第32回(令和元年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞
 
国土交通省国土地理院測地部測地基準課
 
 明治政府が近代測量に着手して以来150年、山岳部や離島の厳しい環境の中、正確な位置(緯度、経度)と高さを与える測地基準点の整備及び維持管理により、国土の保全と管理、社会の安全・安心の確立に大きく貢献したことが認められました。


                      
 
☆始めに、国土地理院測地部測地基準課ではどのような業務を行っているのでしょうか。
 国土地理院測地部測地基準課は、地球上における日本列島の正確な位置を与える業務、具体的には、全国に統一した位置情報を付与するための基準となる日本経緯度原点、日本水準原点と、登山の際に山頂で見かける全国に約十万点設置している三角点、高さの基準として全国に約一・七万点設置している水準点の維持管理を担っています。排他的経済水域や領海の範囲を決定する離島への三角点設置も行っています。
 また、巨大地震の発生が懸念される地域で、周期的に測量を実施して、地面の動きを詳細に把握しています。さらに、災害発生時には迅速に復旧測量を実施することで正確な位置情報を提供しています。
 
 ☆厳しい自然環境の中、測地基準点の整備及び維持管理に尽力されていますが、日々の業務の中で、特に御苦労の多い点や御留意されている点をお聞かせください。
 特に現地での測量について、山岳部では、登山に相当の時間を要する場合があり、測量に用いる重量器材の運搬に多大な労力が必要になるとともに、常に高山病や滑落の危険が伴います。また、離島部の場合、火山活動の状況にも注視した上での作業となる場合があります。令和元年度に実施した西之島の測量作業では、火山活動が落ち着いた一〇月に、波浪の影響、急激な火山活動の活発化、火山性ガス発生等の懸念が伴う中で、流出した溶岩により埋没した三角点の再設置と再測量を行いました。このように様々な危険が伴う中、安全管理に特に留意しつつ、適切な工程管理に基づき測量を確実に実施することで、常に高精度な位置情報を得られるよう注意しています。
 
☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。
  国土地理院が設置する三角点や水準点は、全ての測量の基礎となるものです。三角点や水準点の位置情報は、道路や橋梁といった社会インフラを建設する際に行われる公共測量に基準を与える不可欠なものです。特に、大地震などの災害時には、緊急測量を実施し新たな位置情報を速やかに提供しており、位置情報が活用された被災地域の復旧・復興の姿を目にすることで、我々の業務が国民の安全安心に役立っていると実感できます。また、三角点や水準点に基づいて国の基本となる地図が作成され、地図にはこれらの点が明示されます。国土の姿が正確に記録されることや地図に残る仕事を行えたことは、充実感や達成感を与えてくれます。
 
☆今後の業務への抱負をお聞かせください。
    測量は、角度を計測する方式から人工衛星の電波を使用する方式へと、時代とともに変化してきました。先人たちは常に努力を惜しまず試行錯誤を繰り返して高精度な位置情報を取得し提供してきました。今後も新しい技術や測量機器が導入されていくことになりますが、先人に倣い引き続き正確な位置情報の取得に努め、社会のニーズである、高精度な位置情報をいつでも、どこでも、誰でも容易に利用可能となるよう、これまでの方式にとらわれることなく、技術開発などに積極的に取り組んでまいります。これからも国土の把握・明示、管理に必要な位置情報を整備、提供することで、国民の皆様の期待に応えていく所存です。
 
☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。
    測地部測地基準課は国土地理院の前身である民部官庶務司戸籍地図掛の時代より一五〇年にわたり日本の位置の基準を定め、測地基準点を維持管理し位置情報を提供してきました。また、大地震発生の際には、地殻変動の影響を受けた地域において再測量を実施することで復旧・復興事業に寄与してきました。今後も、皆様の生活の基盤となる正確な位置情報を提供するとともに、我が国国土の正確な把握・明示に努めていく所存です。ついては、先人の技術や知見、測量技術者としての誇りを継承しつつ、職員一丸となって業務に取り組んでまいりますので、今後とも御支援くださいましたら幸いです。



                                
                                 
 ▲令和元年西之島での基準点測量

              
平成23年東北地方太平洋沖地震の緊急水準測量
                        



                  
平成22年伊豆鳥島での測量機材の運搬
 




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