第29回(平成28年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

法務省 奈良少年刑務所

 若年の初犯受刑者収容施設の一つとして、受刑者の改善更生に向け、様々な先進的取組を実施。また、性犯罪再犯防止指導の推進基幹施設に位置づけられ、再犯防止策を牽引する役割に尽力するなど我が国の治安維持や青少年の育成に多大な貢献をしたことが認められました。

 
 
 

☆始めに、奈良少年刑務所ではどのような業務を行っているのでしょうか。また、同所は性犯罪再犯防止指導の推進基幹施設に位置づけられていますが、具体的にどのような役割を担っていますか。
 当所は、主として、犯罪傾向の進んでいないおおむね26歳未満の受刑者を受け入れています。加えて、総合職業訓練実施施設として、14種目の職業訓練と生産技術取得訓練コースを実施し、所定の期間で各種訓練を行い、全国から受け入れた受刑者に対する資格取得や技術習得に力を入れています。
 当所の性犯罪再犯防止指導は、古くは昭和55年に6つの処遇群別指導の中の異性問題処遇群という講座を開始したところから始まります。現在は、6つの特別改善指導の一コースとして位置づけられ、6か月から10か月の期間、対象の受刑者への指導を行うだけではなく、西日本の矯正施設に対しても指導的立場にあり、各施設における指導者の養成や実際の指導場面での助言などを行っています。

☆職員の皆さんはどのような業務に従事されているのですか。また、勤務体制はどのようになっていますか。
 刑務所は、受刑者が生活していますので、24時間体制です。受刑者の生活指導を行う部署、職業訓練を行う部署、円滑な社会復帰のための関係機関との調整や改善指導を行う部署、施設の維持管理や対外的な窓口となる部署などがあり、業務を分担しています。受刑者の生活の指導をする部署に最も多くの職員を配置していますが、うち半数の職員が、4班に分かれて昼夜間勤務を行っています。昼夜間勤務とは、朝出勤し、途中で仮眠時間を挟みつつ、翌朝まで勤務する勤務形態のことです。

☆若年受刑者の処遇に対して、工夫や改善を加えているとのことですが、それにより、どのような効果が得られているのでしょうか。
 若年受刑者は、多くの場合、可塑性に富み、自らの過ちに気が付くと社会復帰への意欲、改善更生への想いを強く持つことができるようになります。そこで、自らの問題点に気が付くような指導を重視し、これまでの社会生活上の失敗と成功を認識させ、これからの生活に必要な社会性を涵養する指導を重ねていきます。このような指導を繰り返し受けていくうちに、受刑者自身が周囲の人との関係を考えることができるようになり、自身の反社会的な言動に気が付き、改めることができるようになっていくのです。

☆同所は開設されて100年以上経過している文化的・歴史的価値の高い施設でありますが、施設維持に関して、苦労されている点や留意されている点などがあればお聞かせください。
 当所は、施設全体の約50パーセントが明治時代に建設されたもので、その大半がレンガ作りです。最も苦労している点は、漏水・雨水対策です。建物が古いだけではなく、配管も古く劣化しており、また、図面上の配管が判然としていないこともあり、漏水箇所の発見には苦労することばかりでした。漏水と雨漏りを放置すると、建物が一気に劣化し、時には大きな被害に発展することがあるので、注意が必要でした。

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。
 矯正施設における受刑者に対する改善更生の取組や再犯防止指導は、国内の治安維持に大きな役割を担っています。奈良少年刑務所は、平成29年3月31日をもってその役割を終えることになりましたが、これまで当所で築いてきた改善指導や職業訓練は、各地の矯正施設に引き継がれ、さらに充実していくこととなります。これからも、矯正施設の取組や運営に御理解と御支援をよろしくお願いします。

▲職業訓練の様子(ビジネススキル科)

-総裁賞受賞者一覧に戻る-

 

Back to top