第31回(平成30年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

気象庁 地磁気観測所

  高精度の地磁気観測を100年以上にわたり継続して行っており、太陽地球系の環境監視、航空機及び船舶の安全運航の確保、火山活動評価などで利用される観測データの信頼性の確保に大きく貢献したことが認められました。

 
 
 
 

☆始めに、地磁気観測所ではどのような業務を行っているのでしょうか。

地球内部と地球を取り巻く空間は、巨大な地磁気の場を構成しており、当観測所は、この地磁気を高い精度で定常的に観測しています。そのほか地球電磁気現象として、地電流及び空中電気の観測も行っています。観測成果は国際的な観測ネットワークの下、準リアルタイムでデータの交換を行っています。その精密な観測技術を用いて、超高層物理現象の解析や火山活動評価手法の開発等の調査研究業務にも取り組んでいます。
 また、電子機器などに影響を及ぼす磁気嵐等の地磁気短周期現象の通報業務を行っており、宇宙天気予報に役立てられているほか、地磁気測器の基準器を保持し、日本で唯一の磁力計の検定機関として、船舶や航空機の運航に不可欠な地磁気測器(コンパス等)の検定業務を行っています。

 

☆100年以上継続して地磁気の観測を高精度で行っていますが、苦労された点や留意されている点をお聞かせください。

観測の基準となる地磁気の向きを精確に測る角度測定器は、1972年に製作された世界にも類をみない高精度を誇る器械で、半世紀近く現役で主役を務めています。製作したメーカは既になく、メンテナンスは当観測所の職員が、図面の青焼きとにらめっこをしながら、神経を集中して行っています。自然磁場の環境を乱すような人工的なノイズ源に目を光らせ、その影響量を把握するための臨時観測を行う際は、適した臨時観測点の配置やスケジュール調整に非常に気をつかいます。また、火山などでの野外観測では、火山ガスや火山活動の急激な変化、急な天候の変化にも対応して安全を確保しつつ良質な観測値を得ることに努めています。

 

☆同所は、世界で4カ所の地磁気観測所の一つとして指定され、世界のKAKIOKAとして国際的に重要な観測所でありますが、国際的にどのような役割を求められているのでしょうか。

当観測所は、磁気嵐の発達と関連性の高い磁気圏の赤道環電流をモニタするのに適したほぼ等間隔にある4つの観測点の1つであり、観測値は磁気嵐の発達の度合いの算出に利用されています。磁気嵐の情報はリアルタイム性も求められます。そのほか、当観測所が運営する観測点は、地磁気活動の特徴を示す指数の算出や太陽風が及ぼす磁気圏圧縮に関連する現象を検出するための国際的な観測点にも指定されています。当観測所は、北西太平洋域をカバーし、地球主磁場変動の予測モデルの精度向上など、地球電磁気的環境の長期的・短期的両面における変動を監視するために、定点で精密な観測を継続することが求められています。

 

☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。

観測の対象は、地球内部の対流がもととなる時間スケールの長い変化、太陽風から放射されるエックス線や太陽風の状態に左右される短周期変化、オーロラとも関係が深い地磁気脈動、あるいは太陽活動周期(約11年)に伴う変化など、時間的にも空間的にも非常に幅があり、そのダイナミックさに惹かれます。国際的な観測ネットワークの中で精密な観測を継続し、研究機関や防災機関へデータを提供することで、太陽地球系の環境監視、火山活動評価、無線通信障害の警報、航空機等の安全運航など、広く防災に利活用されることが重要であると考えています。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

私たちは、柿岡の地で100年以上にわたり地球電磁気に関する観測を行ってきました。また、北海道、九州、小笠原諸島においても観測を継続しており、それらの観測結果を用いた調査研究、成果の公表を行っております。これまで業務が継続できたのも、当観測所職員の不断の努力の賜物であると考えておりますが、我々の業務をサポートしていただいた方々、地域の皆様方の協力も不可欠であり感謝しております。
 今後とも、「世界のKAKIOKA」の名に恥じぬよう信頼性の高いデータを供給するとともに、その活用についても調査研究を推進し、日本をはじめとする世界の方々のお役に立つよう取り組んでまいります。

 
▲角度測定器(上)と全磁力測定器(下)
 
▲角度測定器調整作業
 
▲火山での全磁力測定(雌阿寒岳)
 
▲IAGAワークショップトレーニング
 
 
 

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