人事院 人事院ホーム

総裁訓示

令和4年度

令和4年4月6日 第56回合同初任研修 川本総裁訓示 

川本総裁訓示の様子の画像


 人事院総裁の川本裕子です。
 あまたある職業の中で、国家公務員を選択された皆さんを、心から歓迎いたします。
 
 皆さんの仕事の対象は、社会全般に亘ります。そして人類社会は今、歴史上前例のない事態に直面しています。コロナウイルスは変異が続き、ロシアのウクライナ侵攻により、世界秩序は再び大きく変わろうとしています。地球温暖化問題も待ったなしです。そして我が国は、人口高齢化による社会経済の変容をどう乗り切っていくかという、人類社会が直面する共通の難題の解決を試みる最先端にあります。
 こうした中で、国民の利益を守り、活力ある社会を築くーーー日本政府に課せられた責任は重大ですし、またそれだけに国家公務員への国民の期待は高いものがあります。
 
 今日はまず3つ、皆さんにお伝えしたいことがあります。
 まず最初は、常に国民に向き合い、自己を規律するということです。国民の期待に応えるため、国家公務員には高い規律が求められます。「規律」と言うと、上司の命令に、忠実に従うことのように受け取る人も多いですが、違います。
 大事な原則は、国民の利益を最優先することです。行政上の課題を把握した際に、国民の利益、公益とは何かを考え、客観的なデータとしっかりしたロジックで意見を言うことが、公務における義務だと考えて下さい。そしてあくまで正直に、誠実に職務に対処する。こうした自己規律を、いつも忘れないでいただきたいと思います。皆さんがどのような職位に就いたとしても、国民に対して、説明責任を果たしていけるかを、いつも自らに問うてほしい。自己規律を高く持てば、怖れることは何もありません。
 
 次に貪欲に能力を磨き、高い視座を持つことです。
 国際的な社会経済情勢の大きな変化、デジタル化の急速な進展など、公務が対応を迫られる課題は複雑化、高度化しています。こうした情勢の変化について、広く、鋭敏に情報を収集・分析し、適切な政策の選択肢をタイムリーに提示する能力が公務員には求められています。同時に、自分の専門領域を超えて常に人類社会や日本社会の行方を見据える、高い視座を持つことが大切です。
 皆さんは、日本の将来を創造していく、国家公務員としての高い能力と識見を示されて選抜された、国の宝です。しかし、時代環境の変化のスピードは想像を超えていることも現実です。決して自足することなく、ご自身の能力、資質、スキルが、課題に対応し得るものなのかどうか、振り返り、自己成長するように努めてほしい、そう願っています。

 私が大学で教鞭を執っていた時、卒業生に贈っていた言葉を紹介します。これから国家公務員として活躍が期待される皆さんにも共通する内容だと思います。
 その言葉は、
 「You should know everything about something.
  You should know something about everything.」
 
 この言葉からお伝えしたい趣旨は、「自分の専門について優れた能力を持つとともに、専門外のことも語れる意見、しっかりとした自分を持ちなさい」ということです。
 
 そして3つめとしてお伝えしたいのは「国際性と開放性」についてです。
 ご自身が携わる行政分野は、諸外国と比べてどうか、諸外国に遅れを取っていないか、などと、常に世界の動向に目を向けてほしい。日本の国民、日本の社会に、世界最高水準の行政サービスを届ける、そういう強い気持ちを持って頂きたいと思っています。
 ある一つの物事を捉える際にも、言語によって解釈の仕方、切り取り方は異なるものです。外国語の習熟に今一度注力してほしいと思います。情報源が広がり、物事を多面的に、より客観的に捉えることができるようになります。
 また、よく指摘される縦割りの思考、これには何重にも注意して頂きたいことです。ひとつの省庁に長く在籍すればするほど、専門性は高まりますが、国民の真の利益が見えにくくなり、考え方も現状維持に偏りがちになります。これらは「サイロ」型思考と言われます。皆さんにはオープンな思考、柔軟な発想、それをいつまでも忘れないでほしいと思います。人事院としても政府内、民間などとの人事交流はこれまで以上に強力に推進していきます。
 
 今日は、新たに国家公務員になられた方々を迎え、非常に強い期待の故、色々とお願いをしてきました。
 ・ 常に国民と向き合い、自己を規律する
 ・ 能力を磨き、高い視座を持つ
 ・ 国際性と開放性
 これらはあくまで人事院総裁と言う立場上申し上げました。私自身も足りない事ばかり。日夜反省をし、苦悩していることです。
 人事院は、適切な給与体系、能力を磨く研修機会の提供、さらには長時間労働の是正などの働き方改革など、皆さんが公務員として職務を全うできるよう、最大限の支援をしていきます。各省の人事担当部局とともに、活力ある職場づくりに務めますが、現場からの問題提起も歓迎します。困ったことがあった時の相談窓口でもあります。より良い公務職場の実現に向かって、一緒に前進していきましょう。
 
 最後になりましたが、本日は「グロース・マインドセット」と言う言葉を皆さんに送りたいと思います。
 著名な心理学者の方が提唱され、実証されてきている考え方です。人間には大きく分けてグロース・マインドセット、成長型思考とフィクスト・マインドセット、固定的思考があり、最初の出発点が同じでも、大きく伸びる人は前者、グロース・マインドセットです。他方、後者のフィクスト・マインドセットでは伸びが止まってしまう。こちらでは、知性は、例えば試験の成績などで示された固定的なものだと考えます。それがゆえに挑戦による失敗を恐れ、批判を受ける機会を避けます。
 これに対し、グロース・マインドセットは、知性はいくらでも改善拡大できると考えます。失敗を恐れて難題を回避するのではなく、難題であればこそ、学びを多く得られる成長の機会として歓迎する心持ちのことです。
 人生においては、数多くの難題に直面します。また、皆さんが携わる仕事に対して、ポジティブな反応だけなく、当然のことながら、ネガティブな反応も聞こえてきます。他者からの批判的なフィードバックを聞きたくない時もあると思います。しかし、そのようなフィードバックは、むしろ「絶え間ない成長の種だ」と捉え、「改善のきっかけになる」、そう思ってください。
 この「グロース・マインドセット」というスタンスで物事に当たることで、自己成長につながり、職業人としての幅が広がるものと考えています。
 是非、心のどこかに、とめ置いていただきたいと思います。
 

 皆さんが、国家公務員としての気概を持って、多くの難題に立ち向かい、日本の将来を創っていくことを大いに期待しています。
 そのように果敢にチャレンジしている皆さんとお会いし、直接お話できる日を楽しみにしています。