第32回(令和元年)

「令和初」の人事院総裁賞にあたって

 

 
 アイランド株式会社代表取締役
 粟飯原 理咲 氏
 

この度、令和元年度の人事院総裁賞が発表となりました。個人部門で二名、職域部門で三グループのご受賞者の皆さまに、心よりお祝いを申し上げます。
 日本最古の歌集「万葉集」からの出典である新元号、「令和」。「初春の令月にして、気淑(よ)く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫らす」。梅花をめでながら、宴を楽しんでいる心情を詠んだこの歌は、平和を願い「調和」を大切にする日本人の心が現れているとも言われています。
 今回、人事院総裁賞の選考にあたって感じたことは、個人部門・グループ部門の受賞者の方々、またエントリーされていた候補者の皆さま、全ての方々が、日々の職務のなかでまさしく個の領域を超えて、ご自身たちが貢献すべき世界の「和」のためにお仕事をなさっていらっしゃるということです。
 個人部門で受賞をされた、農林水産省関東農政局農村振興部国営事業情報分析官の降籏英樹さんは、世界中が注目した、二〇一八年のタイでの洞窟に閉じ込められた少年たちの救出劇において、現場における農業支援の役割のなかで得られた知見を活かし、命を救う重要な役目を果たされました。
 また、同個人部門受賞、海上保安庁総務部海上保安試験研究センター試験研究官の山﨑ゆきみさんは、海の科学捜査において、研究官としての技術的貢献、そして、事件解決に重要な鑑識業務で功績をあげられています。
 職域部門では、国土交通省国土地理院測地部測地基準課。明治政府が近代測量に着手して、ちょうど一五〇年の節目の年になりますが、長年に渡り、山岳や離島など地理が複雑な日本の国土の測量・計測を、厳しい環境のなか、地道に丁寧に繰り返されてこられています。
 次に、同職域部門、気象庁沖縄気象台石垣島地方気象台。世界的な気候変動により、日本の台風被害がこれからさらに深刻化すると予想される今。台風観測の最前線にある重要な気象レーダーの安定運用に、日々尽力し務めておられるチームです。
 また、同職域部門、海上保安庁、財務省税関、厚生労働省地方厚生局麻薬取締部。近年、社会において深刻化する覚せい剤リスク。その背景となる大量密輸を、三省庁連携による捜査体制を構築し、粘り強い調査により過去最大級の覚せい剤密輸を水際で阻止されました。
 令和という新しい時代にふさわしく、和をもって公務に励んで来られた皆さまを、まさしく、元号のモチーフでもある「梅の花」が開花する今時期、人事院総裁賞の発表、また本号の発行ともにめでたくお祝い申し上げられること、大変嬉しく、僭越ながら審査員一同を代表してこのような任務の機会を頂戴したことに御礼を申し上げます。
 また、末尾ながら、公務に関わる全ての皆さまの今後のご活躍をお祈りしております。
(人事院総裁賞選考委員会委員)

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