人事院総裁談話

令和5年8月7日 人事院勧告・報告 総裁談話

1 国民生活を守り、安心を確保するため、全国各地で日々の仕事にまい進している公務員の皆さんに対し、心からの敬意を表します。
 社会経済情勢や国際情勢が激変する中、行政に求められる役割は一層大きくなっています。世界最高水準の行政サービスを国民に届ける。その使命を果たすため、行政の経営管理力を高め、行政を担う公務組織に多様で優秀な人材を集めることは国家的課題です。
 公務における人材確保は、今、危機的な状況にあります。高い志を持つ優れた人材をいかに公務に惹きつけるか。その鍵は、異なるバックグラウンド、キャリア意識、人生設計を持つ一人一人の職員が躍動し、Well-beingが実現される環境を整備することにあると考えます。
 「個」の成長・活躍が「組織」のパフォーマンス向上を導く。それが公務組織の魅力となり、更に人材が集結する。この好循環の実現を確実なものとするため、人事院は、これまでの取組を不断に検証するとともに、次の課題に対して、人事行政のあらゆる施策を総動員して重層的な取組を進め、最大限のシナジーを創り出していきます。

2 第一に、人材確保の厳しい現状を打開するには、戦略的かつ一体的な対策が必要です。
 日々複雑化・高度化する行政課題に対処するためには、民間の知見を取り入れ活用することが欠かせません。経験者採用試験を拡充し、官民の垣根を越えた人材交流を一層促進します。また、民間人材がスムーズに公務組織でのスタートを切り、最大限の力を発揮できるよう後押しする取組を充実させ、「民間と公務の知の融合」を加速させます。
 優秀な人材の確保は組織の持続可能性の礎です。新時代を見据えた採用戦略を議論するための意見交換スキームを創設します。また、採用時の給与水準の改善を始め、人材確保を支える給与処遇の実現に取り組みます。さらに、オンラインを活用したより受験しやすい採用試験の実施方法を検討していきます。非常勤職員制度についても、適切な運用の在り方の検討を進めていきます。

3 第二に、職員の成長を後押しし、個の成長を組織の成長へとつなげることが重要です。
 職員の主体的な学びやキャリア形成を強力に支援し、学びがキャリアパスに、そして更なる成長意欲に結びつく「学びと仕事の好循環」づくりに取り組みます。職員の活躍の場を広げ、成長につながる機会として、兼業の在り方についても検討していきます。
 職員一人一人の成長を組織パフォーマンス向上につなげる要は、組織戦略に根差したきめ細かい人材マネジメントです。データ・デジタルも活用しながら、効率的に実現する必要があります。関係する省庁とも連携して検討を深めていきます。また、職員の役割や組織への貢献などをより給与に反映させるなど、職員のモチベーションをより高める給与制度へと改善します。

4 第三に、職員の多様なワークスタイル・ライフスタイルの実現、Well-beingの土台づくりは、個々の職員の活躍に、そして公務組織の魅力の向上にもつながります。
 フレックスタイム制を活用した「ゼロ割振り日」の一般の職員への拡大、勤務間のインターバルの確保を始め、柔軟な働き方を実装するための制度改革を進めます。また、仕事と生活の両立をしやすくする制度の拡充の検討を進めるとともに、テレワーク関連手当の創設など、給与面からも職員の働き方やライフスタイルの選択を一体的に後押しします。
 働き方改革を確実に進め、公務職場の働き方に対する「ブラック」なイメージを払拭する必要があります。勤務時間の調査・指導体制を強化するとともに、人事・給与関係業務の改善といった超過勤務を縮減するための更なる取組を実行します。公務・民間双方の健康管理体制について分析を深め、公務版「健康経営」の推進につなげていくとともに、公務職場の「ゼロ・ハラスメント」に向けて取り組み、職員のWell-beingの土台を確かなものとします。

5 人事院はこれまでも、時代環境に即した公務員人事管理のアップデートに取り組んできました。しかし、公務を取り巻く情勢が変化を続け、不確実性を増していく時代に、従来の延長線上にある考え方では公務員人事管理の課題に対する解を見いだすことは困難です。新時代の公務に求められる人材像や行動規範とはどのようなものか――このような論点を明らかにするとともに、将来にわたって優秀な人材を公務組織に惹きつけるため、人材マネジメントのグランドデザインを構築することが急務です。
 人事院は、新時代の公務員人事管理の在り方について聖域を設けることなく骨太かつ課題横断的な議論を行うため、各界有識者による会議を設置します。その議論・提言を踏まえながら、公務員人事管理の抜本的なアップグレードを実行していきます。

6 本日、人事院は、国家公務員の勤務時間及び給与の改定について、国会及び内閣に対し、勧告を行いました。
 勤務時間については、一般の職員についても、フレックスタイム制の活用により、勤務時間の総量を維持した上で、週1日を限度に勤務時間を割り振らない日(ゼロ割振り日)を設定することを可能としました。
 給与については、本年は、月例給と特別給(ボーナス)のいずれも民間給与が国家公務員給与を上回る結果となりました。このため、初任給を始め若年層に重点を置いて、月例給を平均3,869円(0.96%)引き上げるとともに、特別給を年間4.50月分に引き上げました。民間における大幅な賃上げを反映して、月例給は、過去5年の平均と比べ、約10倍のベースアップとなります。
 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置として、情勢適応の原則に基づき国家公務員の適正な処遇を確保しようとするものです。勧告を通じて国家公務員に適正な処遇を確保することは、国家公務員の士気の向上、公務における人材の確保や労使関係の安定にもつながるものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤となるものです。
 国会及び内閣におかれては、人事院勧告制度の意義や役割に深い理解を示され、勧告どおり実施されるよう要請いたします。
 国民の皆さんにおかれては、行政各部において公務員がそれぞれの職務を通じ国民生活を支えていることについて、深い御理解をいただきたいと存じます



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