第26回(平成25年) 人事院総裁賞「個人部門」受賞

山梨 正博 氏 (60歳) 

(国立印刷局研究所 統括研究員)

   山梨さんは、長年にわたり日本銀行券の真偽鑑定や偽造防止技術の研究等に従事し、国の通貨制度の安定に貢献したことが認められました。

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☆山梨さんが従事しておられる業務の内容をお聞かせください。
 国立印刷局にて製造した日本銀行券や有価証券等を対象に通貨行政機関等からの依頼に基づき、偽造又は疑わしいと思われる対象物について、真偽判定を要する鑑定業務を行っております。
また、偽造防止や改ざん防止技術の向上に関する総合的な調査・研究にも取り組んでおり、その一つとして、新たに発行された外国銀行券や諸証券類について、どのような偽造防止技術が施されいるかなど、その技術内容を調査し、得られた知見を日々の研究開発業務に活かしております。

日本銀行券等の偽造を巡る状況や、偽造防止技術の研究の状況はどのようになっているのでしょうか。

 日本銀行券の偽造状況につきましては、財務省より公表されている海外との偽造券発生割合を見てみますと、2008年末時点の日本銀行券の偽造券発生率を一とした場合、同年のユーロ券・ドル券・ポンド券の偽造発生率は200倍以上という結果がでており、主要国と比較すると日本銀行券における偽造券発生率は圧倒的に低い状況です。
 また、偽造防止技術の研究につきまして、これまで国立印刷局では、独自性の高い偽造防止技術及び製紙技術の研究開発に取り組み、また、製造面も含めて、大変高度な技術開発に取り組み実用化してきました。今もこの流れは脈々と続いている状況です

日々の業務の中でご苦労の多い点やご留意されている点をお聞かせください。
  鑑定依頼における対象物は、大半が事件性のある証拠品のため、鑑定後は受領した形態で返却する必要があります。それ故に証拠品は破壊調査ができず、ほんの僅かな違いを見出す観察力と注意力が求められ、そのための忍耐と集中の維持に苦労します。
 また、研究業務で取り扱う対象物は、そのほとんどが貴重品であり、保管場所からの出し入れ時に行う数量確認は、立会人同席の下で確認し所定の記録簿に記入するという当たり前の行為ですが、数量異常は絶対あってはならないことであり、基本中の基本と思い常に異常がないよう留意しています。

☆山梨さんが業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのような時でしょうか。

 鑑定業務は、依頼内容と調査条件によってかなり時間を制約されるため、非常に厳しい条件下で行う場合もあります。このような時は、顕微鏡で鑑定物件を外観調査しながら、真偽判定として有効となる箇所の選定、その証拠写真撮影の構図、報告書の文章と写真のレイアウトなど、先の工程を考えつつ、同時進行で行うことで迅速に対応できるように努めています。そして、指定された期日内に無事報告できた時は、何とも言い難い達成感に満たされると共に大変やりがいを感じています。また、これは依頼内容等の厳しさが増せば増すほど、やりがいも大きく感じられます。

今後の業務への抱負をお聞かせください。

 私はこの3月をもって定年退職となりますが、引き続き再任用職員となる予定です。
平成2年度から携わってきた研究・鑑定業務も、定年という一区切りとなる年度を迎え、鑑定業務につきましては数年前より後任者への指導に取り組んできています。私も当初は、前任者から指導を受けていましたが、半年後にその方が病気療養により長期間職場を離れ、その後は一人で試行錯誤の連続で鑑定業務に取り組んできました。このような経験から今後も後任者へ、スムーズに鑑定のノウハウが引き継がれるよう、指導に努力していきたいと考えております。

最後に国民の皆様へメッセージをお願いします。

 国立印刷局は、銀行券をはじめ、旅券、官報、印紙など国民生活や社会経済にとって欠かせない製品を製造しています。
 私たちは、これらの製品に対して高品質を保ち、安定的かつ確実に提供することに、職員一人一人がこの使命を常に思い起こし、それぞれの立場・持ち場で的確に自らの役割を果たすことに今後も努めていきます

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