特許庁
  
          
  
 
職 員 紹 介
  
   
目黒 大地  
 
特許庁 審査第一部 調整課 審査調査室 主査  
平成23年採用 Ⅰ種(理工Ⅰ)  
 
稲垣 彰彦  
 
特許庁 審査第二部 動力機械(自動走行システム)  
平成23年採用 Ⅰ種(理工Ⅰ)  
 
   
緒形 友美  
 
世界知的所有機関(WIPO) 日本事務所・参事官  
平成24年採用 Ⅰ種(理工Ⅳ  
 
   
岩井 一央  
 
特許庁 審査第四部 電力システム 審査官  
平成24年採用 Ⅰ種(理工Ⅲ)  
 
       
坂田 麻智      
     
特許庁 審査第一部 環境・基盤意匠 審査官      
平成16年採用 Ⅰ種相当〔意匠学〕      
 
     
岩永 寛道      
     
特許庁 総務部 総務課 調整班      
平成27年採用 総合職(工学)      
 
     
高橋 武大      
     
特許庁 総務部 総務課 情報技術統括室 情報技術企画班      
平成28年採用 総合職(工学)      
 
     
川原 光司      
     
特許庁 審査第一部 調整課 審査企画室 課長補佐      
平成25年採用 総合職(工学)      
 
     
堀内 建吾      
     
特許庁 審査第三部 審査調査室・副査      
平成28年採用 総合職(化学・生物・薬学)      
 
     
瀨戸井 綾菜      
     
特許庁 審査第一部 応用光学 審査官      
平成30年採用 総合職(工学)      
  

目黒 大地 
 
特許庁 審査第一部 調整課 審査調査室 主査
 
平成23年採用 Ⅰ種(理工Ⅰ)
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
電気・電子工学
 
◇ 志望動機は?
  理系として学んできた自分の知識を存分に生かした仕事ができると思ったから志望しました。学生の頃、就職した先輩たちの話を聞いていると、あまり自分の学んできた知識を生かす場面が少ないという話を聞きましたが、特許庁では比較的理系の知識を生かせる場面が多いと聞き、魅力を感じました。一方、行政官としての経験を積み、行政官としての道を進んでいくという選択肢もあり、広い可能性を感じたのも魅力の一つです。
 
◇ 採用後の経歴は?
 最初は「計測」という特許審査室に配属され3次元測定装置やレーダー、GPSなど、主に長さや位置を測定する技術の審査を行いました。そこで5年審査をした後、「審査推進室」という部署に異動しました。ここは、特許審査で重要な、過去に似たような技術が存在したかを調査する「先行技術調査」を、外部にアウトソーシングする調整を行う部署です。行政官として、およそ2000人弱の特許審査官と2500人程度の外部検索者の橋渡しを行う非常に重要な業務を行いました。そこで丸1年業務を行った後、今度はまた審査官として、技術系職員の採用担当を行いながら、電子ゲーム、学習システム、玩具、スポーツ関連技術などの審査を行いました。「自然資源」という審査室なのですが、どのあたりが「自然」なのでしょう・・?笑
 2年弱審査をした後、今度は「普及支援課」という部署で中小企業支援を行いました。運がいいことに技術系職員としては初めての着任で、ここでの業務が一番楽しかったです。ここで1年7ヶ月業務を行った後、オランダのユトレヒト芸術大学に1年間留学し、研修等にゲームの楽しさを応用する「シリアスゲーム」について学んできました。そして現在、「審査第一部調査室」に配属されており、物理系・光学・土木系の技術などを審査する審査第一部全体の業務の企画・立案などを行っています。
  
◇ 日々の仕事の様子は?
 審査官としては、かなり時間の融通が利いた働き方ができます。基本的に特許審査は一人で発明の理解、先行技術の調査、判断を行うため、今日はどこまでやるか、明日はどの案件を審査するかなど、自分で決めることができるので、これ以上のワークライフバランスはないといえるほどの仕事です。もちろん、分からないところを聞いたり、相談しながら審査をすることも可能なのでご安心ください!
 一方で、行政官としては、常に上司や同僚、部下と相談するなど、グループでの仕事を行います。また、外部の業者と庁内で打ち合わせたり、ときには出張して見学、打ち合わせを行ったりなど、常にコミュニケーションを求められます。中小企業支援を行っていたときは、実に1年で70回以上の出張・外勤を行いました。もう一生分の出張を経験したと言っても過言ではありません笑
 私は人と話しながら仕事をする方が好きですし、かといって理系の知識を生かしながら自分のペースで特許審査をするという働き方に不満があるはずもないので、ここは最高の職場だと感じています。
 
◇ 専門性はどのように活かされていますか?
 私は学生の頃は光を用いた変位計測の研究をしていたため、計測という審査室に配属されて、主に光を用いた距離計測技術の審査を担当させてもらえたのは、専門性がそのまま生かせた例だったといえます。ここまでぴったりとくる例は多くはないですが、審査第一部であれば、部屋によって物理や光学、土木系の基礎知識は必ず生かせますし、審査第二部~四部でも、機械、化学、電気といった専門の基礎知識は審査の上で常に必要とされます。
 中小企業支援においても、単に行政官としてでなく、技術系職員であることで、支援先企業の技術的な課題を理解し、サポートできるのも大きな強みです。
 ちなみに私はゲームが趣味なので、電子ゲームの審査においても専門性が大いに生かされました笑
  
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
  特許審査という仕事は、出願人側の自分が最新だから権利が欲しいという主張と、審査の過程で発見した過去の技術を天秤にかけ、合理的なロジックの組み立てによって特許法の下で判断を下すという、ある種裁判官のような業務です。これはとても責任のある仕事ですが、その反面やりがいはあり、非常に面白いと感じられます。自分の専門分野であればなおのことです。
 行政官としての仕事はこれとは全く異なり、一つの大きなプロジェクトを達成したときにやりがいを感じます。例えば、審査推進室では、先行技術調査のアウトソーシングに関する経済産業省令の改正を担当しましたが、これには過去の経緯を調べ直したり、関係部署と何度も調整したりしながら改正後の省令を作成するうえ、他の法律とずれがないかなど、一言一句が厳しく審査されます。とても労力を要する仕事でしたが、実際に省令が改正されたときは非常に大きな達成感が得られました。
 
◇ 自己の成長を実感したエピソードは?
  審査業務を通し、論理的な思考がかなり鍛えられました。もともと自分はそこまで論理的に考える人間ではなかったですが、学生時代の友人と会って話すときなども、理屈っぽく話すようになったと感じます(「適宜」のような審査官用語もついついよく使います笑)。
また、中小企業支援で中小企業向けのセミナーを数多く行うなかで、プレゼン力がかなり鍛えられたなと実感します。聞いている側がうまくなったと言ってくれるかは分からないですが、少なくとも自分の中では、おっくうだったプレゼンが今では楽しみとすら感じられるようになっています。
   
◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は?
 審査官のワークライフバランスは最高です。審査官の中にも、審査をしながら審査以外の業務も担当している方もいますし、必ずしも常に時間の融通が利くわけでないですが、平均的に言って少なくとも霞ヶ関ではNo1でしょう。
 行政官としての業務はグループワークが多いので、審査官に比べて時間の融通は利きにくいですが、月一休暇を取るためにみんなでサポートし合ったり、忙しくない時期はむしろ休暇が取りやすかったりなど、審査官でなくてもワークライフバランスはとりやすいです。
 
◇ 今後関わっていきたい政策課題などは?
 国際的な業務にはほとんど関わったことがないので、他の先進国との制度調和や、途上国の成長支援など、日本から海外への出願が増える中で、出願人からの要望も多いこれらの政策課題に携わっていきたいと考えています。
 
 (令和4年12月)

稲垣 彰彦 
 
特許庁 審査第二部 動力機械(自動走行システム)
 
平成23年採用 Ⅰ種(理工Ⅰ)
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
鋳造工学
 
◇ 志望動機は?
●ニッポン知財の本丸
もともと知財には関心があったのと、配属された研究室の研究テーマの先輩全員がたまたま国家公務員志望だったので、これが掛け合わさって特許庁を目指すことにしました。それまでは企業の知財部を狙おうと思っていましたが、特許庁は日本の知財が集まるところ。「せっかくならドまんなかを狙おうじゃないか!」と。 それから説明会などに何度も足を運び、職員や執務室の自由闊達な雰囲気に惹かれ、官庁訪問に至りました。

●あなたのやりたいことは
官庁訪問では本省(経産省)にも行きましたが、ここで自分のやりたいことは特許庁にあると改めて確信しました。その時本省は選びませんでしたが、その後本省に出向して仕事することはできました。このように、特許庁の審査官が他省庁の業務を担当する機会はありますが、逆のパターンは見たことがありません。だから特許庁に来てよかったと思います。
  
◇ 採用後の経歴は?
●技術のプロになるために
特許審査は主に乗り物の部品や制御に関する技術を担当してきました。机上の特許審査だけではなく、企業の方との意見交換や工場見学、学会や技術講習・実習への参加などもあります。このご時世では難しいかもしれませんが、意外と現場を見る機会は多かったです。私は、5年目には海外学会出張(ドイツ)、9年目には留学(オーストリア)の機会ももらえました。もちろん審査するだけではなく、特に若手のうちは、課内の業務が円滑に進むようにマネジメントの下支えも担当し、我々の仕事がどう回っているのかを学びます。年次が上がってくると、庁の目標に沿って課の取組みを考えて実行することもあります。

●管理される側から管理する側へ
審査官に昇任してしばらくするとほぼもれなく原課(特定の事業を推進する部署)業務などを担当することになります。私の場合は、7年目に、特許分類改正などに伴う庁内データ修正作業に従事し、各審査室と外注機関とのパイプ役を務めました。また、当時庁内システム改造が予定されていたので、どういうシステムだと担当作業がスムーズに進むのかを考え、庁内のシステム担当とすり合わせしました。続いて8年目には、私の所属する審査第二部全体のマネジメントのサポートをすることになりました。部内の審査処理に関するデータをまとめ、進捗を管理したり、部の窓口として他部署や庁外とのやりとりをしたりしていました。

●転職したかのような本省業務
10年目に化学業界を所管する部署に出向しました。蓄電池や半導体などに関する国家プロジェクトのマネジメントや国家戦略の立案・更新、所管企業にヒアリングして施策を企画したり、逆に企業の方のお困りごとや要望を聞いて政策ツールを案内したりして業界との良好な関係づくりに尽力しました。そのほか、議員会館に赴いて国会議員の先生がたに業界の状況や技術をご説明する機会もありました。
  
◇ 日々の仕事の様子は?
●多様な業務
審査業務など特許庁が行う業務については、特許庁の採用パンフなどに紹介されていますので、ぜひそちらもご覧ください。以下の点を追加情報として挙げます。
・先行技術調査はなにも特許文献だけに限りませんので、企業のプレスリリースや技報、ウェブニュース、国家プロジェクトの報告書なども先行技術文献として使います。バイクのライトやマフラーといった部品の発明に対しては、google画像検索で探したり個人のカスタマイズを書いたブログの記事を使うこともありました。また、先行技術調査の一部を外注機関に委託しています。彼らの調査結果を聞いて審査に役立てるとともに、よりよい調査結果を持ってきてもらえるように彼らの指導をすることも重要な業務です。
・技術や法律、語学に関する研修は豊富ですが、若手のうちには、長期間の法律・実務研修をパスしないと審査官になれない、という重たいものもあります。もちろん研修とは別に審査業務もあるので、長期間で予定を組んでこなしていく必要があります。
・周辺業務として課室や部の運営や取組に関した業務も担います。例えば、外注機関への発注や、部内全体に役立つことを企画・実行するワーキンググループ活動などがあります。

●中央省庁も社会の一組織
庁原課での管理業務は、所定目的の定例業務をベースに、所掌業務に問題があったときの解決や、上長からの突発的な依頼への対応などを行いました。これは庁に限らず企業などどの組織も同じではないでしょうか。本省原課の業務内容についても基本的には上記のとおりですが、特許庁からの出向だからといって特別なことはなく本省職員と同じように働いていました。働きぶりについては他省庁の方のページをご覧ください。
  
◇ 専門性はどのように活かされていますか?
●発明の理解
確かに大学で学んだことがすべて活かせるかというとそうではないかもしれません。しかし、出願書類は論文同様、課題→手段→効果、の流れで書かれています。発明の理解とは研究開発のプロセスのトレースです。これは実際に研究していた人でないと理解できないかもしれませんね。

●一生勉強
自分の専門と異なる分野で採用されたら不安に思うかもしれません。ただ、学問的な知識は大学の教養レベルで十分です。もちろん教養知識ですべてカバーできるわけではありませんが、審査をするにあたっての技術的な知識については、今でも配属後から勉強です。そういう意味で、興味がある分野は増やしておいたほうがいいと思います。自分は車や鉄道、飛行機など乗り物が好きなので、プライベートでも調べたり実際に乗ったりしますが、これが審査に役立つときがあります。また勉強する習慣は、まったく違う分野を担当することになった本省出向でも役立ちました。
 
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
●無言の論争
「自分が特許にした技術が使われた製品が売られてたり報道されたりするとやりがいを感じる」と他の審査官から聞くことがありますが、自分の場合は機械部品とか制御プログラムとか目に見えないものばかりでしたので残念ながらそのような実感はありません。ほかには「毎日新しい技術に触れられる」ということもありますが、毎日というほどではないように思います。
審査の醍醐味とは書類を通じた特許出願人との議論ではないでしょうか。相手の主張を論破するためロジックを考えたり、どのあたりが落としどころなのか駆け引きをしたり。ただ、忘れてならないのは、なにも発明を完全否定するのが仕事ではないということです。われわれが拒絶理由通知を書くのは、その発明に余計なもの(今後特許の有効無効の争いの火種になりそうなもの)が残っていると思っているからであって、特許を付与したあとでその特許にケチがつかないように、という気持ちを持って出願に対峙しています。

●安定稼働
自分の担当した庁内の原課業務は管理業務でしたので、審査部全体、部内全体の業務を 円滑に回すために気を張ってないといけないことが多かったです。しかし、審査官が審査業務を淡々とこなすことができるための裏側の動きや、組織の運営に参加できたのはいい経験になりました。審査官に戻ったときに、ひとつひとつの業務の意味が理解できるからです。ただ、マネジメントは業務が円滑に回ってあたりまえなので、うまくやっても誰にも感謝されなかったのが少し残念です。

●国民のために
本省原課では政策立案や国家プロジェクトに関わりましたが、プロジェクトのための億単位の予算を財務省に認めていただいたり、所管企業が補助金など政策ツールを活用できるよう相談に乗ったりして、企業活動を支援しました。こちらは人の役に立つことがダイレクトに実感できましたので、やりがいはとてもありました。
 
◇ 自己の成長を実感したエピソードは? 
●3年で4倍
審査官補のうちは目標とする処理量が毎年増えていきます。自分の場合は3年間で4倍でした。単純に同じ時間で処理量が上がれば成長したなと思います。また、案件の処理期限に追い立てられるのではなく、自分のペースでこなせるようになりましたし、難しい案件や分厚い書類の束になっている案件も、いまでも大変だなぁと思いつつも、淡々とこなせるようになりました。先行技術を探せば探した分だけ効率的になりますし、拒絶理由通知などは書いたら書いた分だけ文章力や論理力が上がります。これらは全部成長といえますね。そして、業務を頑張っていい評価をもらえれば給料の上げ幅も大きい。これは目に見える成長の結果です。

●成長をいつ実感するか
審査業務に限らず、実際業務をしているときには「俺、今成長してる!」とはなかなか感じないものですよね。では、成長を実感するときはいつなのか考えてみますと、自分が他人に認められたときではないかと思っています。抽象的ですが、まずは庁や省の運営に携わらせてもらえる、これは上長や幹部に自分の力や可能性を認めてもらえたからこそです。そして、自分が提案したことを、結果的にはうまくいかないことも多かったですが、取り合ってもらえたこと、これは議論するに値すると思ってもらえるものを生み出せるようになったということです。そして、誰かがやりたいと思っていたことを部分的にでもできるようにしてあげられた、これは成果もついてくるので大いに達成感があります。
 
◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は?
●自分に合った働き方
私は朝型なので、平日の生活スタイルは、6時すぎに登庁してひと勉強、7時に業務を開始して15時半までには退庁。こどもを保育園まで迎えに行って妻が帰ってくるまでに夕食を作り、22時には就寝です。休前日には妻にお迎えを頼んで残業することもありますが、いまはそんなにガツガツ残業するのが褒められる時代ではないのでご安心ください。審査業務は基本ソロワークなので、多様な働き方が選べます。休暇も希望どおり取れなかったことはありません。今の課には、10時から勤務開始する先輩や、勤務時間をフレックスにしている後輩もいます。

●こどもの成長を目に焼きつけたい
男性職員でも、長短はあれど産休・育休はしっかり取得している印象です。私は1か月ほどしか取りませんでしたが、育休明けは周りの理解、協力もあって早く帰らせてもらえました。上で述べたように、コンスタントにお迎えにも行けていますので、子育てとの両立はしやすいと思います。こどもの成長は本当に早いので、その瞬間のこどもと過ごす時間を大切にしたいですよね。
 
◇ 今後関わっていきたい政策課題などは?
●やっぱり乗りもの!
モビリティ分野(特に、自動運転や空飛ぶクルマ、高速鉄道)はいま世界中で注目の領域。時代が変わろうとしています。日本企業が戦う舞台は世界中なのに対して、われわれが付与する特許は日本国内でしか有効ではない。では、審査官はなにができるかというと、特に国際出願をしっかり調査することではないか。日本企業が世界に通用する特許を現地に持っていけるようにサポートできればと思います。

●知財に閉じずに
モビリティ分野に限らず、技術に強い日本を取り戻すには、日本企業のみならず世界中の企業を呼び込んで、日本で技術開発してもらわなければなりません。そのためには、資金面の援助や法規制などの環境整備も重要です。政策立案は苦手ですが、政府の技術エキスパートとして、他省庁や自治体などに協力できたらと思います。
 
 (令和4年12月)

 
緒形 友美
 
世界知的所有機関(WIPO)日本事務所・参事官
 
平成24年採用 Ⅰ種(理工Ⅳ)
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
生物物理化学
 
◇ 志望動機は?
 一つ目は日々最新技術に触れられることです。
 学生時代、実験だけでなく自身の研究に関連する論文を通じて最新動向を知ることも楽しい時間でした。特許審査も審査対象案件や先行技術文献を通じて現在開発が進められている最新技術に触れられる仕事であり、研究に力を注いでいた当時の私にとって大きな魅力でした。
 二つ目は法律を扱いながら理系の知識を生かせることです。
 理系に進んでしまったものの、好奇心から法律の授業を覗いていた自分にとってこれほど興味深い仕事はありませんでした。
 三つ目は研修制度が充実していることです。
 今まで経験のないことを職業として選ぶのは不安かもしれませんが、私が就職活動中に説明を聞いた中で、特許庁が最も研修が充実していると思いました。詳しくは特許庁の採用パンフレットに掲載されていますし、個別業務説明に参加して職員に実際の声を聞くこともお勧めです。
  
◇ 採用後の経歴は?
 1~3年目までは審査官の見習い(審査官補)として座学やOJTを通じて法律や実務を学びました。当時所属していた審査室(有機化学)は、医薬関連からプラント関連まで広い分野を所管しており、別分野の出願に触れたときは直前の案件との違いに驚きました。業務に慣れるまでは大変でしたが、指導審査官をはじめとした優しい先輩方からの手厚い指導とサポートのお陰で、特許審査という専門的な仕事をなんとか理解することができ、無事審査官に昇任することができました。
 入庁6年目には、特許出願を分析する調査業務を担当したり特許庁幹部と企業との意見交換会をサポートしたりする部署(審査調査室)に配属されました。調査業務のスケジュール管理をしながら幹部周りの多様な業務を経験することができたことは大きな学びとなりました。
 入庁7年目には入庁時とは異なる審査室(化学応用)に配属になり、新しい技術分野の審査を経験させてもらえることになりました。今まで審査経験のなかった化学の応用分野でしたが、身近な製品につながるものも多く、毎日次の案件を楽しみにしました。採用担当も兼任し多くの学生の声を聞くことができ、とても充実した日々でした。
 入庁9年目にはシステム関係の部署に配属になりました。特許庁を支える多くのシステム、私が関わることができたのはほんの一部でしたが、全特許審査官が日々触れるシステムの刷新に携わることができたことで視野が広がったと思います。
 その後、食品担当の審査官を経て、入庁11年目からは、世界知的所有権機関(WIPO)日本事務所勤務となりました。
 
◇ 日々の仕事の様子は?
 現在は、世界知的所有権機関(WIPO)日本事務所で働いています。
 WIPOとは、国際的な知的財産権制度の発展を所管する国際連合(UN)の専門機関であり、本部をジュネーブに置いています。
 知的財産という言葉を知らない方々に知的財産について知ってもらうための日々の広報活動や、日本国内で生まれた知的財産に関わるサクセスストーリーを掘り起こし、世界に発信していく仕事に関わっています。
 他にもWIPOではPCT制度等の国際出願制度を所管しており、制度を利用しているユーザーの皆様との意見交換をする機会もあります。
 
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
 入庁してみて特許審査は想像していた以上に広い技術分野を経験できる仕事だと思いました。多種多様な技術に触れられるので知的好奇心の強い方に向いているのではないかと思います。
 審査の助けとなるならば語学研修、大学聴講、実地研修を受ける機会もあるため、得られる知識の広がりは計り知れません。
 審査以外の業務についても企業との意見交換会、技術動向調査、情報システム周辺、世界への情報発信と幅広い業務に携わることができる魅力的な仕事だと感じています。

           
  (令和4年12月)

岩井 一央 
 
特許庁 審査第四部 電力システム 審査官
 
平成24年採用 Ⅰ種(理工Ⅲ)
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
地震波の可視化
 
◇ 志望動機は?
 文理融合領域に関心があり、特許審査官は技術にも法律にも関わりながらの業務となる点で興味深いと感じました。また、特許技術を生み出す発明者たちは、よりよい製品や方法の実現のために日々改善を重ねています。そのようなポジティブな思考・活動のループの中に身を置ければと思い、特許審査官を志望しました。
  
◇ 採用後の経歴は?
  入庁後はA/D変換器やD/A変換器、パルス発生回路等の電子回路の審査を行う部署に配属されました。大学院での研究とは異なる領域でしたが、指導審査官の下で技術と法律を習得しつつ、審査の手順を学びました。3年の審査官補の期間を経て審査官に昇任した後は、アンテナや導波管、光通信、無線通信技術の審査も経験し、担当できる技術の幅が広がりました。
 6年目には審査官のいわばマニュアルである審査基準を管理している審査基準室に異動し、国際業務を担当しました。日本を含め世界150か国以上が加盟している特許協力条約について議論するため、世界知的所有権機関の本部があるスイスのジュネーブに行って国際会議に出席したり、コンピュータソフトウエアに関連する発明の審査手法について東南アジアの特許庁に講演しに行ったりするなど、特許審査官以外の業務に携わるのは初めてでしたが、1年間で6回の海外出張を担当させてもらいました。
 8年目から10年目には米国留学を経験しました。渡米後約半年で新型コロナウイルスによるパンデミックが発生してしまいましたが、法科大学院で米国の特許法や商標法、著作権法といった知的財産法を学び、LL.M.(法学修士)を取得することができました。現地に行って生活することで、日本とは異なる生活様式や考え方を体感することができ、様々な場面で交渉したことはよい経験になりました。
 米国留学後には日米欧中韓の五庁からなる協力の枠組みを担当しました。各庁のAI関連発明の審査手法の情報収集・共有を行うプロジェクトの開始に合意できるよう調整したり、各庁が出願時に要求する図面の様式の共通化に向けて論点を整理したりしました。
 現在は電線・ケーブル関連の審査を担当しており、電線を被覆する高分子化合物から電線上を自走して劣化状態や障害物を監視する装置、電線を地中に埋設するための管、ケーブルに配置場所等を示すために巻き付ける札までバラエティに富む出願を審査しています。
 
◇ 日々の仕事の様子は?
  特許の審査では、まず出願書類を読んで背景技術、発明者が見いだした課題、その課題を解決するための手段、出願人が求める権利範囲を理解します。次に、過去に同じ発明が存在しないか、出願された発明が容易に思いついたものでないかといった特許要件を満たすかどうかの確認を行うため、関連する文献を検索します。最後に、審査の結果を出願人に通知するための文書を作成しています。
 審査官は各自が独立して業務を行う時間がメインになりますが、グループ員と互いに相談したり、必要に応じて出願人や発明者と面接を行ったりしています。また、学会や展示会、セミナー等に参加して、担当する技術分野の最新の知識を得るようにしています。
 
◇ 専門性はどのように活かされていますか?
  入庁時に配属されたのは電子回路を審査するグループでした。そこでは、電子回路に関する出願を審査する際に必要な技術面及び法律面での知識を身につけることで、入庁後に獲得した専門性が審査の妥当性・効率性を向上させていったと思います。
 なお、同期の半数程度が大学や大学院で専門としていた分野、あるいは関連する分野に配属されたと記憶しています。そのような場合には入庁後すぐに技術面の専門性を活かすことができますが、多くの分野には全体的なシステムの出願もあり、幅広い知識が必要になります。特許審査官に限らない話ですが、常に学ぶ姿勢、当初の目的に関係なく獲得した能力を活かす姿勢が重要であり、特許審査官の場合には基礎的な理系の素養が求められていると感じています。
 
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
  審査業務の中で多様な新技術に接する機会があることは、特許審査官のいわば特権で、常に知的好奇心をくすぐられます。完成形を認識しやすい分野では、自らが特許査定した技術が製品化されるのを目にすることもあります。
 特許審査官は妥当な特許権を設定することによって、発明者がただ乗りを心配せずに創作をし、公開をすることをサポートしています。努力が正当に評価され、イノベーションが生み出され続ける社会を維持する一端を担っていることがやり甲斐になっています。
 
◇ 自己の成長を実感したエピソードは? 
  日々接している特許出願が、発見した課題とその課題に対する解決手段を提示する構造になっているからか、常に改善の思考を持てるようになった気がします。ほとんどの業務では前例が存在しますが、当初は合理的な方法であったものの、環境の変化等で不合理になっているものもあります。
 五庁の協力枠組みの担当をしていた時期は、コロナ禍によりウェブ会議システムを使った会合が依然として続いている状況でした。五庁が同時にウェブ会議に参加できる時間帯は時差の関係で2時間程度に限られるため、物理会合が行われていた頃と異なり、電子メールを用いた書面での意見交換とウェブ会議システムを用いた口頭での意見交換からなる2段階の議論をしていましたが、庁内の意見調整プロセスは物理会合を行っていた時代の前例を引きずっており、必ずしも現状に合ったものとなっていませんでした。そのため目的から逆算したプロセスを考え、より的確な応答を可能にしつつ、関係部署の負担を軽減するための改善を行いました。また、ウェブ会議用の機材も使いづらい部分があったため、担当部署にプレゼンして新たな機材を導入してもらい、より意思疎通しやすい環境を整備したこともありました。
 留学の経験も貴重なものでした。留学先の米国で銀行口座を開設する手続やアパートを借りる手続、大学の授業を受けるための手続は交渉の連続だったので、帰国後は英文メールが届いても驚いたり身構えたりせずに対応できるようになりましたし、海外庁との意見のすり合わせも苦にならず粘り強く対応できるようになったと感じました。
 
◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は?
  特許審査の仕事は、各審査官に出願が割り振られ、割り振られた出願の審査を通常数か月程度の指定された期間内に行っていくものなので、仕事のペースはメリハリをつけてコントロールできます。例えば、土日祝日と平日の休暇を組み合わせて旅行に行ったり、午前あるいは午後を休暇として買物や映画、食事に行ったりすることができます。私は、母校の野球部の手伝いをしていたことがあり、休暇を使って夏合宿に参加したり、大会の応援に行ったりしています。
 また、審査第四部の野球部に所属し、春と夏に行われる大会に出場しており、共通の趣味を通じて業務上の関わりはない職員とも交流する機会を持てています。
 日々の業務時間についても午前7時から10時30分までを基本的な範囲とした勤務開始段階の設定があり、また、フレックスタイム制度も利用できるので、各自の生活スタイルに合わせて柔軟な働き方が可能です。私の場合、朝は息子を保育園に送っていくため、早い時間帯の勤務は難しいのですが、無理なく出勤、業務を行う環境が整っています。
 
◇ 今後関わっていきたい政策課題などは?
  企業がグローバルに活動、展開される世の中にあって、特許は各国独立の制度として成り立っています。グローバルな権利取得の負担を少しでも減らせるように手続の合理化や国際的な協力体制の強化等に携われればと考えています。
 
  (令和4年12月)

  
坂田 麻智
 
特許庁 審査第一部 環境・基盤意匠 審査官
 
平成16年採用 Ⅰ種相当〔意匠学〕
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
工業デザイン
 
◇ 志望動機は?
 大学院の時に、研究成果を仲間と一緒に特許出願をしたことで、知財に関心を持つようになりました。
 自分の学んできた専門である工業デザインの知識を業務に活かせるため、意匠審査官に魅力を感じました。
  
◇ 採用後の経歴は?
 入庁後4年間の審査官補の期間に、それまで全く触れたことのなかった法律や審査業務の基礎を様々な研修やOJTの形で先輩から学びました。また、審査官となった後は、様々な分野(産業用ロボット、医療用品、テレビ、プレハブ住宅、珍しいところでは配管用管など)の意匠審査を経験しました。
 その他、法律改正、国際業務、政策立案、制度立案、法解釈である審査基準の検討など、意匠行政に関わる様々な部署を経験し、一年間の米国留学でデザインの先端を学ぶ機会も頂きました。 
 
◇ 日々の仕事の様子は?
 出願されたデザインが、世界で最も新しいデザインであるのか、容易に創作できたデザインでないのか等の観点で、特許庁のデータベースに格納されている既にあるデザインとの比較をし、法律に定められた登録のための要件を満たすのかどうか審査をしています。そして、審査の結果を文書として出願された方にお送りしています。このような文書は、なるべく平易な表現で出願された方にポイントが伝わりやすくなるように努めています。
 時には出願された企業のデザイナーと直接お会いして、そのデザインの創作のポイントや背景等をお聞きしたり、担当分野の最先端デザインの展示会等に参加することで、そのデザインに対する理解をより深めることもあります。
 また、現在私は意匠の審査で使用する製品の分類を国際標準に合わせて改正するプロジェクトに参加していますので、そのための作業やメンバーでの打ち合わせ等を行っています。 
 
◇ 専門性はどのように活かされていますか?
 出願されたデザインを把握し、その創作のポイントを正しく理解するためには、そのデザインの背景にあるデザイナーの意図や、そのデザインを実現するための技術も含めて理解する必要があります。そのためには、学生時代に学んだ工業デザインの知識は非常に役立っていると思います。 
 
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
 日々、最新のデザインに触れられることです。
また、きちんとした権利を設定することによって、企業の健全な経済活動に直接役に立っているという実感がある点だと思います。 
 
◇ 自己の成長を実感したエピソードは? 
 何かを検討する時に、まず法律を見て根拠条文を確認するようになりました。 
 
◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は?
 休日は家族と一緒に近場の温泉に出かけることを楽しんでいます。
また、平日早く帰れる日には、業務後に語学研修を受講したり、趣味の茶道やヨガの教室に通ってリフレッシュしています。
 
◇ 今後関わっていきたい政策課題などは?
 権利化後の活用促進や、意匠という枠に縛られずに知財全般に関わるような業務に携わっていきたいです。 
 
  (平成28年11月)

  
岩永 寛道
 
特許庁 総務部 総務課 調整班
 
平成27年採用 総合職(工学)
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
土木
 
◇ 志望動機は?
 社会全体の役に立ちたい。理系の素養を生かしたい。専攻に縛られたくはない。そんな漠然でわがままな私のイメージに合致していると感じたことが志望のきっかけです。特許審査官と知財行政官という性質の異なるキャリアを交互に歩めることも私にとっては魅力でした。
  
◇ 採用後の経歴は?
 最初の約5年間は遊技機の特許審査を担当しました。新規入庁者のほぼ全員が特許の素人なので、入庁から約3か月間は研修でみっちり特許審査の基礎を学び、それ以降も(私は学部卒なので)4年間は審査官補として指導審査官からのマンツーマン指導をいただきながら、仕事を覚えていくことができました。
 次の1年半は特許分類の改正に携わりました。世界各国の特許文献に共通の記号でアクセスできるように整備されている国際特許分類(IPC)を技術の進展等に応じて改正していくIPC改正プロジェクトの取りまとめ等を担当しました。
 その後の3年間は、車両の試験、気密性の試験、検体の自動分析など、物の分析についての特許審査を担当しました。審査対象の技術分野が変わると、新たな技術に触れることはもちろんですが、調査で重視される媒体の種類(特許文献、論文、雑誌、Webサイトなど)や、適用頻度の高い特許法の条文も変わることが多いので、学びは尽きません。また、技術系職員の採用担当として、各種イベントの実施や官庁訪問の運営にも携わりました。
 そして現在は、システム開発やAI活用、予算要求や講演会への登壇などさまざまな業務に携わっています。 
 
◇ 日々の仕事の様子は?
 特許審査官にはバランス感覚が重要だと思っています。出願書類を読んで発明内容を理解して、過去に類似の技術があったか調査し、特許法や審査基準に基づいて特許性を判断して、判断結果を起案する。特許審査は基本的にその繰り返しですが、スピードを求めすぎて質の低い審査をしてはいけませんし、質ばかりを求めて過剰な残業をしたり出願人を待たせすぎてもいけません。スピードと質のバランスを取るためにも、審査官同士で相談したり、研究開発の現場を見せていただいたり、企業等の方々と意見交換したりと、俯瞰することを心がけていました。
 一方、知財行政官には密なコミュニケーションが求められます。庁としての意思決定を行う会合の運営や、関係課室を代表した講演への登壇や、システム更改への対応など多くの方に協力いただく業務が多いため、日頃からの情報共有に努めています。 
 
◇ 専門性はどのように活かされていますか?
 どの分野の特許審査であろうと、学生時代に培ってきた理系の素養や卒業論文の経験は、発明内容の理解や、特許性の判断結果を起案する際の論理的な文章構成に役立っていると実感しています。 
 
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
 審査する度に産業の発達に寄与していることを実感できる。とまでは言いませんが、特許権という独占的な権利を付与した発明が市場に出回っているのを見かけたときは、思わず回りにウンチクを語りたくなるような嬉しさがあります。 
 
◇ 自己の成長を実感したエピソードは? 
 ある検査装置の出願について、発明者や代理人の方々と面接審査を実施することになりました。書面主義を原則とする特許審査において、面と向かって審査内容の議論ができる機会はあまり多くありません。技術的にも法律的にも建設的な議論ができたと内心満足しながら片付けていると、先方から「どちらの学科をご卒業ですか?」と質問がありました。何か至らない点があったかと恐る恐る「土木系の学科です。」と答えると、「ニッチで複雑な弊社技術を正確に理解されていたので、思わず聞いてしましました。」と嬉しいお言葉をいただきました。専攻外であっても一人前の特許審査が出来ていると実感できた瞬間でした。 
 
◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は?
 テレワークやフレックス、時短勤務などの制度を活用している職員が多い印象です。特に審査官は働き方を自分で調整しやすいので、終業後の予定をドタキャンしたことはありません。
 
◇ 今後関わっていきたい政策課題などは?
 専攻に縛られたくないと言っておきながらも、土木分野の特許審査に一度は携わってみたいです。 
 
  (令和6年12月)

  
高橋 武大
 
特許庁 総務部 総務課 情報技術統括室 情報技術企画班
 
平成28年採用 総合職(工学)
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
建築学
 
◇ 志望動機は?
 大学・大学院での研究生活において民間企業と共同研究を行う機会があり、その過程で、建築分野内外の技術の面白さや、技術開発・商品化することの難しさ、技術者たちによる閃き・アイディアの重要性を知りました。特許庁では、特許出願や文献調査という形で様々な技術に触れることができ、世の中の様々な技術やアイディアに対して適切な評価を与えることによって個人・法人問わず多くの方の活動を支えることができます。このことに大きな意義を感じ、特許庁を志望しました。
  
◇ 採用後の経歴は?
 入庁当初の5年間は「運輸」という審査室に配属され、自動車に取り付けられる部品(サスペンション・ホイール・電装品等)の審査を担当しました。この間に、庁内研修やOJTを通じて審査業務で求められる法律や基準を学ぶ一方、私は自動車に関連する経歴を有していないことから、自動車に関する講義を扱う大学に通う大学聴講や、自動車メーカーでの工場見学や技術研修等に多く参加し、自動車技術に対する理解を深めました。
 その後、特許庁内の「情報技術統括室」という部署へ異動し、庁内職員や外部ユーザーが先行技術文献調査をする際に利用する検索・照会システムの、運用保守業務やシステム改造プロジェクトに携わりました。
 情報技術統括室での1年半の任期を終えた後、再び審査部へと異動することになり、家電製品等の審査を行う「生活機器」という審査室に配属されました。その課室では、自身の審査業務だけではなく、入庁して間もない審査官補の指導担当も行い、以前の審査室よりも更に幅広い業務を担当しました。
 その後、再び情報技術統括室に配属され、現在は、庁内全体の情報システムについての予算管理や、今後の情報システムのあり方を企画・検討する業務に携わっています。 
 
◇ 日々の仕事の様子は?
 先に述べたとおり、現在は特許庁内の情報システムの予算管理を担当しており、庁内の職員だけではなく、財務省、会計検査院、デジタル庁といった外部機関に対して資料の作成やプレゼンを行うことがあります。過去には外部からの、情報システムの契約や予算に関する情報公開請求にも対応したことがありました。情報システムや予算に関わる様々な関係者と協働しながら、日々の業務に取り組んでいます。 
 
◇ 専門性はどのように活かされていますか?
 審査対象となる発明のなかには数学・工学に基づいた学術的な内容を含む場合があり、その発明を理解するにあたって、私が建築学を専攻する過程で培ってきた材料力学や振動工学の知識が活かされたことはありました。
 専門性を高める上で土台となっている知識や経験は、審査業務のなかで活用できると思います。 
 
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
 審査の過程で出願人と面接・電話応対する場合がありますが、発明の実物に触れてその効果を実感したり、出願人に審査の意図を的確に伝えた結果、出願人にとってより良い権利設定をすることができたときに、この仕事の面白さややり甲斐を感じます。また、以前、自動車に乗って信号待ちをしていたときに、私が特許付与した発明の技術が目の前の自動車のバックドアに採用されていたことがあり、審査官として関わった技術が世の中で利用されていることを実感でき、この仕事に携わって良かったと思いました。 
 
◇ 自己の成長を実感したエピソードは? 
 発明の内部構造やその仕組みの理解に時間を要する技術分野を担当した際、初めはその審査に多大な時間を要していたものの、日々の審査経験の積み重ねによって発明を理解するスピードや正確性が向上して自身の審査処理量や質につながっときや、その結果もあって自分自身だけではなく審査官補の指導を任されるようになったときに、自分自身の成長を強く感じました。 
 
◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は?
 審査業務は、それぞれの審査官が独立して業務をこなす時間が多く、個人で仕事のペースを管理することができるため、仕事とプライベートを両立することは難しくありません。突発的な業務が発生することも殆ど無く、自分自身や家族の予定を中心にしたスケジュール調整ができます。
 一方、国際業務や制度設計担当、情報システム担当のような、行政官として特許庁全体をサポートする部署に配属されている場合、カウンターパートと連携しながら業務を進めることが多く、審査業務に比べると時間の融通が利きづらい場合があります。しかしながら、審査業務と同様に、勤務開始時間の選択やフレックス制度、テレワークといった多様な業務形態に対応していると共に、周囲のメンバーと持ちつ持たれつ業務に取り組める雰囲気づくりがなされています。
 実際、私は旅行・野球観戦が趣味ですが、いずれの部署においても、任された業務をこなしつつ、海外旅行や、国内旅行がてら地方球場へ野球観戦に行くような時間を確保できており、特許庁はワークライフバランスが整った職場であると強く感じています。
 
◇ 今後関わっていきたい政策課題などは?
 特許庁が作成している年次報告書等にもあるように、日本ではまだ、中小企業や、地方団体、大学等の教育機関で知的財産が十分に普及しているとはいえないため、このような相手に対して更に知的財産が身近になるような制度設計に関われれば良いと考えています。
 また、これまで情報システムに関わる部署に2度配属されているので、その経験を活かし、知的財産に関するデータ提供やシステム利用の観点から、特許庁や知的財産が抱えている様々な課題にアプローチしていきたいです。 
 
  (令和6年12月)

  
川原 光司
 
特許庁 審査第一部 調整課 審査企画室 課長補佐
 
平成25年採用 総合職(工学)
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
数理情報科学
 
◇ 志望動機は?
 小さい頃から根っからの理系で、特許庁に興味を持ったのは、いろいろな技術に触れられそう!という至って単純なきっかけでした。その後、業務説明会に参加し、特許審査だけではなく、知的財産に関する企画立案や国際業務にも携わる機会があることを知りました。特許庁での業務や働き方について理解するにつれて、次第に、こうした特許庁でしかできない業務に魅力を感じて、官庁訪問で特許庁に足を運ぶことに決めました。
  
◇ 採用後の経歴は?
 入庁してまずは半導体技術の特許審査を行う部署に配属されました。大学の専攻は数理情報科学でしたので、全くなじみのない技術分野でした。最初の1,2年目は、特許審査のやり方も分からないし、半導体の技術も分からないしで非常に苦労したのを覚えていますが、指導審査官や同じ部署の先輩方が丁寧に指導してくださったおかげで、徐々に特許審査の手法や半導体技術に関する知識を身につけることができました。
 入庁6年目には審査基準室という部署に異動となりました。特許庁は、特許審査における判断基準として審査基準を作成していて、全ての特許審査はこの審査基準に沿って行われます。その名前のとおり、審査基準室では、この審査基準を管理しており、私はその中でも国際関係の業務を担当しました。国際業務ということで、国際会議への参加や海外特許庁の職員との意見交換のために海外出張する機会も多くありました。初めて国際会議に参加したときは非常に緊張したのを今でも覚えておりますが、日本の審査だけではなくて、海外の審査についても理解を深められたことは、今でも役に立っています。
 その後は、特許審査業務と行政官としての業務を行ったり来たりしながら今に至ります。 
 
◇ 日々の仕事の様子は?
 現在は、 審査第一部調整課審査企画室という部署で、主に新興国・途上国向けの特許審査実務研修の企画・調整を担当しております。新興国・途上国の特許庁では、審査に非常に時間がかかっていたり、審査の品質が十分でなかったりすることがあります。こうした国々の特許庁に対して、日本の特許審査官が研修を実施し、新興国・途上国の特許審査能力の向上と、日本の審査手法の浸透を図っています。
 日頃は、新興国・途上国の特許庁の担当者とどのような内容の研修とするか相談したり、その研修内容に応じて誰が講師を務めるのが適任なのか検討したり、研修の実施向けて新興国・途上国の特許庁の担当者と講師との間の調整を行ったりしています。自分自身が新興国・途上国に行って研修講師を務めることもありますし、逆に新興国・途上国の特許審査官が日本に来た際は特許庁の案内をしたり、日本の特許審査官が使用している特許審査ツールを紹介したりすることもあります。 
 
◇ 専門性はどのように活かされていますか?
 「あなたの大学での研究の成果の中で特許になりそうなものはありますか?」
 特許庁での面接でされた質問です。当時、私は数学の研究室に所属しており、物作りをしているわけでもない数学の研究の成果って特許にならなさそう、と思い素直にそう回答しました。その後、入庁後すぐに受講する研修を通じて、数学上の公式は発明として保護されないことを知りました。面接の受け答えとして適切だったかはさておき、審査実務に照らしてそこまで間違った回答でもなかったようです。
 では、大学で学んだことは入庁後活かされていないのか、と言うとそんなことはありません。
 数学上の公式それ自体は発明として保護されなくても、数学の研究成果が発明として全く保護されない訳ではありませんし、また、言うまでもなく数学が応用されている技術は山ほどあります。
 私自身、入庁後は半導体の審査室に配属となりましたが、何年も上の先輩から数学についての相談を受けたこともあり、入庁した時に思っていた以上に、大学での学びを活かす機会は多かったと感じています。 
 
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
 やはり様々な技術に接する機会がある点だと感じます。特許審査官は、入庁してから退職するまで1つの技術分野を担当する訳ではなくて、人事異動で新しい技術分野を担当する可能性もあります。もちろん、これまでと異なる技術分野を担当することになったばかりは慣れなくて苦労することもありますが、審査を通じて徐々に理解が深まっていき、新しい分野に挑戦して良かったなと思うことも。こうした、自分の専門性を深めるだけでなくて、広げていけることも面白みの1つだと思います。 
 
◇ 自己の成長を実感したエピソードは? 
 特許審査を通じて、論理的にしっかりと検討をした上で、自分なりの意見を持つ、ということが習慣付けられたと感じます。
 特許審査の業務は興味深いことに、若手の審査官の意見であってもベテランの審査官の意見であっても、年次はあまり関係なく1人の審査官の意見として尊重してもらえるように感じます。ただ、逆に言えば、特許にすべきかどうか非常に悩ましい案件を担当することになった場合も若手の審査官であってもよく考えた上で自分の中で結論を出すということが求められます。
 先輩や上司との議論の結果、自身の考えが採用されないことも当然あります。先輩や上司の意見を聞いて、こんな考え方もあるのか、自分はまだまだだなと感じることもあります。ただ、自分自身の中で検討を重ねて結論を導いた過程は決して無駄にはなりません。
 こうした習慣は、特許審査だけでなく、行政官としての業務でも日々役に立っています。 
 
◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は?
 2人の娘がいて、共働きで生活しています。
 共働きなので、子供の保育園の送迎は協力して行っています。日によって私が朝の保育園への送りを担当したり、あるいは、夕方の保育園へのお迎えを担当したりしていますが、フレックスを利用して、朝の送っていく必要がある日は勤務開始時間を遅くしたり、逆に、夕方お迎えに行かないといけない日は早めに退勤するようにしています。
 また、特許庁ではテレワークも推奨されていますので、職場に行かないとできない業務がない日はテレワークすることもあります。テレワークの日は通勤にかかる時間が節約できるので、その分、たまには手のかかる料理を作ったり、子供と公園に遊びに行ったりと、家族と過ごす時間を増やしています。
 
◇ 今後関わっていきたい政策課題などは?
 経済成長のドライバーや社会課題を解決する主体としてスタートアップが期待される中、知的財産の面からのスタートアップ支援に携わり、日本でのイノベーションの促進に貢献できればと考えています。 
 
  (令和6年12月)

  
堀内 建吾
 
特許庁 審査第三部 審査調査室・副査
 
平成28年採用 総合職(化学・生物・薬学)
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
応用生物化学
 
◇ 志望動機は?
 知的好奇心が強く、これまで培ってきた知識・経験を活かしたいと考えていた自分にとって、特許審査官が向いていると思い志望しました。その期待どおり、特許審査官は、日々新しい技術に出会うことができ、それらを理解するために、理系の知識がとても役立っています。
  
◇ 採用後の経歴は?
 入庁後に配属された審査室では、主にプラスチックや紙、繊維に関する発明の審査を行いました。どれも身近なものですが、そこには隠された技術がたくさんあることを知りました。また、特許庁は研修制度がかなり充実しており、法律・技術・語学など、あらゆる研修を受けさせてもらいました。これらの経験は、今でも非常に役に立っています。
 5~6年目は、特許審査に関する施策を企画・立案する部署に配属され、部署内の各種取りまとめや、他部署との連絡窓口を担当しました。
 7~9年目は、ポリマーに関する発明の審査を行いました。最も印象的だったのは、欧州の企業と現地で意見交換をしたことです。どの企業も日本の審査に関心をもってくださり、審査制度から審査実務に至るまで、腹を割って議論しました。その後は参加メンバーでランチをする機会もあり、審査とは関係のない雑談をしたこともいい思い出です。
 そして現在は審査調査室に配属され、主に特許審査に関する統計データを扱う業務を担当しています。 
 
◇ 日々の仕事の様子は?
 特許審査は、一人で黙々という印象をもたれるかもしれませんが、そんなことはありません。判断に迷う案件について、同じグループの審査官が大テーブルに集まって議論することが日常です。私の場合はそれに加え、雑談がてら色んな人に相談しながら特許審査を行っています。その方が楽しいですし、審査官同士の判断の均質性を保つ上でも重要であると考えています。 
 
◇ 専門性はどのように活かされていますか?
 農学部出身の私にとって、専門性を審査に活かすことができるのか、最初は不安でした。しかし、農学部で学んだことの全てにおいて、その理解には化学一般の知識が求められます。そのようにして鍛えられた化学一般の知識が、プラスチックや紙、繊維など、これまで担当してきた審査において、非常に役立っています。 
 
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
 特許審査をしていると、日常のいたるところに使用されている技術を知ることができます。プラスチックの審査経験があるので、プラスチック製のおもちゃや包装フィルムの材質をチェックするのがマイブームです。 
 
◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は?
 特許庁は本当に家庭との両立がしやすい職場で、日々感謝しています。
 娘が生まれた際には、周りの協力のおかげもあり、2ヶ月育休を取ることができました。
 現在も早く帰れる日が多く、娘のお迎えが楽しみの一つです(私を見つけると走って抱きついてくれて、疲れが吹っ飛びます。)。
 
  (令和6年12月)

  
瀨戸井 綾菜
 
特許庁 審査第一部応用光学 審査官
 
平成30年採用 総合職(工学)
 
◇ 学生時代の専攻分野は?
電子物理工学専攻
 
◇ 志望動機は?
 特許庁を志望した最初のきっかけは、大学の指導教官からの「特許庁の仕事、向いていると思いますよ。」という一言でした。それまでは正直、特許庁とは何をしているところなのかよく知らなかったのですが、その一言から特許庁に関心を持ち、説明会に参加するようになりました。
 元々、理系として学んできた知識を活かした仕事をしたいと思っていたところ、特許審査官は、技術に関する知識はもちろん、さらに法律の知識も駆使して審査するという、非常に専門性の高い仕事であるところに魅力を感じました。研修制度も充実しており、最新の技術や法律について学び続けることができるという点も、私にとって大きな魅力でした。
 また、採用パンフレットを読んだり、個別業務説明に参加して職員の声を聞いたりする中で、特許庁で働き続けるイメージを持つことができた点も、特許庁を志望した理由の一つです。
  
◇ 採用後の経歴は?
 入庁してまずは分析診断という審査室に配属され、血圧、心電図、睡眠状態といった、生体に関する情報を測定する技術の審査を行いました。最初の3年間は審査官の見習いである審査官補として、経験豊富な審査官からの指導や研修を通して、審査実務や法律の知識を身につけていきました。4年目に審査官に昇任してからは、基本的に一人で審査を行うようになりましたが、時には周りの審査官に相談しながら特許審査の経験を積み重ねていきました。
 その後、特許審査から離れて、システム関連の部署に異動となりました。その中でも、担当していたシステムが、数年後に次期システムに移行することから、その次期システムの設計開発と運用を行う事業者を決めるための調達という業務に携わることができたことは、大きな学びとなりました。また、審査業務をしている時には、システムが問題なく動くことが当たり前でしたが、その当たり前の裏側には、システムを支える多くの職員や業者の方々がいることを、身をもって実感しました。
 システム関連の部署を1年半経験した後は、再び特許審査に戻ることになりました。今度は応用光学という審査室に配属となり、ディスプレイ関係の審査を担当しています。新しい技術分野の審査をするにあたり、担当技術の知識を身につけなければいけないので、勉強の日々を過ごしています。 
 
◇ 日々の仕事の様子は?
 特許審査では、出願された書類を読み込んで発明の内容を理解した後、同じ技術が存在しているのか調査を行います。そして、調査結果も踏まえて特許できるかどうか判断をし、特許できないと判断した場合には、その理由を記載した書面を作成します。審査の一連の流れは、どの案件でも変わりませんが、特許をとりたい発明の内容はそれぞれ異なるため、各案件に適した調査の方針を立てて、審査を進めています。基本的には一人での業務がメインですが、審査経験が豊富で、技術にも詳しい審査官が周りに多くいるため、悩んだときには積極的に相談するようにしています。 
 
◇ 専門性はどのように活かされていますか?
 特許審査での担当技術分野の発明を理解するためには、基本的な数学、物理、化学などの知識が必要となることが多いため、これまでに身につけた理系の素養は、審査する上でとても役立っています。
 また、審査では、同じ技術が存在しているか調査するため、担当分野に限らず、色々な技術に触れておくことが大切であると感じており、日常生活で身の回りにあるものや、歩いていて見つけた面白い技術などにも関心を持つようにしています。どこかで見たことがあるな、という記憶が、調査の手がかりになって審査に役立つこともあるため、これまでに見たこと、学んだこと、経験したことは、今後どこかで活きてくると思っています。 
 
◇ 仕事の面白み、やり甲斐は?
 特許審査の仕事の面白みとして、まず思い浮かぶのは、様々な技術に触れることができる点です。ある技術に対して、どのような点に課題を感じ、その課題をどのように解決する技術を発明したのかについて記載された書類を読むので、様々な着眼点や課題解決手段に触れながら新しい技術を知ることができます。
 審査では、出願された発明と同じ技術が存在するか調査を行いますが、存在するのかしないのか、正解がわからない状態で行わなければなりません。そのため、最初は手探り状態で調査しなければいけないこともありますし、同じ技術がみつからない場合には、本当に存在しないのか、自分がみつけることができていないだけなのかがわからず、不安になることも少なくありません。そして、特許できないと判断した場合には、その理由を通知するための書面を作成しますが、自分の判断を言葉で正確に伝える必要があるため、論理的でわかりやすい文章となるように、細かい表現にも注意しながら、文章を組み立てています。自分の頭の中ではわかっていても、文章にするのは難しく、何度も書き直すこともあります。
 このような審査を限られた時間の中で行う必要がありますし、何よりも、特許権を付与するかという、非常に責任の重い判断をしなければなりませんが、その分、1件1件の審査にやりがいを感じています。 
 
◇ 自己の成長を実感したエピソードは? 
 特許審査では、論理的に物事を考え、自分の考えを文章化する、ということを日々行っています。審査以外の業務においても、資料を作成する時などに、審査で培った論理的な考え方や文章を組み立てる力が活きていると感じます。
 また、審査処理の目標量は、審査官補のうちは毎年増えていくのですが、思うように審査処理を増やしていくことができずに悩んだこともありました。試行錯誤を重ねた結果、目標量の審査をできるようになったことは成長と思いますし、壁を乗り越えたという経験は自信につながり、前向きな考え方を持つことができるようになったと感じています。入庁時の私を知っている方から「最初はすごく不安そうにしていて心配だったけど、顔つきが変わって頼もしくなったね。」と言ってもらえた時には、客観的にみても、少しは成長できているのかなと思うことができました。 
 
◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は?
 特許審査の仕事は基本的に1人で行いますので、自分のペースに合わせて仕事をすることができます。例えば、私の場合は、朝型であり、電車が混まないうちに通勤したいので、7時半に業務を開始、終業後に予定があるときは定時退庁し、休日前などには少し頑張って残業をして仕事を進めておき、時々休暇を取得してリフレッシュする、という風にメリハリをつけて働くようにしています(休暇は希望した日に取りやすいです。)。
 10時から業務開始をしたり、フレックス制度を活用している職員もおり、それぞれの生活スタイルに合わせた働き方をすることが可能です。また、現在はテレワークで仕事をすることもでき、仕事と生活を両立しやすい環境が整っていると感じています。
 
◇ 今後関わっていきたい政策課題などは?
 新しい技術が日々生み出されているため、私たち審査官が調査する対象も増え続けています。このような状況下で、品質を落とさずに、むしろより良い審査を提供するため、自分自身の審査スキルを高めることはもちろんですが、AIを活用したツールなど、審査や関連業務を効率化するシステムの検討に関わりたいと考えています。 
 
  (令和6年12月)

  
  
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