第27回(平成26年) 人事院総裁賞「個人部門」受賞

加藤 則子 氏 (59歳) 

(厚生労働省 国立保健医療科学院 統括研究官)

   加藤さんは、母子健康手帳に掲載する乳幼児の発育を診る上で不可欠な「乳幼児身体発育値」の作成に一貫して取り組むなど、母子保健施策の推進に貢献したことが認められました。

 
 
 

☆ 加藤さんが従事しておられる業務の内容をお聞かせください。
 母子保健に関係する自治体職員等の養成訓練と、これらに関連する調査研究に関する業務に携わっています。
 調査研究については、母親と乳幼児に対する保健指導、健康診査に関する研究を専門としており、母子の健康を守ることを通じて国民保健の向上に貢献しています。なかでも、わが国の乳幼児身体発育値作成に力を入れてきました。
 この乳幼児身体発育値ですが、わが国では半世紀以上にわたり、10年に一度厚生労働省の調査に基づき乳幼児身体発育値を更新し、その結果を母子健康手帳に乳児身体発育曲線など参照グラフとして記載してきました。発育値の作成に関しては、国立保健医療科学院の前身である国立公衆衛生院時代から引き続き一貫して科学院がその任に当たっています。この発育値作成の業務に昭和56年から携わり、平成2年、平成12年、平成22年の3回の調査結果のまとめとグラフ化を担当しました。

加藤さんが長きにわたり取り組んでこられた乳幼児身体発育値の作成等に当たり、御留意されている点をお聞かせください。

 乳幼児の発育値が反映される母子健康手帳は、妊娠届に応じて毎年百万冊以上交付されます。また、乳幼児の発育の参照グラフは、一度更新しますと、その後10年間使い続けられることから、正確に作る必要があります。当該分野の国際的な動向を把握し導入習熟し、最良の方法で発育値を作成することを心がけています。特に平成22年には、曲線に再現性を持たせることを尊重し、表されている曲線をすべて数式で表現するように工夫しました。
 発育グラフの表し方も、保護者に与える不要な不安を最小限にするため、曖昧さを極力なくし、正確な評価につながるよう、工夫してきました。
次回は、平成32年に発育値を作成することになりますが、将来、平滑化作業を担当することとなる人材発掘にも努め、その育成などにも努力しています。

 日本における乳幼児身体発育値は、国際的に見ても精度の高いものを短い間隔で作成されているようですが、それはどのような理由によるものなのでしょうか。
 わが国で発育値を10年に一度更新するようになったのは、戦前戦後の時期に小児の体位の変動が著しく、また、特に戦後においてはその向上が顕著であったこともあり、10年も経過すると実情にそぐわないものとなったため、発育値の更新を頻繁に行う必要が生じたことによります。それによって、乳幼児、小児の健康の適切な確保のためには、発育の基準となるデータを適切な間隔で提供するということが、国家として必要不可欠であるという認識が出てきました。継続的に発育値をモニタリングする重要性が国民に認識され、発育値を更新するに当たってはより高い精度のものが求められることとなり、結果として精度の向上にも繋がったと言えます。

☆ 加藤さんが業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。

 日本で育つ子どもが皆元気で健康に成長して行くことに、いくばくかの貢献ができていると思うと、やりがいを感じます。この発育値を使って子どもの健康な育ちを確かめることが出来るからです。子どもの育ちやすい社会づくりを目指して業務に取り組んでいますので、そのための環境整備の一翼を、微力ながら担えていることは大きな喜びです。

 最後に国民の皆様へメッセージをお願いします。

 わたくしが勤務している国立保健医療科学院は、様々な分野の研究者が国民の健康の保持増進のために自治体職員等の養成訓練と調査研究に日々、熱心に取り組んでいます。国民のニードを的確に把握して政策に反映していくことが、業務のねらいとなっています。わたくしもこの組織の一員として、子どもの健康を守るための国民のニードにあった取り組みをしていきたいと思っています。国民の皆様の健康を守るためにお役に立ちたいと、日々願っています。

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