第1編 《人事行政》

【第2部】 在職状況(年齢別人員構成)の変化と人事管理への影響

第2章 民間企業等の在職状況の実例と取組

第2節 地方公共団体における在職状況の実例と取組

2 年齢別人員構成に偏りのある地方公共団体の例

今回、人事院は、平成28年1月下旬から3月上旬までにかけて、職員の年齢別人員構成に特色があり、国と同様の問題意識を有している六つの地方公共団体を対象に、一般行政職職員の在職状況及び年齢別人員構成を適正化するための取組等について聞き取り調査を行った。結果の概要は次のとおりである。

(1)年齢別人員構成の状況

各年齢層の割合の変化については、10年前と比べて、新規採用者数の回復に伴い「30歳未満」が増加するとともに、再任用者数の増加により「60歳以上」が増加したとする団体が多い。一方、新規採用抑制等が行われた年齢層である「30~39歳」が減少したとする団体が多い。

次に、各団体において、本来必要と考える職員数よりも実際の職員数が多い年齢層(以下「職員数が多い年齢層」という。)及び本来必要と考える職員数よりも実際の職員数が少ない年齢層(以下「職員数が少ない年齢層」という。)については、前者は「50~59歳」が最も多く、次いで「40~49歳」が多い。一方、後者は「30~39歳」が最も多く、次いで「30歳未満」が多い。

(2)年齢別人員構成に偏りを生じた原因

上記(1)で述べた職員数が多い年齢層が生じた原因としては、「バブル期の採用拡大」など過去の一時期における大量採用を挙げた団体が多い。一方、職員数が少ない年齢層が生じた原因としては、「過去の採用抑制」や「職員数の削減」を挙げた団体が多い。

(3)職員の年齢別人員構成の偏りによる影響

ア 職員数が多い年齢層があることによる影響

職員数が多い年齢層があることによる影響については、職員数が多い年齢層及びその下の年齢層における「昇任・昇格の遅滞」や、職員数が多い年齢層の「モチベーションの低下」及び「計画的な育成が行えない」を挙げた団体が多い。

イ 職員数が少ない年齢層があることによる影響

職員数が少ない年齢層があることによる影響については、職員数が少ない年齢層の「計画的な育成が行えない」、「昇任・昇格候補者や幹部要員の不足」及び「業務量の増加」を挙げた団体が多い。また、中堅層や高齢層から職員数が少ない若手・中堅層への「技能継承ができない」を挙げた団体が多い。

(4)職員の年齢別人員構成の偏りが生じていることへの対応

ア 職員数が多い年齢層があることへの対応

職員数が多い年齢層があることへの対応については、「昇任・昇格における厳格な選抜」や「新たな職を設置して中堅層・高齢層の職員を配置」のほか、早期退職の勧奨やその際の退職金割増率の引上げ、勧奨退職年齢の早期化などの取組が行われている。

イ 職員数が少ない年齢層があることへの対応

職員数が少ない年齢層があることへの対応については、「新規採用の拡大」、「中途採用の拡大」及び「研修の充実」を挙げた団体が多い。そのほか、「再任用職員の活用」、「非常勤職員の活用」、「任期付職員の活用」、「業務の民営化・外部委託等の推進」、「昇任・昇格における厳格な選抜」、「抜擢人事の推進」、「給与制度・人事制度の見直し」などの取組が行われている。

(5)再任用職員の活用

再任用職員に期待することについては、「知識・経験の後輩への継承」、「職場における相談役」及び「一担当者としての着実な業務遂行」を挙げた団体が多い。そのほか、「知識・経験をいかした高いパフォーマンス」、「職場内での円滑なコミュニケーション」及び「仕事への高いモチベーション」が挙げられた。

一方、再任用職員の活用に際して困難を感じていることについては、「モチベーションの維持」が最も多く、次いで「経験や能力と仕事のマッチング」、「定年時点での職員のマインドの転換」が挙げられた。そのほかでは、「処遇への納得感の向上」や「職場での良好な人間関係の確保」が挙げられた。

(6)地方公共団体における特徴的な取組

今回の調査対象団体で年齢構成の偏りに対応して行われている特徴的な取組として、次が挙げられる。

(人材確保)

  1. ア 年齢構成の凹みを埋めるため、経験者採用や社会人採用の年齢制限撤廃等による中途採用の拡大、人事評価制度等を活用した若い世代の優秀者の選抜・登用などの取組が行われている。

(人事管理や人材育成)

  1. イ 若い職員の専門性を強化するため、採用後早い段階で職員自身に特定の専門分野を選択させ、その分野を基軸に人事異動を行う取組が行われている。
  2. ウ 各職場における人材育成(OJT)を強化するため、各班に「OJTリーダー(原則班長)」を設置して組織全体で班員を育てる取組や、新任主査級職員(36~40歳前後)を対象に「ジュニアボード」を各部局に設置して5人程度で各部局の政策課題や組織運営課題を検討・実践し、高い成果には知事表彰を与えるなどの取組が行われている。
  3. エ 中堅層・高齢層のモチベーションを維持するため、スタッフ的なポストを増設し、これらの職員に若手職員の育成・指導を含め様々な役割を担わせることや、係長級昇任試験について従来の30歳台、40歳台の区分に加え、50歳台の職員を対象とする区分を新設すること等の取組が行われている。

(再任用職員の本格的活用)

  1. オ 再任用職員を戦力として活用するため、フルタイム・短時間勤務を問わず、できるだけライン職に組み込むとともに、再任用職員向けの研修の充実を図るなどの取組が行われている。
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