第26回(平成25年) 人事院総裁賞「個人部門」受賞

大泉  彰 氏 (59歳) 

(海上保安庁第十一管区海上保安本部
石垣航空基地 上席飛行士)

 大泉さんは、海上保安庁初の航空機無事故飛行通算2万時間を達成し、夜間・強風雨等の悪条件下も含め、海難救助、領海警備等の困難な業務を確実に遂行したことが認められました。

☆大泉さんが従事しておられる業務の内容をお聞かせ下さい。
 海上保安業務は、海上における警察や消防救急等の業務です。具体的には治安維持、領海警備
環境保全、海難救助、船舶交通安全の確保や海洋調査等であり、これらの業務を巡視船艇、航空機等で実施しています。私は、航空基地に勤務し航空機のパイロットでありながら、海上保安官、司法警察職員として犯罪捜査等の業務に従事しています。以前はヘリコプターの機長として、映画「海猿」でおなじみの吊上救助にも従事していましたが、現在は飛行機の機長として、海上保安庁の重要任務である領海警備を中心とした業務に従事しています。また、昨年来、外国公船等による度重なる領海侵犯等が行われている海域であり、それら船舶の早期発見が航空機の最重要任務です。

航空機無事故飛行を通算2万時間達成されましたが、これは具体的にはどの程度突出した業績なのですか。
 飛行時間二万時間を達成するには、単純計算で年間500時間のフライトを40年間続けることで達成されるものです。そのためには大きな病気や怪我をしないことが必須です。海上保安庁のパイロットは、保有する国家資格により搭乗する航空機にバラつきがあり、また人事異動で本庁や管区本部等の事務職で勤務することもありますので一概に飛行時間を比較することはできませんが、これまで現役で退職した先輩方では達成されておらず、現役パイロットの同僚や後輩達でも当面2万時間を達成するのは難しいのではないかと言われています。ここで特筆すべきは無事故での達成であり、これまで夜間悪天候下での厳しい任務もありましたが、それを支えて一緒に飛行したクルーや関係職員には感謝の気持ちでいっぱいです。

 

59歳になられた現在も第一線で活躍するため、どのような工夫や鍛錬をされているのですか。
 パイロットは、年1回の航空身体検査をクリアーしなければなりません。検査項目には視力、聴力、内臓疾患等の身体の他に心の健康もあり、これらに適合しなければなりません。このため
日頃から食生活や人間関係にも気を配るとともに適度な運動を実施しています。特別な事をするのではなく職場内外でコミュニケーションの機会を持ち、時には飲み会を自ら設定しストレスを発散し若手からエネルギーをもらい、チームの和を保つことで心身の健康維持を心掛けています。

印象に残っている業務や今後の業務への抱負をお聞かせください。
これまで仙台航空基地から石垣航空基地まで13回転勤し気候や業務環境の異なる地域で業務に従事してきました。国家資格もジェット機を含む飛行機七機種、ヘリコプター一機種の合計8機種を取得し、最近では56歳の時にボンバルディアQ300型飛行機の国家資格を新たに取得、機長昇格審査もクリアーしました。また、飛行教官として延べ20名の訓練生を教育指導し後進の育成にも務めてきました。
  最近、印象に残る業務では、本年8月19日に通常パトロール中に9日間漂流していたフィリピン漁民1名乗りカヤックを偶然、肉眼で発見し無事救助した事例がありました。これは事前の海難情報もなく台風の余波で海上は時化模様のためカヤックはレーダーにも映らない状況下でしたが、長年の知識経験で海面上の小さな異変に気づき発見したものです。
 前置きが長くなりましたが、これまで培った知識経験を後進に伝授するとともに「老兵の衰えない業務意欲」を見せて、元気・やる気を鼓舞させたいと思います。。

最後に国民の皆様へメッセージをお願いします。
  海上保安庁は、365日24時間体制で業務を実施してしている組織であり、私はその1部署である第11管区海上保安本部石垣航空基地を熱望して本年4月から勤務しています。石垣航空基地は、尖閣諸島警備の最前線基地でありその任務は昼夜を問わない厳しいものでありますが、定年までの最後のご奉公として海の安全安心のために誠心誠意、業務に邁進していきたいと思っています。

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