2024年度版技術系ガイド

財務省(税関)
技術系職員の活躍貢献     職員紹介

  税関はその名の通り、「税」と「関」に関する役割があり、いずれの役割にも化学分析が貢献しています。「税」に関することとしては、輸入品に課される関税は含有する成分やその割合などによって税率が異なる場合があり、分析職員が成分の定性・定量を行うことで輸入申告審査を支援しています。「関」に関することとしては、税関検査を受けた貨物に覚醒剤や麻薬といった不正薬物の疑いがある物品が発見された際に、法律で規制される薬物を含有するか、また、どの法律で規制される薬物種であるかを特定する鑑定を行います。税関での分析対象は、食品、鉱物、金属、化学品、プラスチック・ゴム製品等と多岐にわたるため、多様な専門性を有する職員が活躍しています。

 
 

 東京税関本関庁舎前
 


 石油製品の蒸留性状の確認試験

 海外から輸入される物品は国際的に統一された品目表(関税率表)により分類されていて、その品目の分類ごとに関税率が決められています。例えば、石油製品は、石油の含有割合や蒸留性状などにより分類が細分化されているため、それぞれ専用の機器を使用して物性の確認を行います。税関の分析業務は、分析対象が幅広いため、使用する分析機器も幅広く、大学では見たこともない機器を使用することもよくあります。
 


 NMRによるプラスチック製品の分析

 プラスチック製品に加工されるプラスチックの粒(一次製品)は、ポリマーを構成するモノマーユニットの種類や含有割合によって税率が変わります。プラスチックの分析では、赤外分光光度計(FT-IR)や核磁気共鳴分光光度計(NMR)などを使用して、モノマーユニットの定性・定量を行います。同じ高分子材料でも、ゴムの一次製品は、税関にゴムの試験を行う装置が配備されていないため、より高度な分析を行える関税中央分析所に分析を依頼します。私も現所属の前は関税中央分析所に出向していました。
 


 薬物の鑑定

 密輸される不正薬物の形態は、純粋な結晶から、錠剤、紙片、植物片など様々であり、有機溶剤等での抽出作業を経て、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)の機器分析により薬物種を特定します。以前から密輸件数が多い覚醒剤や大麻のほか、最近は規制薬物と化学構造が類似する危険ドラッグが次々に登場し、その流通が世界的に問題になっています。新たな薬物は分析手法が確立されていないものもあり、その都度、文献調査や条件検討を行い、適切な分析手法を模索します。
 
    

 

職員紹介

 
飯泉 美弦

財務省東京税関調査部検察第9部門

総合職(化学・生物・薬学)
 
2020年 財務省関税局業務課総括係
2021年 財務省関税局関税課第二参事官室関税協力係
2022年 財務省東京税関羽田税関支署旅具通関部門
2022年 現職

※職員の所属(役職)は、原稿執筆時のものを記載しています。

水際の最前線で、あらゆる「モノ」に立ち向かう

 
 
◇ 国家公務員になろうと思ったきっかけ
 所属研究室の博士の先輩が公務員になったとき、技術系でも公務員になれるのだと初めて知りました。その後説明会等で職員の国内外での活躍を目にし、興味の幅が広いという自分の特性を鑑みても、公務員が合っているのではないかと思い志望しました。
 
◇ 記憶に残っている業務
 ベルギーのWCO(世界税関機構)で開催される国際会議に出席したことが印象深いです。WCOは約180か国が参加している国際機関であり、その会議では税関制度の標準化等が話し合われます。コロナのため、現地に行くことはなかったのですが、各国のスタンスや注力する分野の違いを見ることができ、「国際貿易」というフィールドでは日本のことだけ考えるのではなく、協調していくことの重要性を身をもって感じることができました。
 
◇ 日々の仕事
 関税局での日々の仕事は、例えば会議資料作成をする際にはまず会議資料を読み込み、自分なりに整理したうえで上司とミーティングをしてどういった方向性で進めていくか、きちんと話し合います。そのほか、幹部への説明資料作成、ロジ手配、国会や広報に関する各課からの依頼処理、データ分析等を日々行っています。税関では、密輸事犯の犯則調査のため、内偵や家宅捜索等、外出して行う仕事も多いです。
  
◇ 仕事の面白み、やり甲斐
 財務省税関の面白みは、水際機関であるが故にありとあらゆるモノを扱うというところにあると思います。そのため、文系・理系の垣根を越えて、想像以上に幅広い経験ができます。コロナワクチンの迅速通関制度や税関のIT活用に係るWCOでの会議では理系出身の強みをいかせている一方で、関税交渉の場では知らないことばかりです。自分の強み+新しい知識を駆使して、密輸取締・テロ対策・国際交渉・税徴収・・・これらすべてを経験できるのは財務省税関ならでは、ではないでしょうか。
 
◇ テレワークの経験
 関税局では頻繁にテレワークを行っていました。業務内容はほとんど出勤時と変わらず、メールチェック・資料作成・会議ツールを利用した班内ミーティング等で、不都合は感じませんでした。 特にテレワークの恩恵を感じたのは、ベルギーのWCOで開催される国際会議に出席する仕事をしていた際です。時差があるため、テレワークと時間差勤務を併用していました。会議が終わるのが夜遅いので、会議終了後すぐに寝支度ができたのは身体的に楽でした。
  
◇ ある1日のスケジュール
09:00 登庁
10:00 メールチェック
11:00 知的財産侵害物品犯則調査のため外出(張り込み等の内

11:00 偵調査)
12:00 昼食
13:00 資料作成
15:00 班内ミーティング
18:00 退庁
20:00 趣味の習い事

 



 
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