第28回(平成27年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

厚生労働省
関東信越厚生局麻薬取締部

麻薬取締部危険ドラッグ取締対策本部

  大きな社会問題となった危険ドラッグについて、訴訟リスクや反社会的勢力の抵抗などの障害を乗り越え、検査命令の発動や徹底した取締りにより短期間に販売店舗を全滅し、国民の保健衛生確保に貢献したことが認められました。

 
 

☆麻薬取締部ではどのような業務を行っているのでしょうか。
 
麻薬取締部は、通称「マトリ」と呼ばれ、厚生労働省の地方厚生局に所属し、薬物犯罪捜査、医療用麻薬等に係る指導・監督、薬物中毒・依存者対策、薬物乱用防止のための普及啓発活動及び海外捜査機関との国際協力を中心に業務を行っています。薬物乱用のない健全な社会生活を実現するため、幅広い分野での活動を展開しています。

☆「危険ドラッグ取締対策本部」が設置されることとなった経緯をお聞かせください。
 危険ドラッグは、「合法」をうたって店舗で堂々と販売され、急速に社会にまん延しました。この未曽有の事態に際し、早急に食い止めなければ日本は薬物汚染大国になってしまうとの切迫した危機感を持ち、捜査とともに、迅速かつ効果的な取締手法として、旧薬事法に指定薬物制度が設けられて以来一度も発動されたことのない販売店舗に対する「検査命令及び販売等停止命令」の実施が検討されました。
 しかし、これまで一度も発動されたことがないため、実施に当たっては種々の問題や販売店舗の強い抵抗が予想され、これを解決し抵抗を排除して全国統一的かつ効果的な取締りを実施すべく、全国麻薬取締部のヘッドクォーターの役割を担う関東信越厚生局麻薬取締部に対策本部が設置されました。

☆今回の取組により販売店舗の全滅を達成されましたが、苦労された点や留意された点があればお聞かせください。
 「検査命令及び販売等停止命令」を迅速・確実に遂行すべく、対策本部では昼夜にわたり実施要領の策定や想定される事態への対応の検討を行うとともに、厚生労働本省・厚生局との調整、人員確保と従事員に対する周知・シミュレーションを徹底的に行いました。その結果、対策本部で策定した緻密な計画に基づき、迅速で全国統一的な取締りが可能となりました。
 検査命令実施に際しては、店舗側に事前に察知されぬよう、できる限り一斉での立入りを行いましたが、それでも人員的な限界があり、立入りを察知して店舗を閉めてしまう業者や商品を隠匿する業者もいて対応に苦慮しました。これらの業者に対しては、一旦引いたと見せかけて付近で密かに監視を続け、業者が安心して深夜に店を開いた時点で立入りを実施したり、商品を隠匿し「在庫はない」と言い張る業者には粘り強く説得を行い商品を提出させる等したため、24時間体制での対応になりました。また、説得も捜査と違い「行政手続」であることから、強制と思われぬよう言葉遣いにも気を配るなど、苦労の連続でした。
 その結果、多くの店舗が廃業しましたが、一部の悪質業者は商品を店舗保管せず客が来たら隠匿場所から取り出して販売する形で営業を続けたため、客を装った取締官を先に入店させ在庫を確認してから立入りを実施したり、実際に取締官が客に扮して商品を買い取る「囮捜査」を実施し、規制物質と確認された場合にはこれを端緒として強制捜査により摘発するなど、「行政」と「捜査」の両面で取締りを継続し、平成27年7月に販売店舗全滅に成功しました。薬物取締専門機関である麻薬取締部であったからこそ早期にこの問題を沈静化することができたといえます。

☆違法薬物に対する取締りは「いたちごっこ」とも言われますが、今後の課題や見通しについてお聞かせください。
 徹底した取締りの結果販売店舗を全滅しましたが、販売はインターネットやデリバリーに移り、覚醒剤等と同様「密売化」しています。
 ネット販売サイトには削除要請を継続し、要請に応じないサイトは他の違法薬物同様に捜査対応し、削除要請と捜査の両面で取締りを実施します。デリバリー販売も他の違法薬物と同様の情報収集により実態把握に努め、譲受捜査等で犯罪の端緒を得た場合は迅速に強制捜査に移行します。また、国内流入阻止のため、税関と連携し水際対策を徹底するとともに、海外捜査機関と連携を強化し、供給源を割り出す等の徹底した捜査を実施します。

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。
 覚醒剤や大麻、危険ドラッグなどの乱用薬物は、一度手を出したらなかなかやめることはできません。たった一度でも死につながる危険もあります。また、薬物乱用は、乱用者本人やその家族の崩壊のみならず、他人を事故に巻き込む事件も引き起こし、ひいては社会を崩壊させるとともに、世界レベルでは薬物密売で得られる莫大な金が新たな組織犯罪やテロの資金に使われるといった問題もあります。薬物に対する正しい知識を持つとともに、その社会的リスクを十分理解し、薬物乱用のない社会を実現するため、皆様の御協力をお願いします。

▲密造工場内部の様子

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