総裁訓示

令和8年度

令和8年4月6日 第60回合同初任研修 川本総裁訓示 

    

 人事院総裁の川本裕子です。

 今日ここに、国家公務員としてスタートを切られた皆さんを、心から歓迎いたします。
 いま、世界は地政学的な緊張の激化、気候変動の深刻化、技術革新の急速な進展などで
 大きく揺れ動いています。
 日本国内でも少子高齢化が一層進む中で、強い経済を創り、災害にも備えるという、
 多面的で長期的視点に立った政策対応が求められています。
 国民の利益を守り、我が国の将来展望を確かなものとする政府に課せられた責任は、
 これまで以上に重いものがあります。
 それゆえに国民から強い期待を寄せられるのが国家公務員です。

 私のいる人事院は、国家公務員の採用から、給与処遇、労働時間をはじめとする
 勤務環境の整備、様々な研修の制度、不服申立てに対する公平審査など、
 皆さんが安心して職務に専念できる基盤を支える役割を担っています。
 今日はその立場から、国家公務員として歩み始める皆さんに、
 3つのことをお伝えしたいと思います。
 
 1つ目は、「常に国民に向き合い、自己を規律する」ことです。
 どうすれば国民の生活を良くすることができるのか――皆さんはこれから、
 配属されるそれぞれの行政部署で、この問いを繰り返しながら仕事をされると思います。
 現代は膨大な情報があふれています。対立や分断が起こりやすい時代だからこそ、
 国家公務員には、国民のために、客観的なエビデンスと冷静なロジックに基づいて判断し
 行動することが求められます。
 その大前提として大切なのは、正直さと誠実さです。
 皆さんには、こうした基本原則に基づいて自らを律し、自分の判断を常に磨き続けてほしい。
 私から今日皆さんに伝えたい第一のメッセージです。
 人事院は昨年5月に「国家公務員行動規範」を策定いたしました。
 基本原則を簡潔に言語化したものです。人事院のホームページでもご覧になれます。

「国民を第一に考え、中立・公正な立場から、専門性と根拠に基づき判断し、行動する」

 皆さんが働く中で、もし迷ったり、悩まれた時には、是非この行動規範に立ち戻り、
 判断のよりどころにして下さることを心から願っています。
 
 2つ目は、「貪欲に学び、能力を磨き続けてほしい」と思います。
 近年、生成AIが飛躍的に進化しています。
 皆さんも、日々の生活や大学・大学院での勉強などで活用されてきたことでしょう。
 公務の職場も、生成AIによって、業務プロセスや働き方、組織カルチャーすらも、
 様変わりするかもしれません。
 しかし、国家公務員が果たすべき役割、責任は不変です。
 皆さんは、日本の将来を創造する高い能力と識見ゆえに選抜された、いわば国の宝です。
 だからこそ、歩みを止めず、ご自身の資質、スキルを常に問い直し、貪欲に学び、
 業務経験を重ねて成長し続けてほしいと思います。組織に甘んじて埋没することなく、
 常にイノベーティブな発想で問題解決に取り組む――
 そうした国家公務員へと成長していかれることを確信しています。
 
 3つ目は、「国際性とオープンな思考を持つべき」ということです。
 国の行政は、その国の中には比較対象がありません。
 それだけを見ていても、良し悪しが分かりにくいものです。
 ぜひ、皆さんには、国民の皆さんに世界最高水準の行政サービスを届ける、
 その強い気持ちを持っていただきたいと思います。
 そのためには、常に世界の動向に目を向け、自分たちが携わっている行政分野が、
 諸外国に比してどの位置にあるのか、意識することが大切です。
 直接、外交や国際交渉に携わらない部署であっても、
 海外の事例に学び、外国語で情報に触れ、物事を多面的に捉える姿勢は、
 行政官として常に大きな力になります。
 また、いわゆる縦割りの思考、これはかつてより指摘されていますが、注意が必要です。
 一つの組織に長くいるほど専門性は高まる反面、国民全体の利益が見えにくく、
 考え方も現状維持に傾きやすくなりがちです。
 皆さんには、自分の担当や組織の枠を超えたオープンな思考、広い視野と高い視座を、
 いつまでも持ち続けてほしいと思います。
 
 以上、「行動規範」、「歩みを止めない」、「国際的でオープンな思考」。
 3つの言葉を、今日、国家公務員として新たな一歩を踏み出す皆さんにお贈りします。

 最後に、公務職場の現状について少し触れたいと思います。
 私たち人事院は、いわば霞が関のHR部門として、
 国家公務員の皆さんが高い意欲を持って、持てる力を最大限に発揮されるよう、
 内閣人事局、各府省と連携して、公務職場の様々な課題解決に取り組んでいます。
 給与は近年若手を中心に水準を引き上げており、
 様々な研修機会を拡充し、キャリア形成を支援しています。
 公務職場でもフレックスタイム制の活用が広まっており、
 勤務時間の管理についても幹部・管理職のマネジメントを強め、
 忙しくなったときでも勤務間のインターバル時間が確保されるようにしています。
 また、仕事と生活の両立支援を充実させており、例えば、男性職員の育児休業取得率は、
 民間平均を大きく上回り、85%に達しています。
 
 このように、人事院は、活力ある公務職場の実現に取り組んでいます。それと同時に、
 国家公務員の職場での困り事の相談窓口としても、頼りになる存在でありたいと思います。
 公務職場の魅力向上に当たっては皆さんを含め、現場からの問題提起を歓迎します。
 国家公務員の仕事には、「国のミライをつくる、唯一無二の挑戦がある」。
 これは、全府省横断のチームで新たに策定した国家公務員のブランドメッセージです。
 皆さん一人一人が、国家公務員という仕事に気概を持ち、
 困難な課題に挑まれることを心から期待しています。

 今日この日に胸に抱いておられる志、熱い思いを、どうかこれからも忘れないでください。
 皆さんと直接お話しできる機会を楽しみにしています。
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