記者会見
令和6年8月8日 人事院勧告・報告における川本総裁記者会見の概要
【冒頭発言】
川本でございます。本日はお集まりいただき、ありがとうございます。
先ほど、国会と内閣に対しまして、人事院としての課題認識、対応策の打ち出しとなる『公務員人事管理に関する報告』とともに、国家公務員の給与改定についての勧告と、国家公務員の育児休業法改正についての意見の申出を行いました。
給与については、民間企業の賃上げの状況を反映して月例給は約30年ぶりとなる高水準のベースアップとしました。全体では平均11,183円、2.76%引き上げ、総合職大卒の初任給を約3万円、約15%引き上げるなど、若年層に特に重点を置きつつ、全ての職員を対象に引上げ改定を行います。特別給は3年連続で0.10月分引き上げ、年間4.60月分とします。今回行う給与制度のアップデートとあわせ、この改定が優秀な人材の確保につながることを期待しています。
また、意見の申出は、職員が自らの希望や事情に応じて育児時間を取得しやすくなるよう、1年に10日相当の範囲内で育児時間を取得できるパターンを新設するものです。
本日は、本年の人事院勧告・報告に寄せて、お話をさせていただければと思っています。
国家公務員は、国民の皆さんの生活と安全を守り、活力ある社会を築くという、国家の屋台骨を支えるオンリーワンの仕事をしています。
今や、社会経済や国際情勢など環境が激しく変化し、公務が対応を迫られる課題は、日々、高度化、複雑化しています。このような時代において、多様で優秀な人材が公務に集まり、職員一人一人が日々の職務で意欲と志を高く持ち、磨いた能力を最大限に発揮できることが必要です。
そのような国家公務員を人事制度面で支える人事院は、近年、公務員人事管理を時代環境に即したものにするべく、制度改革や運用改善に力を注いでまいりました。例えば、近年にない初任給の大幅な引上げ、総合職試験「教養区分」の受験可能年齢の引下げ、各種試験における試験科目の見直し、個々の事情・希望に応じた働き方を可能とするためのフレックスタイム制の柔軟化、長時間労働是正のための担当部署の新設、勤務間のインターバル確保の努力義務化など、各府省の課題を知り、知恵を借りながら、人事制度のインフラを提供し、改革を進めてきました。
こうした中、顕著な減少傾向にあった総合職試験の申込者数は、近年、わずかながらも増加しています。しかし、若手職員の離職は増加傾向にあるほか、一般職試験の申込者数は減少が続くなど、国家公務員の人材確保の現状は依然として厳しい状況にあります。また、実務の中核を担う中堅職員は少なく、このままでは、公務を支える職員が質・量ともに不足し、行政サービスの維持が困難となる懸念もあります。
これまでの公務職場では、政策などの言わば「事業戦略」の優先度が高く、一人一人の職員を重要な資本と捉えて力を発揮させるなどの組織マネジメントの優先度は相対的に低くなりがちでした。公務組織のパフォーマンスを向上させ、組織を維持していくためにも、「事業戦略」と「組織戦略」を言わば「車の両輪」として、一体的に、バランス良く推進していくことが不可欠だと考えています。各組織のリーダー層を中心に、ベストな人事制度・運用を迅速に実現する必要があります。
そのために、新時代における公務員人事管理の青写真を描き、改革を続けていくことこそが、人事院の使命と考えています。
今回の勧告・報告でも、あらゆる施策を講じていくことを表明しており、処遇、採用手法、組織マネジメント、勤務環境の整備の4つについて、順に申し上げます。
適切な処遇は優秀な人材の確保のために不可欠であり、今回、給与制度をアップデートし、処遇面を包括的に見直します。給与制度のアップデートは切れ切れの施策ではなくて、包括的なパッケージであるということをご理解いただければと思います。俸給体系については、採用市場における競争力を向上させるため、初任給や若年層の給与を大幅に引き上げ、また、管理職は職責や役割に見合った体系に刷新します。諸手当も、人事配置や異動を円滑に行うため、地域手当を都道府県単位に広域化し、新幹線を含む通勤手当の支給を拡充します。さらに、共働き世帯が増加している実態を踏まえ、配偶者手当を廃止し、子どもに係る手当に充当します。このような措置によって、時代の要請に即した給与制度を実現します。
採用手法の面では、公務志望者の増加を期待し、採用試験の見直しを更に進めます。専門分野に関わらず受験できる、総合職試験の「教養区分」は、各府省の採用者も増加しています。この「教養区分」について、年2回に、試験回数を増やします。また、志望者の減少が続いている一般職試験においても、「教養区分」を新設します。さらに、コンピュータを使った試験、CBT方式の導入を早期に実現し、受験のしやすさ、利便性を高めます。
冒頭に申し上げた組織マネジメントに力を注ぐ観点からは、職員の成長を支援することも欠かせません。若手だけでなく中堅職員も含め、国内外の大学院への派遣を促進します。また、キャリア形成を支援する人事管理システムの設計・構築にも取り組みます。
さらに、時代に合った働き方に変えていくため、勤務環境の整備も一層推進します。特に、長時間労働もやむを得ないとする職場風土やマインドセットを抜本的に切り替える必要があります。各府省トップの強力なリーダーシップの下での業務の削減・合理化は、その解決の糸口です。あらゆるチャネルを通じて各府省の超過勤務縮減を強く求めていきます。各府省の勤務時間を調査し指導する人事院の担当部署について、その体制や取組を強化していきます。また、仕事と生活の両立支援制度の一層の充実やゼロ・ハラスメントの実現、職員の健康増進にも取り組んでいきます。
以上、様々な対応策についてお伝えしましたが、人材確保という大きな課題を真正面から受け止め、持続可能な公務組織とするために施策を総動員し、重層的な取組を推し進めます。
昨年秋から各界の有識者で構成する「人事行政諮問会議」を開催しています。従来の延長線上にある考え方では、公務員人事管理の課題に対する解を見いだすことはできない―――そうした危機感から、今までの枠組みにとらわれない議論を行っています。本年5月の中間報告では、一人一人の職員を重要な資本と捉える人的資本経営の考え方を公務にも取り入れる必要性や、優秀な人材の確保のために早期選抜や給与処遇に最優先で対処すべきとの方向性が示されました。
今回の公務員人事管理報告においても、その実現に向けて、先んじて着手できる施策を盛り込んでいます。また、諮問会議の中間報告で課題とされた採用年次にとらわれない人事制度・運用の実現に向け、昇格要件の一つである在級期間の廃止を含めた見直しを早急に検討します。優秀な人材の確保に必要な報酬水準の設定に向けて、官民給与の比較対象となる企業規模についても検討を進めます。
今後いただく最終提言も含め、諮問会議で示された改革の方向性を各府省の現場で運用できる制度へと落とし込んでいくことを人事院の最重要課題とし、取り組んでいきます。
本日、報告や勧告、意見の申出を岸田総理大臣にお渡した際に、総理は、「地方を含め、民間給与で広がりを見せている賃上げの状況が反映されており、また、こどもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための民間法制の改正に沿っていて、賃上げ、女性活躍の推進に資する時代の要請に即した制度改革となっている。内容をしっかりと受け止め、法改正を含め、政府部内において議論してまいりたい。同時に、今回の人事院勧告が地域の賃上げや処遇の改善に良い影響を及ぼすことを期待したい。」というようなことを仰っていました。
また、プレスの皆さんが退室された後の場では、「今回の人事院勧告を受け取って、国として、根本的な問題に思いを巡らして人材確保に取り組まないと、国力全体の低下に繋がる懸念があり、そのレベルまで掘り下げて議論しないとならない時代が来ていると改めて思った。それくらいの深刻さや覚悟を持って取り組まないといけない時代であり、具体的な各施策についてしっかりと受け止めて、政府の中で議論を深めていきたい。今後も、人事院から様々なアドバイスをお願いしたい。」といったご趣旨のお言葉がありました。
このようなご期待にしっかり応えるべく、スピード感をもって対応してまいりたいと思っております。
最後になりますが、国家公務員は、国民の皆さんの生活と安全を守るため、国内外で奮闘しています。このような国家公務員の人材確保の状況を改善することが急務です。多くの皆さんに、このような状況を知っていただき、人材確保に向けた抜本的な施策と更なる改革について、ご理解をいただきたいと思っています。
タイミングを逃すことなくスピード感をもって私どもは改革を実行してまいります。
私からは以上です。
令和6年6月19日 令和5年度年次報告書に関する川本総裁記者会見
【冒頭発言】 川本でございます。本日はお集まりいただき、ありがとうございます。
令和5年度の人事院の業務に関する年次報告、いわゆる「公務員白書」を、本日、国会と内閣に提出しました。
今回の白書では、昨年夏の「公務員人事管理に関する報告」で示した3つの柱、
・1点目は、公務組織を支える人材の確保
・2点目は、職員の成長と組織パフォーマンスの向上
・3点目は、多様なワークスタイル・ライフスタイルの実現とWell-beingの土台となる環境整備
を軸に、この1年で取り組んだ主な施策をコンパクトにまとめています。また、昨年秋から開催している、人事行政諮問会議の議論の経過や中間報告についても紹介しています。
これまで、今の時代環境に即した公務員人事制度とするために、例えば人材確保の観点では、数年にわたっての採用試験制度の改革や、民間人材の誘致などの採用チャネルの拡大を進めてきました。
総合職試験では専門試験を課さない「教養区分」について受験機会を拡大したこともあり、応募者も増えています。
職員の成長支援の観点では、キャリア支援に関する研修の拡充や好事例の提供などを行ってきました。
また、職場環境の整備の観点では、フレックスタイム制を見直し、週に3日お休みが取れるような仕組みを一般の職員にも拡大したり、夏季休暇、つまり夏休みの取れる期間を広げたり、より柔軟な働き方の実現に向けて取り組み、そして、重要課題である長時間労働の是正に向けた取組も進めてきました。
このように、ここ数年、公務員人事制度のアップデートを進めてまいりました。しかしながら、将来を見据えたときに、環境変化のスピードが速まる中、日本が世界の中で存在感を示していくために、何がベストの公務員人事制度なのか、真剣に考える時期にあります。これまでの延長線上の対応でよいのか、抜本的なアップグレードが必要ではないか、ということで、昨年秋から有識者の方々にお集まりいただき、人事行政諮問会議を開催してきたところです。
先月、この会議から中間報告をいただきましたが、将来の公務員人事の制度や運用の「青写真」が示されたと思っており、非常に画期的だと受け止めています。
今後は、いただいた御意見を実現すべく、実際に現場で運用できる制度に落とし込んでいくことが人事院の最重要課題であると痛感しています。
人事院としましては、スピード感をもって、先んじて着手できる施策に関しては、この夏の人事院勧告時に表明できるよう、精力的に検討を進めているところです。
最後になりますが、国家公務員の仕事は、本来、国家の屋台骨を支える、本当にやりがいのある、日本の中でもオンリーワンの仕事です。そういう観点からの情報発信にも力を入れながら、『人』が組織の担い手であり、最大の資本である、との認識のもと、公務組織に『人』をいかに惹きつけるか、その方々の価値をいかに引き出すか、そして組織のパフォーマンスをいかに最大化させるか、これからも力を注いでまいります。
私からは以上です。