記者会見

令和5年8月7日 人事院勧告・報告における川本総裁記者会見の概要

 

【冒頭発言】

 本日はお越しくださり、ありがとうございます。
 先ほど、国会と内閣に対しまして、国家公務員の給与の改定、そして勤務時間の改定についての勧告を行い、本勧告どおり実施していただくように要請をいたしました。
 
 本年の給与勧告では、民間が公務を上回る結果となったため、月例給とボーナスともに引き上げることとしています。特に月例給の引上げ率は、民間における大幅な賃上げを反映して、過去5年の平均と比べて、約10倍のベースアップとなります。また、テレワーク中心の働き方をする職員に対して、電気代、ガス代といった光熱費などの負担を軽減するため、新たな手当をつくります。
 給与面では、民間の動向を反映して明るい傾向が見られますが、公務の人材確保は、応募者の減少や若手職員の離職の増加などにより、依然として厳しい、危機的とも言える状況にあります。また、公務の職場環境に対しては、霞が関を中心に「ブラック」というイメージがなかなか払拭されません。
 この「ブラックと言われる状況」を打開しなければならない、ということは、霞ヶ関共通の思いです。その思いを叶えるためにも、人事院は、関係者の皆さんの御理解・御協力をいただきながら、各種の施策の検討を進め、実行してまいりました。
 この国の人々の利益や生活を守り、世界最高水準の行政サービスを提供し、活力ある社会を築く。その実現のため、日々、職務にまい進している国家公務員の皆さんが活き活きと働けるよう、公務員人事管理について制度面からも運用面からも、より良くしていくことが人事院の役割でもあります。
 
 このような認識のもと、本日の勧告と併せてお示しした「公務員人事管理に関する報告」では、職員一人一人が躍動でき、Well-beingが実現される公務を目指すべく、3本の柱を立てて、施策の方向性や具体策を示しています。柱の
 ・1点目は、公務組織を支える人材の確保
 ・2点目は、職員の成長と組織パフォーマンスの向上
 ・3点目は、多様なワークスタイル・ライフスタイルの実現とWell-beingの土台となる環境整備
 です。
 
 まず、1つ目の柱である「人材の確保」についてです。
 これまでの会見でも、行政の担い手となる『人』が最重要課題との認識を示してまいりましたが、そもそも公務組織に『人』が来てくださらなければ、組織運営も成り立ちません。やはり、従来の採用戦略、採用手法を踏襲していては、事態は好転しない、大胆に変えていくことも必要です。昨年から採用試験改革に着手していますけれども、今後もオンライン方式を活用した採用試験の検討など、試験実施に向けた課題などを整理しつつ、不断の見直しを行ってまいります。
 また、社会経済情勢や国際情勢がこれほどまでに変化している状況においては、公務に限らず、どのような組織でも、組織内部で育成した人材だけでは課題に対応しきれません。民間人材を積極的に採用することや、民間と公務の人事交流を促進するといった「民間と公務の知の融合」が鍵となります。公務の魅力や働きがい、人事交流を通じて得られる効果などを言語化、すなわち、言葉で表し、しっかりと広報・情報発信をしていきたいと思っています。
  
 次に、2つ目の柱である、「職員の成長と組織パフォーマンスの向上」についてです。
 民間であろうと公務であろうと、年齢にかかわらず、働く人々にとって、ご自身のキャリアをどのように創っていくのか、能力やスキルをいかに発展させ、仕事に活かしていくか。このような関心が非常に高まっています。そこで、職員のキャリア形成をさらに支援し、また、職員の「学び」を後押しするような取組を進めていきます。
 
 職員が学び、成長し、仕事に対するモチベーションを高め、実績をあげていくことになれば、組織としてのパフォーマンス向上にもつながります。その結果、国民の皆様や社会に対して良い影響をもたらすことになります。いわば、「学びと仕事の好循環」です。
 この好循環を生み出す観点から、民間企業で導入が進んでいる兼業についても避けて通れない論点だと思っています。職員の成長や組織パフォーマンスの向上につながるような兼業の在り方について、検討を進めていきます。
 
 次に、3つ目の柱です。「多様なワークスタイル・ライフスタイルの実現とWell-beingの土台となる環境整備」についてです。
 職員の皆さんが、仕事に対するやりがい、さらには生きがいを感じているかどうかは、職員の成長、パフォーマンスに影響します。公務の職場環境に対しては、「ブラック」と言われることがありますが、人事院としても、いわば「残業Gメン」と言いましょうか、昨年4月に担当部署を設置し、各省庁に出向いて勤務時間が適正に管理されているか調査をし、お話もうかがいながら、必要な指導・助言を行ってまいりました。今後、調査を拡充し、各省庁をサポートしつつ、人事院としてできる対応を進めていきたいと考えています。
 国家公務員の働き方の関係では、国会対応業務の改善を求める声も聞かれます。この点、本年6月に、衆議院の議院運営委員会の理事会において、「速やかな質問通告に努めるとともに、オンラインによる質問レクなどデジタルツールを利用した質問通告の推進に努めるものとする」などを内容とする申合せがなされました。各省庁や職員の声を受け止め、国家公務員の超過勤務の縮減に向けて御協力をいただいたことを非常にありがたく思っています。行政部内で更なる改善に取り組むことは当然ですが、人事院としても、国会を始めとする関係各方面の御理解と御協力を引き続きお願いしていきたいと思っています。
 
 今や、働き方に関する価値観やライフスタイルが多様化しています。個々の職員の成長やキャリア形成の支援という点を考えても、「大量処理型のマネジメント」から、「個人個人に着目したマネジメント」に転換する必要があります。そこで、職員の希望や事情に応じた働き方が可能となるよう、制度改革を進めます。   
 今回の勤務時間に関する「勧告」で示したとおり、一般の職員でも、フレックスタイム制を活用して、勤務時間の総量は維持した上で、週1日を限度に勤務時間を割り振らない日、いわゆる「ゼロ割振り日」を設定できるようにします。また、勤務間のインターバル確保の努力義務を設けます。さらに、民間企業で重要視されている「健康経営」の視点からも、職員が健やかに働くことができるよう、健康管理体制の充実に向けた検討を行うほか、ゼロ・ハラスメントに向けた取組を進めます。
  
 以上、3つの柱をもとに、お話をいたしました。
 今回、「報告」で示した様々な施策は、人材の確保や組織パフォーマンスの向上につながるような給与制度の対応も必要です。それぞれの施策を連係しながら、重層的に取り組んでまいります。施策を推進し、職員一人一人が高い意欲とやりがいを持って躍動でき、Well-beingが実現される環境を整備していきたいと考えています。
 
 本日、「勧告」と「報告」を岸田総理大臣にお渡した際に、総理から、
 「民間給与の状況を反映した給与勧告、在宅勤務等を中心とする働き方に対応した手当の新設、フレックスタイム制の見直しなどの勧告をしっかり受け止め、政府部内において議論したい、人事行政に関する様々な課題に係る検討の方向性についても報告いただいており、人事院と関係省庁で連携して取組を進めていただきたい」
 とのお言葉をいただきました。
 
 このような御期待にしっかり応えるべく、対応してまいります。
 
 最後になりますが、先週、「こども霞が関見学デー」が開催され、人事院にも多くの子どもたちが来てくれました。私も子どもたちと色々とお話をしましたが、子どもたちのワクワクしている表情を見て、日本の将来を担う子どもたちのためにも、この国を支える公務組織を、より良いものにしなければならない、と改めて感じました。
 今回、「報告」では、有識者会議を設置し、聖域なく議論をし、新たな時代にふさわしい公務員人事管理を実現していくことも表明しています。「子どもたちの未来への責任」、という点からも、課題解決を先送りせずに、果敢に取り組み、新たな時代にふさわしい公務の世界を実現していきたいと思っています。
 
 私からは以上です。

令和5年6月9日 令和4年度年次報告書に関する川本総裁記者会見

【冒頭発言】 

 川本でございます。本日はお越しいただき、ありがとうございます。
 
 本日、令和4年度の人事院の業務に関する年次報告、いわゆる「公務員白書」を、国会と内閣に提出いたしました。
 
 行政が直面している課題は、社会経済情勢や国際情勢が激変する中で、複雑化・高度化しております。そのような行政を担う人材の確保は国家的課題ですが、それが、現在、危機的な状況となっています。公務組織においては、長時間労働の是正も含め、働き方をどう改善していくか、能力や業績に真に見合った処遇をいかに実現していくか、職員が「やりがい」や「働きがい」を感じて職務に邁進するには何が必要かなど、人材マネジメントをめぐる課題は山積しています。
 
 このような状況の中、人事院では現在、国家公務員制度を時代環境に即したものにアップデートするべく、今回の白書で示したような制度改革や運用改善に取り組んでいますが、人材マネジメントを充実させるためには、データやデジタルを活用していくことが、今や、避けて通れない重要な課題であると認識しており、今回の白書において特集を組んだところです。
 
 今申し上げたとおり、この特集でお伝えしたいメッセージは、「個々の職員に応じた人材マネジメントを実践するには、データやデジタルの活用が不可欠であり、急務である」ということです。
 
 今回の特集をまとめるに当って、国家公務員のほか、企業で働く方々などにもアンケートに御協力をいただきました。
 また、国内の企業や地方公共団体、外国政府、そして各省庁の方々にも、ヒアリングを通じて御協力をいただきました。アンケートやヒアリングに御協力をいただいた皆様には感謝申し上げます。
 
 このアンケート結果を見ますと、例えば、
 ・ 職場では適切な人員配置がなされているか
 ・ 自分自身に対する人事異動や人事評価に納得しているか
 こういった質問項目について、国家公務員の回答は、企業で働く方々の回答と比較して、肯定感が低い傾向が見られました。
 個々の職員に応じたきめ細かい人材マネジメントを行うこと、適切な人事評価を行い、しっかりとフィードバックを行うこと ――― これらの重要性については、これまでも申し上げてきましたが、今回のアンケートを通じて、改めて痛感いたしました。
 
 人材マネジメントをめぐる課題が山積している中で、「これをやれば解決する」という『特効薬』はありません。企業や外国政府など、先進的に取り組んでおられる事例も参考にしながら、日本の公務組織において実現可能性のある取組に挑戦していくことが重要です。その一つが、今回のデータやデジタルの活用です。
 
 先月開催されたデジタル臨時行政調査会において、岸田総理は、国家公務員の人事管理のデジタル化やテレワーク等の柔軟な働き方を推進すると表明されました。政府全体として、デジタルを本格的に活用して人材マネジメントを行っていく機運が高まっていると感じています。人事院としても、その流れを強力に推し進めていきたいと考えています。
 
 人事院としては、内閣人事局やデジタル庁、そして、人材マネジメントの現場をあずかる各省庁と緊密に連携しながら、今回お示しした課題を乗り越えていきたいと思っています。
 
 最後になりますが、世界最高水準の行政サービスを国民の皆様にお届けするためにも、新たな時代にふさわしい人材マネジメントを実現することが必要です。今回の特集で取り上げたデータやデジタルの活用はその一翼を担うと思います。その他の観点からも時代環境に即したものにアップデートしていくとともに、今後は更なるアップグレードに向けて物事を進めてまいります。
 
 私からは以上です。

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