第32回(令和元年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞
 
気象庁沖縄気象台石垣島地方気象台
 
 120年以上にわたり、途切れることなく同じ地点で気象観測を継続し、世界気象機関の百年観測所として国内で唯一認定。台風最前線の地で山岳気象レーダーの安定運用に尽力し、気象庁の観測・予報業務に大きく貢献したことが認められました。


                        
 
☆始めに、石垣島地方気象台ではどのような業務を行っているのでしょうか。
  石垣島地方気象台は、天気予報や気象警報・情報等の発表、各種観測業務、防災機関と連携した自然災害の防止・軽減や防災知識の普及・啓発業務を行っています。なかでも、石垣島の中央部にある於茂登岳山頂に設置された石垣島レーダーの保守管理業務は重要な業務となっています。
    また、当台は、その前身である石垣島測候所が設置された明治二九年一二月以降、一二〇年以上にわたり途切れることなく同じ地点で高品質な気象観測を継続し、平成二九年五月に世界気象機関(WMO)から百年観測所として国内で唯一認定されました。
 
 ☆百年観測所としてどの様な役割を求められているのでしょか。
  百年観測所とは、一〇〇年以上ほぼ同じ場所で、統計の切断や長期の欠測もなく質の高い気象観測を続けている観測所のことです。気候に関する変化を確認するために必要な長期的な気象観測データの重要性を広く知ってもらうために世界共通の認定制度が設けられました。このような観測所がなければ、二〇世紀に地球が著しく温暖化したことを確認することが困難だったといえます。
 
☆日本最西端の台風最前線で気象レーダー観測業務を続けるうえで、特筆すべき点や御苦労の多い点をお聞かせください。
 石垣島レーダーは、西表石垣国立公園内の沖縄県最高峰である於茂登岳(標高五二六m)の山頂に設置されており、山頂までのアクセス道路が無いため職員は足場の悪い登山道を麓から徒歩で約九〇分かけて移動します。年間およそ延べ一〇〇人日の職員を動員し同レーダーの保守・運用を維持してきました。高温多湿で苛酷な状況下での登山は肉体的な負担が大きく、さらに石垣島はハブ咬傷被害が多発する地域で山頂宿泊時に遭遇することもあり、職員は身の危険を感じながらも同レーダーの保守管理業務を行っています。
 平成二二年一〇月に発生した大雨による土砂災害時には、登山道の一部が流失し同レーダーの自営受電線路が切断したことでレーダー観測業務が運用休止となったことがあります。職員は復旧に向け、安全を確保したうえで、幾度となく登山道の被害状況や新たなルートの選定などの調査を行い、短期間に復旧を成し遂げたことは記憶に新しいところです。
 
☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。
 気象レーダーは最大半径四〇〇㎞範囲の降水分布や強さ等を立体的に観測、予報や注警報等の防災情報発表のための実況監視や数値予報の資料として利用されています。石垣島レーダーの場合は他の気象レーダーの探知範囲との重複が少ないため、故障等で欠測した際の影響が大きく、職員は責任感と緊張感を持ち業務に取り組んでいます。
 また、八重山地方は、台風の主要経路にあたる台風常襲地帯で、当台は、創設以来、地域の皆様への防災知識の普及・啓発等に取り組み、地元の方言で「テンブンヤー(天文屋)」の愛称で親しまれてきました。地域の皆様と信頼関係を築き、気象災害の防止・軽減につなげることは、やりがいのあることだと感じます。
 
☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。
 当台は、明治二九年から一二〇年以上にわたり観測を継続し、地域と密接な関係を築き、地域防災業務を行うとともに、平成六年に石垣島レーダーの山頂設置以来、四半世紀にわたり台風の最前線にある山岳レーダーの保守管理業務に職員一丸となってあたってきました。これら業務を継続して行うことができたのは、歴代職員の不断の努力と、関係機関の御支援、地域の皆様の支えや御協力があったことからです。
 今後も地域の皆様から親しまれる気象台として、先人の方々の思いを引き継ぐとともに、百年観測所としての誇りと強い使命感をもって業務に取り組んでまいります。



                                        
                                 
 ▲百年観測所認定プレート

              
石垣島レーダー全景

                      
石垣島レーダー点検作業の様子


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