傷病等級の決定等について
(昭和52年5月17日職補―344)
(人事院事務総局職員局長発)
 
最終改正 平成20年4月1日職補―121
 
 今般、災害補償制度の運用について(昭和48年11月1日職厚―905人事院事務総長。以下「運用通達」という。)の第9の2傷病補償年金関係が新設されましたが、傷病等級の決定の細目等については、昭和52年4月1日以降、下記によつてください。
 
 
第1 傷病等級決定の原則
1 「障害の状態」を認定する場合の期間的基準
  運用通達第9の2の2の「6月以上の期間にわたつて存する障害の状態により認定する」とは、規則16―0第25条の2に定める障害の状態が6月以上引き続く場合に、当該障害の状態に応じ、傷病等級を決定することをいい、具体的には、次によるものとする。
 (1) 療養開始後1年6月を経過した日(以下「移行日」という。)において、移行日後6月以上にわたり、同様の状態が継続すると見込まれる場合には、移行日前における障害の状態の変更の有無にかかわらず、移行日の障害の状態により、傷病等級を決定するものとする。(例1参照)
 (2) 移行日において、移行日後6月以内に障害の状態が変更すると見込まれる場合であつても、移行日前6月間における障害の状態に変更がなかつた場合にあつては、当該移行日前における障害の状態により、傷病等級を決定するものとする。(例2の(1)参照)
 (3) 移行日において、移行日前6月以内に障害の状態の変更があり、更に移行日後6月以内にも、変更すると見込まれる場合において、移行日後6月以内の変更の時期、障害の状態が明らかに予測できるときは、移行日前後の障害の状態及び(1)、(2)との均衡等を総合勘案して、傷病等級を決定するものとする。(例2の(2)のア~ウ参照)
 (4) (3)の場合において、移行日後6月以内の変更の時期、障害の状態が明らかに予測できないときは、移行日における障害の状態により、傷病等級を決定するものとする。(例2の(2)のエ参照)
 (5) 移行日後における障害の程度の認定については、(1)から(4)の例により、引き続く6月間における障害の状態により、判断するものとする。
  (例1) 療養開始後1年6月を経過した日において、移行日前及び移行日後6月間に障害の状態に変更がないと見込まれる場合
   
  (例2) 療養開始後1年6月を経過した日において、移行日後6月間に障害の状態に変更が見込まれる場合
  (1) 移行日前6月間に変更がない場合
  
  (2) 移行日前6月間に変更がある場合
   ア 移行日後の変更の時期、状態が明らかなとき(その一)
  
   イ 移行日後の変更の時期、状態が明らかなとき(その二)
  
   ウ 移行日後の変更の時期、状態が明らかなとき(その三)
  
   エ 移行日後の変更の時期、状態が不明確なとき
  
2 併合の取扱い
  運用通達第9の2の3に該当する場合は、一の障害の状態が障害等級の第5級相当であり、他の障害の状態が障害等級の第8級相当以上である場合及び一の障害の状態が障害等級の第4級相当以上であり、他の障害の状態が障害等級の第13級相当以上である場合に限られる。
3 既存障害を加重した場合の取扱
  運用通達第9の2の4による場合には、同一部位に新たな負傷又は疾病にかかつた場合のほか、
 (1) 同一部位に新たな負傷又は疾病にかかるとともに、他の部位にも負傷又は疾病にかかつた場合
 (2) 既に障害のあつた者が他の部位に新たな負傷又は疾病にかかつたため、障害等級に係る組合せ等級に該当する状態に相当する状態に至つた場合
 が含まれる。
4 「障害の状態」の意義等
  規則16―0第25条の2に規定する字句の意義等は、次のとおりとする。
 (1) 傷病等級の第3級の第3号、第4号及び第6号の「常に労務に服することができないもの」とは、「生命維持のため必要な身のまわり処理の動作について、自用を弁ずることができるが、療養管理上労務に服することが禁じられている場合及び身体能力からみて労務に服することができない状態にあるもの」をいう。この場合において、「労務に服することができない状態」とは、被災前に従事していた業務に従事することができない場合ばかりでなく、当該業務に関連した補助的業務又はその他の軽易な業務にも服せない状態をいう。
   したがつて、具体的な認定に当たつては、療養管理の必要性、身体的能力(広く日常生活全般でなく、生命維持のため必要な食事、用便、歩行など、身のまわり処理の動作ができる程度のものであるか否か)、被災前の作業態様と現存する労働能力との関係(いわゆる原職復帰の可能性に限らず―例えば重筋労働者の場合にあつては、これに関連した軽易な雑役務に対する就労の可能性等)等を総合的に勘案のうえ、判断するものとする。
 (2) 傷病等級の第1級第9号及び第2級第6号の「前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの」並びに第3級第6号の「その他前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの」には、原則として、運用通達第9の2の3に定める併合の取扱いにより、第1級又は第2級若しくは第3級に決定されるものが、それぞれ該当する。
 (3) 「介護」の状態による判断等は、次によるものとする。
  ア 傷病自体の障害(療養管理上禁じられているために、傷病自体の障害と同様の状態にあるものを含む。)の程度と介護の状態(「常に」又は「随時」)の双方をその要件としているのは、「神経系統の機能又は精神」の障害と「胸腹部臓器の機能」の障害である。
    したがつて、傷病等級の第1級の第1号、第2号、第5号から第9号まで及び第2級の第1号、第4号から第6号まで並びに第3級の第1号、第2号、第5号及び第6号に定められた障害の状態に該当する場合には、介護の状態に関係なく、それぞれ該当する傷病等級に決定するものとする。
  イ 傷病等級の第1級及び第2級並びに第3級の第1号、第2号、第5号及び第6号後段に定められた障害の状態に該当する場合には、労務に服することの可否に関する判断をまつまでもなく、それぞれ該当する傷病等級に決定するものとする。
第2 傷病等級決定の取扱い細目等
1 傷病の等級及び障害の程度
  規則16―0第25条の2の表に定める傷病等級及び障害の程度は次のとおりである。
 (1) 眼の障害
   第1級第1号 両眼が失明しているもの
   第2級第1号 両眼の視力が0.02以下になつているもの
   第3級第1号 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつているもの
 (2) 口の障害
   第1級第2号 咀嚼及び言語の機能を廃しているもの
   第3級第2号 咀嚼又は言語の機能を廃しているもの
 (3) 神経系統の機能又は精神の障害
   第1級第3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し、常に介護を要するもの
   第2級第2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し、随時介護を要するもの
   第3級第3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し、常に労務に服することができないもの
 (4) 胸腹部臓器の障害
   第1級第4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に介護を要するもの
   第2級第3号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、随時介護を要するもの
   第3級第4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に労務に服することができないもの 
 (5) 上肢の障害
   第1級第5号 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
   第1級第6号 両上肢の用を全廃しているもの
   第2級第4号 両上肢を腕関節以上で失つたもの
   第3級第5号 両手の手指の全部を失つたもの
 (6) 下肢の障害
   第1級第7号 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
   第1級第8号 両下肢の用を全廃しているもの
   第2級第5号 両下肢を足関節以上で失つたもの
 (7) (1)から(6)までに該当しないもの
   第1級第9号 前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの
   第2級第6号 前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの
   第3級第6号 第3号及び第4号に定めるもののほか、常に労務に服することができないものその他前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの
2 傷病部位別傷病等級の決定基準
 (1) 神経系統の機能又は精神の障害
   神経系統の機能又は精神については、その障害の状態により基本的には、次のものが該当するものであること。
  第1級 自用を弁ずることができないもの
  第2級 多少自用を弁ずることができる程度のもの
  第3級 自用を弁ずることができるが、常態として労務に服することができないもの
  個々の疾病についての取扱いは、次によるものとする。
  ア 中枢神経系(脳)の損傷に係る傷病等級の決定は、次による。
   (ア) 「重度の神経系統の機能又は精神の障害のために常に介護を要するもの」は、第1級とする。
     失外套症候群(植物状態)、高度の痴呆、記憶障害、情動障害、失見当識などのために常に厳重な看視を必要とするもの及び体幹の機能障害のため座位又は起立位を保つことが困難なものが、これに該当する。
   (イ) 「高度の神経系統の機能又は精神の障害のために随時介護を要するもの」は、第2級とする。
     痴呆、情動障害、記憶障害、無関心、無為徘徊、弄火、不潔、性格変化、失認、失行、失語、幻覚、妄想、発作性意識障害の多発などのため随時他人による看視を必要とするもの及び体幹の機能障害によつて自力のみで歩行することが困難(100メートル以上歩行困難)なものが、これに該当する。
   (ウ) 「著しい神経系統の機能又は精神の障害のために、常に労務に服することができないもの」は、第3級とする。
     知能低下、自発性減退、記憶減弱、判断力障害、計算力障害、体幹の機能障害による歩行障害などのため、常に労務に服することができないものが、これに該当する。
   (エ) なお、外傷性てんかんで他の精神・神経障害を伴わない場合に、十分な治療にかかわらず、意識障害を伴う発作の多発(平均して1週1回以上程度のもの)するものについては第2級、その他のもので常に労務に服することができないものについては、第3級に該当するものとする。
  イ せき髄の損傷に係る傷病等級の決定は、次による。
   (ア) 「両下肢の用を全廃しているもの」は、第1級とする。
   (イ) 外傷、減圧症又はその他の疾病によるせき髄の損傷による障害の状態は複雑な諸症状を呈する場合が多いので、アの中枢神経系(脳)の場合と同様に、諸症状を総合評価して、障害の程度により、次の3段階に区分して傷病等級を決定するものとする。
    a 「生命維持に必要な身のまわり処理の動件について、常に介護を要するもの」は、第1級とする。
    b 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」は、第2級とする。
    c 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、常に労務に服することができないもの」は、第3級とする。
  ウ その他
    神経系統の機能又は精神の障害でア及びイに該当するもの以外のものの認定に当たつては、ア及びイに準ずるものとする。
 (2) 胸腹部臓器の障害
   胸腹部臓器の障害に係る傷病等級の決定は、次による。
  ア 「重度の胸腹部臓器の障害のために、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に介護を要するもの」は、第1級とする。
    胸腹部臓器の障害により、日常生活の範囲が病床に限定されている状態のものが、これに該当する。
  イ 「高度の胸腹部臓器の障害のために、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」は、第2級とする。
    胸腹部臓器の障害により、日常生活の範囲が主として病床によるが、食事、用便、自宅又は病棟内の歩行など短時間の離床が可能であるか又は差し支えない程度の状態のものが、これに該当する。
  ウ 「著しい胸腹部臓器の障害のために、生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、常に労務に服することができないもの」は、第3級とする。
    胸腹部臓器の障害により、通院、自宅周囲若しくは病院構内の歩行が可能か又は差し支えないが、常に労務に服することができない状態のものが、これに該当する。
 (3) 眼、上下肢等の障害
   視力障害、上下肢の器質障害及び機能障害、そしやく・言語の機能障害に関する障害の状態の認定基準は、障害等級の認定基準(「障害等級の決定について」(昭和51年8月30日職補―557人事院事務総局職員局長))によるものとする。
第3 認定に当たつての留意点
1 障害の程度を認定するに当たつては、療養補償を受けている者のうち、規則16-4第32条又は第33条に定めるところにより、1年6月以上にわたつて療養補償を受けている者から提出された「療養の現状報告書」(「人事院規則16―4(補償及び福祉事業の実施)の運用について(平成14年6月20日勤補―182人事院事務総長)」(以下「規則16―4運用通達」という。)別紙第55)に記載された症状等によつて、障害の程度が傷病等級のいずれに該当するかを認定するものとする。
  この場合において、当該報告書の内容が不十分な場合には、更に、主治医に対する照会等適宜傷病の状態に関する調査を行つたうえ、障害の程度を認定するものとする。
2 規則16―4第33条第2項の「必要の都度」には、療養補償を受けている者の障害の程度に変更があると推定できるに至つた場合、その傷病が治つたと推定できるに至つた場合等が該当する。
3 障害の程度の認定は、原則として、規則16―4第32条又は第33条の規定による「療養の現状報告書」に基づいて行うことになるので、当該報告書の「6 日常生活の概況」及び「9 医師の証明」の欄については、次の要領により、具体的な医学的所見等の記載が必要である。なお、記載欄が不足する場合にあつては、適宜別紙に記載のうえ、添付するものとする。
 (1) 「6 日常生活の概況」の欄について
   当該傷病に関係のある日常生活の状況について、次に該当する事項ごとに具体的にその能力、程度を記載するほか、日常生活の状況が今後6月以内に変化する見込みについて、その有無及びその理由を記載すること。
   行動能力、食事、上肢筋力、用便、歩行、精神能力、言語能力、療養管理等
 (2) 「9 (イ)傷病又は障害の種類」の欄について
   公務上若しくは通勤による傷病名又は障害の部位及びその程度を分かりやすく記載すること。
 (3) 「9 (ロ)傷病の経過及び治療方法の概要」の欄について
   過去1年間における療養の内容及び経過について、治療を受けた期間と主たる治療及び傷病の経過の概要を記載すること。
   なお、1年以内に転医してきたものである場合には、現在の医療機関に関するものについて記載し、転医前のものについては、現症を説明するうえで参考となるものがあれば追記すること。
   その他の参考事項として、上記の傷病と関係のない傷病について療養を行つた場合には、その傷病名及び療養の概要を記載するほか、既往症又は既存障害がある場合には、その傷病名又は既存障害の部位及びその程度を分かりやすく記載すること。
 (4) 「9 (ハ)傷病又は障害の現状」の欄について
   引き続いて療養を行つている現在の身体の状態についての所見を、次により記載すること。
  ア 主訴
    自訴を列挙して記載すること。
  イ 他覚的所見
    症状について、その部位、範囲、程度等を分かりやすく記載すること。特に精神症状の場合には、できるだけ具体的に記載すること。
  ウ エツクス線、心電図、脳波及び筋電図等の所見並びにその他の主要な検査成績所見
    各種検査結果は、診断時以前(なるべく3月以内)において行つた検査について記載すること。
    なお、次の身体の状態がある者については、特に次の検査所見を記載すること。.(現在治療を行つている医療機関で検査できないものについては「○○の障害がある」旨記載すること。)
   (ア) 視機能又は聴機能障害のある場合 それぞれの検査所見
   (イ) じん肺のある場合 自覚症、一般的所見、胸部所見、エックス線による検査、結核精密検査及び心肺機能検査所見
   (ウ) せき髄損傷のある場合 運動器系所見、泌尿器系所見
 (5) 「9 (ニ)今後の見込み」の欄について
   今後の治療の要否及び療養等の見通しを、次により記載すること。
  ア 今後の治療の要否とその概要
    診断時に入院療養中の者で引き続き入院を要する者、又は診断時に通院療養中で、症状の変化等から入院療養を要する者については、「入院要」と、それ以外は「入院否」と記載し、今後治療を要する者については「治療要」と、治癒の場合は「治療否」と記載するとともにその概要について記載すること。
  イ 今後6月間の療養等の見通し
    今後6月間における入院・通院(全部休業又は一部休業を要する場合)の要否及び治癒等の見通しについて具体的に記載すること。
四 規則16―4第5条の規定により、傷病補償年金を受けようとする者が提出する「国家公務員災害補償傷病補償年金請求書」(規則16―4運用通達別紙第9)の「7 傷病の名称、部位及びその状態」の欄に記入するに当たつて、同請求書に添付する診断書の記載事項については、3の記載要領の例によるものとする。
五 規則16―4第11条の規定により、傷病補償年金受給権者が障害の程度に変更があつた場合に提出する「国家公務員災害補償傷病補償年金変更請求書」(規則16―4運用通達別紙第11)に添付する診断書の記載事項についても、3の記載要領の例によるものとする。
 
以   上
Back to top