第31回(平成30年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

国土交通省 北海道開発局 稚内開発建設部 稚内港湾事務所

  厳しい自然環境の中、排他的経済水域の基礎となる低潮線の人為的損壊行為や自然浸食による形状変化を海上及び陸上から巡視することによって、低潮線の保全を着実に執行し、国民共通の財産である排他的経済水域の確保に大きく貢献したことが認められました。

 
 
 
 

☆始めに、稚内港湾事務所ではどのような業務を行っているのでしょうか。

北海道開発局稚内開発建設部は北海道北部の宗谷地域を管轄範囲としており、稚内港湾事務所は重要港湾の稚内港や今回受賞対象となりました低潮線保全区域のある地方港湾宗谷港のほか、利尻・礼文両島に位置するものも含めた七つの港湾と四つの漁港及び最北のジェット化空港である稚内空港に関する施設整備や保全等の業務を担当しております。現在実施している主な事業としては、港湾・漁港における水産物の輸出促進や高度な衛生管理の下での水揚げを実現するための施設整備、クルーズ船の受け入れ環境改善のための整備などがあり、閣議決定された北海道総合開発計画で「世界の北海道」を目指すための戦略的産業と位置付けられている「食」「観光」の発展に資する施設整備等に取り組んでいます。このような施設整備とともに低潮線保全区域の巡視業務も当事務所における重要な業務の一つとして取り組んでいるところです。

 

☆厳しい自然環境の下での低潮線保全区域の海上巡視の作業は、職員の肉体的・精神的に極めて苦労の多い業務であると推察しますが、日々の業務の中で、特に苦労の多い点や留意されている点をお聞かせください。

当事務所では低潮線保全区域の人為的損壊行為や自然浸食による形状変化の巡視を平成二四年度から本格的に実施しております。
 当事務所が担当する低潮線保全区域は、宗谷海峡を隔ててロシア・サハリンと対峙する位置にある我が国最北端の港湾、宗谷港の港湾区域内にあります。対象となる区域は宗谷岬沖の岩礁一箇所と宗谷港島防波堤両端付近2箇所の計3箇所あり、年4回(6、9、12、3月)の定期的な巡視に加え、荒天後にも巡視を実施しています。いずれの区域も海上であるため、当事務所が保有し、工事監督等で使用する港湾業務艇「りんどう」により稚内港から約30㎞離れた宗谷港まで航行して巡視を行っております。荒天後の高波浪や強風などで港湾業務艇の運航が困難な時には、陸上から低潮線の状況を確認しています。
 最北端の宗谷岬付近は年間を通じて風が非常に強い地域で、特に冬期間には日平均気温が氷点下となる厳しい環境にあります。このような低温や強風に加えて吹雪が伴う気象・海象条件下においては更に厳しい作業環境となり、防寒対策を行っても、手足がかじかむなど肉体的に厳しいときがあります。また視界不良時には低潮線保全区域の目視確認ができるまで現地で天候の回復を待つこともあり、このような場合は肉体だけでなく精神的にも厳しさが増すことになります。しかし、このような厳しい荒天時こそ、低潮線が浸食されていないか確認することが重要と考えています。

 

☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。

我が国は四方を海に囲まれた海洋国家でありますが、国土の狭い我が国にとって、排他的経済水域等は海洋エネルギー・鉱物資源の開発や水産資源の利用を排他的に行える貴重な場になります。
 この貴重な排他的経済水域等の基線となる低潮線の保全は非常に重要な任務であり、その任務を当事務所が担っていることに責任の重さを痛感しているところではありますが、今回、人事院総裁賞を受賞させていただき、地道な仕事ではありますが重要な任務として巡視業務を評価していただいたこと、また、広く国民の皆様に巡視業務を知っていただけたことにより、担当する職員はもとより、事務所全職員の士気が更に高まり、今後、より一層のやりがいを感じながら業務に従事できると考えております。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

北海道開発局は「世界の北海道」を目指す北海道総合開発計画の推進に懸命に取り組んでおり、稚内開発建設部においても効果的で効率的な社会資本整備などを通じて、宗谷地域の厳しくも豊かな自然や農水産業を基幹産業とするなどの地域特性をいかし、災害にも強い地域づくりを支援するための業務に従事しているところです。その中で稚内港湾事務所としても、今回の受賞を励みとして港湾・漁港・空港の施設整備等による地域づくりを支援するとともに国民共通の財産である排他的経済水域をしっかり確保していくための低潮線保全区域巡視業務に職員一丸となってより一層努力していく所存です。

 
▲港湾業務艇「りんどう」
 
▲港湾業務艇による海上からの巡視状況
 
▲陸上からの確認状況①
 
▲陸上からの確認状況②
 
 
 

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