特集記事01 | 公務員研修所の仕事の魅力とは?
人事院の組織の一つとして、埼玉県入間市に各府省の職員を対象に研修を行うための公務員研修所があることを皆さん知っていますか?
初任行政研修や課長補佐級、課長級といった役職段階ごとの研修のほか、一般職試験からの採用者向けの特別課程など、様々な研修の企画や実施を行っている組織です。
公務を担う国家公務員一人ひとりの力を最大限に引き出し、公務の質を高めていくために、日々知恵を絞りながら奮闘しているSさんの体験談は必見です!
令和3年3月作成
Nさん:昨秋にSさんが担当する研修に参加した1年目男性職員
Sさん:公務員研修所で指導教官を務める17年目男性職員
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では早速お伺いしたいのですが、Sさんは研修所ではどのようなお仕事を担当されていますか?
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まず、研修所の役割をズバリ一言で表すと、行政運営の中核となることが期待されている幹部公務員を養成することです。研修所のスタッフは、「国民全体の奉仕者としての使命感の向上」、「資質、能力の向上」、「研修員間の相互理解・信頼関係の醸成」を三つの柱として、行政研修における充実したカリキュラムの提供に努めており、毎年約3000人の方々が受講しています。その中でも私は、行政研修のカリキュラムをつくる部署の指導教官として、研修を運営する教務部と連携しながら、担当する研修の科目設定や講義にお呼びする講師の選定だけでなく、当日の司会・進行のほか、教材開発や研究等も行っています。
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まさに日本の行政をリードしていく人材を育てる役割を担っているんですね。人事院の職務内容の中では、ここまで「企画」が活かされる業務はなかなか無いかもしれませんね。実際、カリキュラムや講師の選定において意識されていることはありますか?
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カリキュラムや講師の選定においては、様々な媒体にアンテナを張るということを大事にしています。書籍や雑誌はもちろんですが、テレビ、インターネット上のニュースやSNSなども含めて「旬」なテーマや講師を見つけてくるように心掛けています。理想をいえば、今後「旬」になるであろう分野を先取りできるとなお良いですね!
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なるほど!国家公務員は、今起きている時代の変化への対応だけでなく、数年後、場合によっては十数年後を見据えた施策を打ち出すことが求められるので、「旬」を捉えることは非常に大事ですよね。では、このような指導教官としての仕事において、Sさんはどのようなところにやりがいを感じていますか?
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私は特に若手行政官が研修を通じて成長していく瞬間に立ち会えることにやりがいを感じています。もともと高い志と能力を持った「研修員」の皆さんも、連日、目の前の業務に追われると、自らの能力を磨く機会や、府省を跨いだ同期との横のつながりを積極的に作ることは難しいのが現状です。研修員の皆さんに、職場を離れ、多様なカリキュラムに触れる中で、まだまだ未知の分野があること、そして、高い志をもった仲間がいることに気付いてもらうきっかけとなるような場を提供したいという思いが強いですね。
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僕自身も、どうしても目の前の業務に向き合うことで精一杯になってしまいがちなので、一旦通常業務を離れて初任行政研修に参加し、省庁の垣根を越えて同期の皆さんと共に時間を過ごせたことは非常に大きな経験となりました。せっかくなので、ここからは、初任行政研修の裏側についてもう少しお伺いしたいです!
Q2 今年度の初任行政研修について
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そもそも初任行政研修とは総合職として採用された1年目の職員が受講するもので、例年であれば5月から7月にかけて5週間で実施しています。講義や討議にとどまらず、地方自治体や介護施設などの現場にそれぞれ1週間ずつ訪問に行く体験プログラムを研修員に提供しています。今年度は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて、開催時期を8月末以降に遅らせるとともに、地方自治体や介護施設への現場訪問が見送られ、期間も1週間への大幅な短縮となりました。Nさんをはじめ、皆さんも残念だったと思いますが、研修所職員も、研修員の健康や安全と、対面で行う研修の重要性を天秤にかける中で非常に難しい選択を迫られました。
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もちろん、現場訪問等が無くなってしまい、少し残念に感じる部分はありましたが、このような状況下においても、研修を開催していただいたおかげで、他府省の皆さんと交流することができたので、感謝の気持ちでいっぱいです。そして、このような状況下においても研修を行うことの意義を感じました。実際、研修の開催中も様々な感染症対策をしていただいていましたよね。
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そうですね。1年目の皆さんにとって重要な研修機会を確保したいとの思いから、研修1コース当たりの人数を減らし、いわゆる「3密」を避けるとともに、消毒の徹底や日々の検温の実施、更には講義室や談話室の収容人数を制限するなど、様々な対策を取りました。これは研修所側としても力を入れましたし、研修員の皆さんにもご負担をかけたと思います。しかし、そのような徹底した感染対策と、研修員の皆さんや所属省庁のご理解、ご協力もあり、無事に初任行政研修を実施できたことは喜ばしいことでしたし、やりがいを感じました。
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確かに研修中はそのような感染症対策という制約を感じる場面もありましたが、Sさんや研修所の職員の方々は、常々僕たち研修員の意見に耳を傾けてくださり、共用スペースの使用ルールの修正などに柔軟に取り組んでくださった姿がとても印象的でした。僕と同じ班の研修員も、「初任行政研修を受講することができて良かった。」と言っていましたよ!
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そう言ってもらえると嬉しいですね!研修実施中は、気が抜けない時間が続きますし、研修員からは厳しい意見をもらうこともありますが、研修終了後に「ありがとうございました!」と声をかけていただく瞬間の喜びは何事にも代えがたいですね。
Q3 今後の研修の在り方について
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最後の質問になりますが、研修における今後の課題や目標をお聞かせください!
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やはり現在のコロナ禍に対応した新しい研修の形を作っていくことが課題になると思います。従来の対面式の研修のブラッシュアップに加え、オンライン研修の活用に取り組んでいます。
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研修で取り上げる内容だけでなく、研修の手段や方法についても時代の変化に対応していく必要があるということですね!
まず対面式と言えば、初任行政研修の「チームビルディング」として、班対抗の「しりとりリレー」対決を行いましたが、想像以上に盛り上がって楽しかったです(笑)あのプログラムもSさんが考えたのでしょうか? -
今回新しい試みとして、短期間で研修員の皆さんの横のつながりを作る観点から、班別にゲーム形式で仲良くなってもらう「チームビルディング」を導入しましたが、実は、研修所内で若手職員が集まって考えたものなんです。もともと、研修所には若手職員の提案を積極的に取り入れて、採用する気風があるのですが、特に今年はこれまでの常識では乗り越えられない課題がたくさんあったので、若手職員の皆さんの柔軟なアイデアにはとても助けられました!
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研修員と年齢が近い若手職員の皆さんだからこそのアイデアだったんですね。他の研修員と打ち解ける良いきっかけとなりました。では、一方で、オンライン研修の活用への取り組みについてはいかがでしょうか?
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初任行政研修でもいくつかのコマで実施しましたが、Web会議システムを用いて、遠方に在住されている講師の講義を行うことや、研修員も含めて完全にオンラインで実施した研修もありました。これまで対面での研修を原則としていた研修所にとって、実施に至るまでには機材の導入、環境の整備から始まり、試行錯誤の連続でしたが、この点についても職員が協力して知恵を出し合い、徐々に完成度を高めていきました。今後も新型コロナウイルス感染症については予断を許さない状況であり、オンライン研修の需要は高まっていくと思います。オンラインだからできること、オンラインでは足りないものを見極めて、対面式とオンラインの良さを掛け合わせた「ハイブリッド」な研修を作り上げていきたいと考えています!
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前例が無い挑戦の中でも、研修所の皆さんが一丸となって、オンラインを活用した研修の実施に取り組まれていた様子が目に浮かんできますね! では、最後にこれから人事院で働きたいと考えている皆さんに一言お願いします。
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学校ではオンラインで講義を受け、就職活動においても説明会や面接がオンラインで行われたりと苦労されている点も多いのではないでしょうか。若手職員の皆さんのアイデアを大事にしつつ、時代の変化に対応していく職場風土がある公務員研修所は、皆さんのその苦労や経験をいかせる場でもあると思いますので、ぜひ皆さんとご一緒に働けることを楽しみにしています!
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僕自身、人事院への就職前に研修所の仕事の様子についてお話を聞く機会がほとんど無かったので、人事院への就職を考えている皆さんにとっても非常に貴重なお話になったと思います。本日は本当にありがとうございました!
NEXT INTERVIEW
特集記事02
先輩に聞いてみた ~仕事と育児の両立体験記~
実際に育児休業制度を利用した人事院職員へのインタビュー記事です。
制度を利用した感想、働き方の変化、職場の雰囲気について職員が語ります。