第1編 人事行政

第3部 令和4年度業務状況

第5章 職員の勤務環境等

第2節 健康安全対策

1 健康の保持増進

(1)心の健康づくり対策

近年、長期病休者のうち、心の健康の問題による長期病休者が6~7割を占める状況となっており、職員のメンタルヘルス施策が重要な課題となっている。

こうした状況を踏まえ人事院としては、「職員の心の健康づくりのための指針」(平成16年勤務条件局長通知。平成29年8月改正)に基づき、以下のような各府省における職員の心の健康づくり対策に重点的に取り組んできている。

ア 心の健康づくり研修を人事院の本院及び各地方事務局(所)(全国10か所)で開催している。令和4年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、人事院の本院及び各地方事務局(所)(全国10か所)で集合形式での研修は実施せず、心の健康づくりに関する有識者講演の動画配信及び研修資料の配布による方法で実施し、各府省における心の健康づくりの施策の効果的な実施を図るよう、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性や復職時の再発防止対策等について周知徹底を図った。

イ 平成27年12月にストレスチェック制度を導入し、各府省において実施されている。また、過度のストレスがなく、いきいきとした職場の実現を目指す職場環境改善について、平成28年11月に「「心の健康づくりのための職場環境改善」について」(平成28年職員福祉局長通知)を各府省に提示し、各府省のより積極的な取組を支援してきている。令和4年2月に人事院心の健康づくり指導委員会職場環境改善ワーキンググループにおいて、「ストレスチェックにおける職場環境改善の取組について~職場環境改善とハラスメント予防について~」報告書が取りまとめられ、各府省に更なる取組を求めた。

令和4年度においては、10月に本院において、本府省の健康管理担当者等を対象に「心の健康づくり対策推進のための各府省連絡会議」をオンライン形式で開催し、ストレスチェック制度の実施状況等を各府省へ情報提供するとともに職場環境改善の更なる推進等についての指導を行った。

ウ 専門の医師等が対応し、各府省の職員、家族等が利用できる「こころの健康相談室」(全国10か所に設置)を開設している。令和4年度における相談件数は、合計231件であった。若年者や遠方に居住する職員が利用しやすい環境の整備を図るため、令和4年度から本院及び一部の地方事務局においてオンライン相談を導入し、窓口の拡充を図った。

エ 心の健康の問題による長期病休者の職場復帰及び再発防止に関して、専門の医師が相談に応じる「こころの健康にかかる職場復帰相談室」(全国10か所に設置)を開設している。令和4年度における相談件数は、合計146件であった。

(2)国家公務員長期病休者実態調査

職員の健康管理に関する諸施策の検討に資するため、一般職の国家公務員のうち、令和3年度において引き続いて1月以上の期間、負傷又は疾病(以下「傷病」という。)のため勤務しなかった者について「国家公務員長期病休者実態調査」を実施した(5年ごとに実施)。

令和3年度における長期病休者は6,500人(全職員の2.32%)であり、前回調査(平成28年度調査)に比べて1,174人増加している。性別にみると男性は4,568人(全男性職員の2.10%)、女性は1,932人(全女性職員の3.11%)となっている。

長期病休者数は、初回調査から前回調査まで減少傾向であったが、今回調査で増加に転じた。また、長期病休者率は、平成18年度調査から前回調査までは漸減傾向であったが、今回調査では大きく増加した(図5-1)。

傷病別にみると、「精神及び行動の障害」が4,760人(長期病休者総数に対する割合は73.2%)で最も多く、次いで「新生物」461人(同7.1%)、「循環器系の疾患」265人(同4.1%)の順となっている(表5-1)。

「精神及び行動の障害」の長期病休者率(職員10万人に対する率)は1701.2であり、平成18年度調査から前回調査までは横ばい傾向であったが、今回は431.0ポイントの増加となった(前回調査1270.2)(図5-1)。

長期病休者数及び長期病休者率の推移
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傷病別長期病休者の比較
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(3)国家公務員死亡者数等調査

職員の健康管理及び安全管理の向上に資するため、令和3年度中に死亡した一般職の国家公務員について「国家公務員死亡者数等調査」を実施した(3年に1度実施している「国家公務員死因調査」を実施しない年度に実施している。)。

令和3年度における在職中の死亡者は245人で、前年度の218人より27人増加している。また、死亡率(職員10万人に対する率)は87.6(前年度は78.2)となっており、平成28年度以降は漸減傾向であったが、今回調査では増加に転じた。

死亡者のうち、病死者は188人(前年度は176人)で、前年度に比べ12人増加しており、死亡率は67.2(同63.2)となっている。また、災害死(不慮の事故、自殺及びその他)は57人(前年度は42人)で、前年度に比べ15人増加しており、死亡率は20.4(同15.1)となっている。

災害死のうち、「自殺」による死亡者は41人(前年度は32人)で、前年度に比べ9人増加しており、死亡率は14.7(同11.5)となっている。また、「不慮の事故」による死亡者は13人(前年度は6人)で、前年度に比べ7人増加しており、死亡率は4.6(同2.2)となっている。

(4)健康診断の実施状況等

一般定期健康診断は、肺の検査、循環器検査、胃の検査など必要な検査項目について実施されており、各府省の報告を基に把握した令和3年度の一般定期健康診断の実施状況は、資料5-1のとおりである。総合的な健康診査(いわゆる人間ドック)の受診者は、全職員の39.4%、また、有害な業務又は健康障害を生ずるおそれのある業務に従事する職員を対象とした特別定期健康診断の受診率は96.3%となっている。

また、一般の健康診断の検査の項目である胃の検査及び胸部エックス線検査について、近年の疾病構造の変化や医療技術の進歩を踏まえ、検査方法や対象年齢等の改正を行った。

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