第29回(平成28年) 人事院総裁賞「個人部門」受賞

西野 修次 氏 (61歳) 

(海上保安庁 第三管区海上保安本部 横浜海上保安部
巡視船 首席整備士)

  西野さんは、41年の長きにわたり、航空機整備士一筋に歩み、高度な専門的知識等をいかし、荒天下における海難救助など危険を伴う特殊な飛行を行う航空機の無事故運航に尽力し、海上保安業務に多大な貢献をしたことが認められました。

 
 

☆始めに、西野さんが従事されている業務の内容をお聞かせください。
 
私は、現在、横浜海上保安部所属の巡視船に勤務し、「首席整備士」として主にヘリコプターが安全に運航できるよう検査や不具合発生時の修理といった航空整備業務に従事しています。
海上保安庁の業務は、領海警備、海洋の秩序維持、海難救助、海上防災、海洋環境の保全、海洋調査、海上交通の安全確保等多岐にわたり、こうした業務を遂行するうえで、高い機動力を有するヘリコプターは必要不可欠なものとなっています。具体的には、空からの監視取締りや広い海域での遭難者の捜索、そして浅瀬等における海難救助等、巡視船では対応が困難な業務について、ヘリコプターによる対応が求められるわけですが、このヘリコプターの安全運航を確保しつつ、性能を如何なく発揮できるようにするための航空整備業務は、失敗が許されないため緊張感があり、大きなやりがいを感じております。

☆専門的な知識や経験が求められる業務だと思いますが、西野さんはどのようにして専門性を身につけられたのでしょうか。
 
私は、海上保安官の初任教育を行う海上保安学校で船のエンジンの勉強をしましたが、在学中から、飛行機やヘリコプターの業務に携わりたかったことから、航空整備士の道を目指し、昭和50年3月に同校を卒業後、航空機の整備のための基本技術や、実際の機体についての知識を修得してきました。海上自衛隊や国内の様々な航空機整備・運航会社だけでなく、海外の航空機製造メーカー等にも赴き、最新、かつ、高度な研修を受けるとともに、先輩整備士から現場での経験や知識を教えていただき、航空整備業務に関する様々な資格を取得できました。また、これまで、初任地の千歳航空基地(北海道)を皮切りに41年間航空整備士一本で、8機種の飛行機やヘリコプターの整備資格を取得し、10機種の整備に携わってきましたが、様々なトラブルに対応した経験とともに、パイロットが安心して操縦できるようにしたいという気持ちや、何よりも、安全に対する高い意識によって、航空整備業務という独特な分野での専門性が身についたのではないかと思います。

☆日々の業務の中で苦労されている点や留意されている点などがあればお聞かせください。
 
飛行機やヘリコプターといった航空機は便利な乗り物ですが、一方で、運航や整備の面で非常に厳格な安全管理が必要とされることから、高い知識技能が要求されます。また、その整備に当たっては、航空機のちょっとした異変にも反応し、危険因子を追究・解消していかなければいけません。私の経験した事例では、ヘリコプターの電気系統の点検の際、いつもと違う匂いが微かにするので調査したところ、自動操縦装置のコンピューターが発火寸前であったのを発見したことがあり、これを放置したままだとヘリコプターの運航に大きな支障を来すだけでなく、事故にも繋がりかねないところでした。このように、航空整備業務は、航空機のわずかな変化も見逃してはならないところが、難しいところだと思います。

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。
 海上保安庁は、「海」を舞台に業務を行っていることから、国民の皆様がその業務を直接目にする機会は少ないと思います。さらに、航空整備業務は、縁の下の力持ちとして、いわゆる後方支援的な業務ですが、今回、こうして光をあてていただき、人事院総裁賞をいただいたことに大変感謝しております。「海上保安庁航空機の安全を守る」という先輩らの教えに従い、地道な業務を積み重ねてきただけですが、先輩や同僚らの支えのおかげで受賞に至ったと思っています。私は、昨年、定年退職し、現在再任用で引き続き航空整備業務に携わっておりますが、日々技術が進歩し、さらに高い安全性が求められるこの分野において、これからも自らに対する知識・技術の修得に励むとともに、後輩航空整備士に対しての知識・技能の伝承にも力を入れ、人材育成を通じ、より一層の安全確保に貢献していきたいと考えています。また、海上保安庁が、海の安全・安心を守り、国民の皆様の期待に応えられるよう、現役職員とともに現場海上保安官の一人として、的確な業務遂行に努めていく所存です。

▲ヘリコプターの整備作業を行う西野氏

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