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(匿名) |
在アメリカ合衆国日本国大使館・三等理事官
令和元年採用 一般職(電気・電子・情報) |
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◇ 学生時代の専攻分野は? |
電気工学
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◇ 志望動機は? |
技術系公務員であり、かつ自分には縁遠いと考えていた海外勤務をする職業とはどのようなものなのかと興味を持ちました。そして、具体的な業務内容を知るうちに「外交の舞台を技術的な立場から支える」仕事に強い関心を抱き志望しました。語学は不得手でしたが、入省から2~3年間は勤務時間内で英語等の語学研修が、その後も海外での語学研修が用意されていたので、外国語への苦手意識だけで好奇心を抑えるのはもったいないと思えたことも採用試験に応募したきっかけの一つです。
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◇ 採用後の経歴は? |
入省から2年間、本省にて世界中に所在する在外公館施設の維持管理に関する業務を担当しました。施設の修繕にまつわる現地公館からの相談対応や、予算執行のための事務・調整は担当した業務のうちの一部です。また、在外公館施設の設計から工事までの一連の建設プロジェクトにも、現地公館、設計・施工業者等との間に立って各種調整をする役割で携わりました。他にも、「即位礼正殿の儀」に応援要員として関わり、外務省の一員として普段とは全く異なる業務を経験することができました。
入省3年目には英国での語学研修の機会をいただき、現地大学院の電気工学修士課程に1年ほど身を置きました。この研修を通じて語学力の向上や専門知識を深めることはもちろん、実際に外国で英語を駆使し問題解決に取り組むという在外勤務には必要不可欠な基本姿勢が鍛えられたと感じています。それと同時に、一時的に組織・仕事から離れ、異国の風習や日本との考え方の違いを一個人として学べたことは、自分の視野を広げる上で有意義なものだったと思っています。最終的に修士号の学位を取得できたことは達成感にもつながりました。
英国での語学研修後は、在アメリカ合衆国日本国大使館の営繕担当として勤務しています。本省勤務の時にも関わっていた在外公館の営繕業務ではありますが、実際に自分がその現場に立つことで初めて見えてくる部分が多くあり、先輩技官の方々から日々様々なことを教わる毎日です。
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◇ 日々の仕事の様子は? |
本省で勤務していた時には、各在外公館から寄せられる営繕関係の照会や相談に対応したり、在外公館施設の建設プロジェクトでは本省と現地関係者とのオンライン会議に参加したりしていました。
在外勤務では、大使館施設の不具合を解消するための工事の企画・発注、突発的に生じるトラブルの対応や定期的な点検が主な担当業務です。 設備トラブルや建物の老朽化に対する修繕工事を企画する場合、関係者と現状を確認し、工事の内容やその範囲等を踏まえた実施の方針を工事業者と協議しながら検討します。大使館は重要な日本外交の拠点であり、その機能維持のために各種外交日程・行事を考慮しつつ施工方法や工事日程を調整することも重要な任務の一つです。
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◇ 専門性はどのように活かされていますか? |
電気的な基礎知識は建築設備の仕組み、故障の原因を把握する上で役に立ちます。しかしより仕事に活きてくるのは学生時代に身につけた問題解決に向けた論理的な思考をする習慣だと思います。技術面はもとより現地の慣習や法令等も合わせた合理的な問題解決への道のりは、実験した結果(手元にある情報)を元に考察(原因の特定)し、結論を出す(解決策の実行)プロセスに似ていると感じます。
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◇ 仕事の面白み、やり甲斐は? |
「外国における日本を代表する施設」である在外公館施設を維持管理したり工事したりする際には、適切な管理・工事方法を選定することもさることながら、発注者側である我々と受注者側である業者側の双方の認識や理念の違いにより生じる諸問題に対する妥協点を探ることは仕事を進める上でとても重要なポイントです。業務を発注する我々は日本政府を代表しており、受注する業者は基本的に現地に根差していることを背景に、例えば日本の法令に関わってくる支払時期などの契約内容を調整・協議する場面で時折円滑に事が運ばない場面があります。他にも、現地の法令や風土、工事の仕方や商慣習、その土地の業者の得意不得意等、日本国内の標準的な建物の維持管理・工事とは異なる要素 も考慮に入れる必要があります。現地の仕様の話をすると、リビングルームに設置されているコンセントは日本では100Vですが英国では230Vと高く、英国の電化製品のプラグは主に感電防止のためアース線が設けられており、また日本の製品と比べて大きいという物理的な違いがあります。他にも、アメリカの一軒家は広く大きいため、空調はパッケージエアコンではなくセントラル空調という場合があり、その場合には空調交換工事が日本の一軒家のそれと比べて大掛かりなものになってしまいます。こういった「日本との違い」を知ることは一つの面白みですし、「日本の普通」が通用しない環境であっても問題を克服し、また、施設を通じていかにして日本を表現するかを考えることはこの仕事の奥深さだと感じます。小規模な修繕工事であっても、その出来映えに日本国大使館としての特色が出せるのではないかと考えたりもします。
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◇ 自己の成長を実感したエピソードは? |
施設トラブルが生じた場合、原因さえ特定できればすぐに改善対応ができるのですが、その原因究明が困難で時間を要する場合があります。それを専門業者に頼ることなく、自分の判断で解決できた時には、これまで積み上げてきた経験や知識が身に付いていることを実感します。一例を挙げると、工事のために業者が一時停止させたポンプが正常に運転しなくなり、工事業者が電気専門でなかったこともあり、復旧できずに困っていたところ、これまで身につけた電気の専門知識を活かして自ら配線図を確認しつつ、結線の現状を分析し、トラブルの原因を特定して早急に解決できたことがありました。自分で見た方が早く解決できるだろうと見込んだ対応が上手くいった場面でした。
自分では判断できない施設トラブルに対しても、頼りになる先輩方に指示や助言を仰ぎ適切に対処できた際には、新たな知識や考え方を得られ、自己の成長に資する機会となったと感じます。
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◇ 仕事と生活(家庭、趣味、地域活動など)の両立は? |
多忙な時期もありますが、その日の仕事をどこまで進めて自分の時間をどれだけ確保するかという裁量は個人に委ねられている部分があると感じます。休暇についても積極的に取ることが推奨されているので、休みにくさを感じたことはありません。こうしたプライベートの時間は自己研鑽のための資格の勉強や、リフレッシュ目的の旅行に使っています。
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◇ 今後関わっていきたい政策課題などは? |
在外公館施設の新築工事に現地担当として携わりたいです。新築工事は普段の業務で扱っている修繕工事等と比べて施工の規模やその予算額が格段に大きく、それに比例するように国内外の関係者も多くなります。また、設計から竣工までに長い期間を要する一大プロジェクトとなるため、その現場の最前線に立つことは非常に責任が重く、決して簡単な業務ではありません。その一方で、長くその地に残る、日本を代表する建築物の建設に携われる機会は他でもなく営繕技官の特権だと思うので、是非挑戦していきたいです。
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(令和5年1月) |