第30回(平成29年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

財務省 税関研修所 研修・研究部国際研修課及び教官

 国際物流が高度化・多様化する中、政府開発援助の一環として関税技術協力に尽力し、途上国の税関能力向上等を図るとともに、国際貿易の健全な発展や安全・安心な社会の実現に大きく貢献したことが認められました。

 

☆始めに、税関研修所ではどのような業務を行っているのでしょうか。
 税関研修所は、全国約9,200名の税関職員に対し、税関業務の遂行に必要な専門知識や技能を習得させ、その応用能力を向上させるための研修を行ってきています。
また、当所は、開発途上国の税関の近代化を支援するため、海外から税関職員を受け入れ、貿易立国として我が国が積み重ねてきた改革・発展の経験を礎に、途上国税関の実情やニーズに即した技術協力プログラムを提供しています。1970年の開始以降、100以上の国及び地域から6,500人を超える職員を受け入れてきました。

☆国際物流が高度化・多様化する中で、税関に求められる役割に変化が生じていますでしょうか。税関職員に対する研修等において特に留意している点などありましたらお教えください。
 国際貿易を巡る状況は絶え間なく変化しており、従来からの税関の基本的な役割に加えて、急増する出入国者への税関検査、金地金の密輸(消費税の脱税)への対応、テロ対策といった新たな課題への挑戦が求められています。
変わりゆく要請に的確に対応していくため、時宜に適った「生きた研修」の提供に努め、かつ、どんな状況でも自ら考え行動できる「しなやかな職員」の養成を目指し、一般的な講義方式だけでなく、分析力、論理力、判断力等の実践的思考能力を高めるケースメソッド教授法を用いた討議を取り入れる等、研修手法の発展を試みています。

☆政府開発援助の一環として関税技術協力に尽力されていますが、御苦労された点や、留意されている点をお聞かせください。
 各国の関税制度や税関業務の内容は、社会・経済の発展度合いはもとより、陸続きの国境といった地政学的な要因や保護すべき産業の相違など個別事情によって大きく異なっています。税関は全ての国に必ず設置されている機関のため、国際的な手続きの調和や簡素化を目指した国際協定やガイド等があるのですが、これを画一的に適用しようとしてもなかなか上手くいきません。したがって、関税技術協力の実施に当たっては、制度の単なる紹介や一方的な押し付けになってはならず、途上国税関からのニーズを基に、場合によっては講師が途上国職員と協働して改善計画を検討するなど、その国に合った形での支援となるよう努めています。
長期的な視点に立った支援を行うためには、有能な担い手の育成や創意工夫が出来る人材が不可欠であり、後進の育成や自己研鑽を重ねています。

☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。
 先日、東南アジアからの研修参加者から、「このように内容が充実したワークショップは初めてだ」という嬉しい声を頂きました。また、途上国職員と二人三脚で関税徴収手法の改善を計画し、レポートにまとめた際、その国では研修後に計画が着実に実施され、我々の助言が実際に生かされたことがありました。当時のレポートは、沢山の付箋が付され、今でも担当者の机の上で参照されているそうです。
多様化したニーズを受け止めるのは容易ではありませんが、それに応えるための地道な努力が、実際に途上国で実を結び、素敵な花が咲いていく時に、とてもやりがいを感じます。

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。
 当所は、途上国の事情に即した支援を粘り強く実施することで、数多くの実績を得、自国税関の改革の原動力として活躍する修了生を生み出してきました。
関税技術協力は、途上国の税関能力向上のみならず、貿易環境改善に伴う直接投資の促進、貿易拡大や経済発展を導き、更には地域や世界全体の安全・安心な社会の実現への歩みを進め、健全な貿易秩序の構築にも貢献しています。
これらの成果は、日系企業の海外展開の側面支援として競争力の向上に寄与し、日本の社会の安定と経済の繁栄にも貢献していると考え、今後も、より効果的な関税技術協力を実施することで、国民の皆様の信頼と期待に応えていきたいと思っています。

▲コンテナ蔵置場において保全に関する現地説明

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