第31回(平成30年) 人事院総裁賞「個人部門」受賞

金澤 正信 氏(50歳)
(海上保安庁 第一管区海上保安本部 小樽海上保安部 巡視船ほろべつ)

  金澤さんは、現役最高齢潜水士として、長年にわたり数多くの救助活動に従事するとともに、後進の指導・育成にも積極的に取り組み、海上保安庁のみならず他機関の潜水士の模範となるなど、公務の信頼の確保に大きく貢献したことが認められました。

 
 
 
 

☆始めに、金澤さんが従事しておられる業務の内容をお聞かせください。
 海上保安庁は、海難救助、海上における犯罪の取締り、海上交通整理、海図製作等の海洋情報業務、航路標識の管理等の業務を行っています。
 地方支分部局として、11の管区海上保安本部が設置され、私はその中の第一管区海上保安本部小樽海上保安部巡視船ほろべつにて船艇職員として勤務しております。
船艇勤務では、巡視船を運航させるための業務(船務)と、海難救助や海上犯罪の取締りなどの海上保安庁の業務(業務)を兼務しており、船務においては、巡視船の主機関等の保守整備管理を主に行っております。
 業務では、今回受賞理由となりました潜水業務を主に行っております。
 潜水士(特殊救難隊、機動救難士含む)は、全国約14,000人の当庁職員のうち約240人のみであり、私は、小樽海上保安部巡視船ほろべつの潜水士として業務を行っております。
潜水士は、主に海上における海難救助や海上における犯罪等の発生時、人命の救助、船舶の安全確保、犯罪の証拠物証等の捜索等、一般の海上保安官が進出不可能な海上及び海中での活動を行います。
 具体的には、海難等が発生した場合、巡視船や航空機を使用して現場に急行し、救助活動を行なったり、海上に投棄された証拠品の潜水捜索等を行っております。
 また、海難防止活動のため、海水浴場や防波堤、岸壁等の釣り人に対する救命胴衣着用などの啓発活動、他救助機関(警察、消防、民間救助機関)との連携強化にも努めております。

 

☆潜水士は肉体的・精神的に極めて苦労の多い業務であると推察しますが、現役最高齢潜水士として今もなお救助活動に貢献されている大きな要因はどのようなものでしょうか。
 私は、誰もが、「人のためになりたい。困った人がいたら助けたい。命は大事で助けを求めている人がいたら助けたい。」という気持ちを持っていると思います。
 私達のような直接救助に関われる人は、助けを求めている人や一般の人々の気持ちに応えられるように活動しなければならないと思っております。
 また、今現在も潜水士として業務に従事している理由の一つとしましては、一緒に訓練を行っていた仲間が亡くなるという事故がありました。
 それ以降、自分の救助に対する考え、手法、活動内容等今現在でも自問自答しています。
 答えは一生出ないと思いますが、私が現役中はこのような事故を起こさない、また、無事故で業務を完遂できる後輩潜水士をできる限り指導・育成していきたいと強く思います。

 

☆業務の中で苦労の多い点や留意されている点をお聞かせください。
 第一管区では北海道という土地柄もあり、流氷下での救助活動を想定した氷下潜水訓練等の訓練を厳冬期に行っています。
 その他に、警察、消防など、他救助機関との連携強化を目的とした合同訓練も実施しております。
訓練中は私ばかりではなく、一緒に活動する仲間や後輩が怪我などをしないよう常に気を配っております。
 また、海難救助活動中は、生きて帰ることが絶対条件だと思いながら日々業務に努めております。
 潜水業務における行方不明者の捜索では、行方不明者を確実に発見救助すべきだと心に思い、救助活動を行っています。また、後輩潜水士にもこのことを伝えております。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。
 海上保安制度創設時、大久保武雄初代海上保安庁長官が「海上保安庁の精神は“正義と仁愛”である」と話しました。
 海上保安庁の業務には、正義の信念と厳しい行動が要求され、また、仁愛の情と献身の勇気が必要とされるということです。
 海上保安庁職員一人一人がこの「正義仁愛」を胸に刻み日々業務に努めております。
 今後とも、海上保安庁への応援をよろしくお願いいたします。

 
 
 
▲行方不明者捜索時の打合せの状況 (中央奥金澤氏)
 
▲氷下潜水救助訓練を行う金澤氏
 
▲救助技術の伝承を行う金澤氏(「海上保安庁」のヘルメットを着用しているのが金澤氏)
 
 

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