人事院を知る
人事院とは?
公務員は、憲法により「全体の奉仕者」とされ、職務の遂行に当たっては、中立、公正性が強く求められます。このため、公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを目的とした国家公務員法に基づき、人事行政に関する公正の確保及び国家公務員の利益の保護等に関する事務をつかさどる中立・第三者機関として設けられた機関が人事院です。

人事院の役割と組織
人事院は、人事官3人(うち1人は総裁)をもって構成される合議制の機関です。人事官は国会の同意を経て内閣により任命され、その任免は天皇により認証されます。
人事院にはその事務部門として事務総局が置かれ、事務総長の下に内部部局としての5課・2室(官房部局)及び4局のほか、公務員研修所、9地方事務局(所)から構成されています。
また、人事院には、国家公務員法及び国家公務員倫理法に基づき国家公務員倫理審査会が設置されています。


各局のご紹介
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職員福祉局
職員福祉局では、公務員にとって働きやすい職場となるよう、勤務時間や休暇を中心とする各種制度の整備を行っています。育児や介護をしながら安心して働き続けることができる支援策の充実、長時間労働の是正に向けた取組、ハラスメントの防止対策、過労死等の防止や心の健康づくり、安全対策、公務上の災害を受けた場合の補償制度など、一人ひとりが尊重され、能力や経験を発揮して活躍できるような改革を進めています。
国家公務員は、地位の特殊性と職務の公共性から、給与だけでなく勤務時間や休暇についても、民間企業のような労使交渉ではなく、国会が制定する法律で規定されており、制度改定に当たっては、中立・第三者機関である人事院が公務員の利益の保護を図りつつ、社会一般の情勢に適応するよう勧告等を行います。
また、公務員は全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務することが求められるため、民間企業の従業員とは異なる服務義務が課せられています。職員福祉局では、規律違反の場合の懲戒制度に関する業務も行っています。
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人材局
人材局では、採用試験・任用制度全般の企画・立案を行うほか、国家公務員採用試験が適正かつ公正に行われるよう、その企画と実施に関する事務や試験問題の作成を行うとともに、多様な有為の人材を誘致するための活動を行っています。
また、行政課題の複雑・高度化に対応し、組織活力を保つためには、採用年次や合格した採用試験の種類などにとらわれず、女性職員の登用を含め、真に能力・実績に基づいた人事管理を推進することが極めて重要です。成績主義に基づく公正な任用を確保するため、人事評価の結果を任免等に反映する制度、官民人事交流・任期付職員など民間人材を採用する制度等の企画・立案等に取り組んでいます。
さらに、人材の育成も担当しています。国民全体の奉仕者としての使命感や多角的な視点の涵養など、公務に求められる人材を育成するための研修の企画・立案・実施を行い、時代の要請に応じた国家公務員の計画的育成に努めています。このほか、国際的な業務に対応できる人材の育成のための海外留学制度を企画・実施しています。
このように人材局は、成績主義の下、人事行政の公正性の確保を図るという目的を達成するため、各種施策を展開しています。
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給与局
給与局では、労働基本権制約の代償措置として国家公務員の給与を民間に準拠した適正なものにするための人事院勧告(給与勧告)や俸給(民間企業の基本給に当たるもの)・手当を決定する基準の策定、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(給与制度のアップデート)、高齢期の雇用・給与施策の検討等に関する業務を行っています。
給与は、国家公務員の重要な 勤務条件の一つであり、職員の日々の生活に直結するものです。国家公務員に社会一般の情勢に適応した適正な給与を支給することは、職務に励んでいる職員の努力や実績に報いるとともに、組織活力の向上を通じて、行政の効率的、安定的な運営に寄与するものです。
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公平審査局
公平審査局は、①職員が懲戒処分等を受けたことに不服がある場合の不利益処分についての審査請求、②勤務条件に関して適当な措置を求めたい場合の勤務条件に関する行政措置の要求、③公務災害の認定等について不服がある場合の災害補償の実施に関する審査の申立て、④給与の決定に苦情がある場合の給与の決定に関する審査の申立てからなる、公平審査制度を所管しています。
また、このほかに、職員から勤務条件その他の人事管理に関する苦情相談を広く受け付け、解決に向けた対応を行っています。
公平審査制度は、中立・第三者機関である人事院が、使用者と職員との間に生じた人事管理に関する苦情、紛争を中立・公正に裁定することにより、職員の利益保護のみならず、人事行政の適正かつ能率的な運営を確保するものです。
このため、公平審査局では、それぞれの所定の審査手続にしたがって、できる限り迅速かつ適切に事案の処理を行うよう努めています。
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国家公務員倫理審査会
公務に対する国民の信頼を確保するために、国家公務員が事業者の方々と接するに当たっては、一定のルールがあります。例えば、契約の相手方、許認可の申請者、立入検査を受ける方々などの「利害関係者」から、金銭・物品の贈与や供応接待を受けることなどが禁止されています。
国家公務員倫理審査会では、このような国家公務員の倫理保持のルールに関する施策を推進しています。具体的には、倫理制度に関する検討、公務員倫理に関する研修やセミナーの企画・実施、各府省等の倫理保持に関する取組への支援、贈与関係など各種報告書の審査、倫理法等違反の疑いがある場合の調査などを行っています。また、国家公務員が守るべきルールは、公務員だけでなく、相手方となる事業者の方々の理解・協力が必要であるため、広く経済団体等に対する啓発活動も行っています。
さらに、国家公務員倫理審査会では、次ページで紹介する「三本の柱」を重点課題と位置付け、社会情勢の変化や関係各方面の御意見などを聴取しつつ、様々な倫理保持施策を展開しています。
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官房部局
官房部局は人事院の「司令塔」です。
人事院が推進する政策の企画立案を統括・調整するほか、人事院の政策実施について、その効果を把握・分析し評価したり、事業予算の内容や効果を点検したりするなどして見直しや改善を行い、PDCAサイクルを回しています。
また、人事院の人事、会計といったバックオフィスの業務のほか、人事院規則などの法令の審査、各界の有識者や報道機関の方々との公務員制度等をテーマにした意見交換の企画・実施 、広報誌やSNSによる情報発信を行っています。
そのほか、国民生活の向上等に顕著な功績があった国家公務員を表彰する「人事院総裁賞」の企画・運営や、外国政府との国際協力事業の実施、人事行政関係の国際会議への出席等の国際協力・国際交流などを通じて、各府省におけるより良い人事管理や人事運用を促進したり、各府省の人事管理や人事院業務のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進にも取り組んでいます。
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公務員研修所
公務員研修所は、各府省の行政運営の中核を担う職員を対象に、役職段階ごとに行政研修を実施する人材育成の現場です。
行政研修には各府省や民間を含めた様々な職場から研修員が参加し、第一線で活躍する講師陣からの講義のほか、研修員同士による発表や討議、現場体験などが行われます。研修を通じ、国民全体の奉仕者としての使命感の醸成や、府省の枠にとらわれない広い視野と柔軟な発想などの行政官に求められる資質・能力の向上、政府職員としての相互理解と信頼関係の構築を目指しています。
カリキュラムの企画や講師を務める教官室、研修の実施・運営に係る業務を担当する教務第一課・教務第二課、研修所の会計・施設管理などを担う総務課で構成されており、若手、中堅、ベテランを問わず、全ての職員がそれぞれの強みを活かし、集合研修とオンライン研修のベストミックス、ICTを活用した研修員・実施側双方にとっての研修業務の効率化などに一丸で取り組んでいます。地方自治体への派遣再開、マネジメント能力向上のための研修のほか、自治体・企業とのコラボレーションにより現場の最前線を学ぶプログラムなど、各種研修の充実・強化・新規開拓を進めています。
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地方事務局(所)
総務課:総務・会計業務及び各機関職員に対する研修の実施
総務課は、総務係、職員企画係及び研修係からなり、局内の総務・会計事務に加えて、管内各機関に対する服務、懲戒及び職員団体制度の適正な運用に向けた指導のほか、各府省の地方機関職員に対する研修や指導者養成研修を実施しています。
第一課:給与・勤務時間等に関する適切な運用の確保
第一課は、給与係及び公平勤務係からなり、管内各機関に対する各種説明会の実施や監査・調査等の実施を通じて、人事行政全般の適正な運用の確保に努めています。また、人事院勧告に向けて民間企業の給与の実態を調査するなど、様々な業務を行っています。
第二課:採用試験・募集活動の実施
第二課は、任用係及び試験係からなり、募集活動、国家公務員採用試験の実施及び採用候補者名簿の管理といった、受験者が国家公務員を志望するところから採用に至るまでの様々な業務を担っています。また、国家公務員の任用制度が適正に運用されるように、調査や研修を実施しています。