今までとは違う意識で仕事に向かわなければならないと分かっていても、ついつい熱くなってしまう。過去を引きずっている時があります。経験上、そうした時は職場の雰囲気が悪くなります。偉そうなことを言うようですが、60歳になったら、自分は何のために仕事をしているのか、常に自問することが必要です。肩書があった昔をひけらかし、横柄な口を利く、頭ごなしに説明する。態度が不遜など、あるべき働く姿ではありません。元の肩書など何の役にも立たないことを肝に銘じておかなければなりません。

 最近になって、私も少しづつ職場に慣れてきて、上司との関係では一歩引いた仕事が、部下・係員との関係では制度を教える代わりに実務を教わるというギブ・アンド・テイクの関係が構築できて来たように思えます。ともかく気持ちの切り替えには時間がかかります。

 次に、現役時代に準備しておくべきことについてお話をさせていただきます。

 まず、「気持ちの切り替え」が必要だということは先ほどもお話したとおりです。現役時代から意識しておくことが重要だと思います。 
 次に、経済面で言えば、再任用は給与・賞与が少ないですから、生活費で一杯一杯なので、自宅のリフォームや家電製品の買い替えなど少しまとまったお金がかかることは、50代後半にやっておくと良いと思います。マンションのローン返済もしかりです。
 また、個人年金を早い時期から積み立てておいて、60歳から支給される人もいるようです。

 次に、仕事への対応です。

 もし現場業務に配置になる場合は、業務車両の運転が必要となりますから、ぺーパードライバーの人は自動車教習所で講習を受けてください。2月~3月は学生の免許取得が多いので、どこの教習所もぺーパードライバー講習は休講となります。ですから1月までの予約となります。私も35年間ぺーパードライバーでしたので、教習所に通いました。今に思えば良かったなと実感しています。

 それから、これは些細なことですが、パートは共済組合に加入できませんので、パートを選択される方は60歳までに人間ドックを受けられることをお勧めします。

 最後になりますが、私の職場には、これまで再任用はフルタイムの制度しかありませんでしたが、来年度以降、パートタイムの制度が導入される予定だと聞いております。次第に体力が衰えていく中、選択肢が増えることは喜ばしいことです。
 ただ、一方で、人生は一度限り。これまで家族のために一生懸命働いてきましたので、今後は少し自分のペースで家族とのコミュニケーションも大切にしつつ、市民大学講座の受講や家庭菜園、ボランティア活動などに自分の時間を多く使いたいと考えており、来年度以降、働くことと自分の時間との比重をどうしたものかと思案しているところです。

 皆様方におかれましては、これからご自身の定年後のライフプランを設計されていくわけですので、私の話が少しでも、そのお役に立てばこの上ない喜びです。