第33回(令和2年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

国土交通省 国土地理院 基本図情報部 くにかぜ撮影チーム

  測量用航空機により、急峻な山奥や絶海の離島など到達困難な場所も含め、60年にわたり、過酷な環境の中、国土を撮影し続けるとともに、大規模災害発生時には、空中写真の緊急撮影により被災状況の把握に寄与するなど、国土の管理・保全及び国民生活の向上に大きく貢献したことが認められました。

 
 
 
 

☆はじめに、国土交通省国土地理院基本図情報部くにかぜ撮影チームではどのような業務を行っているのでしょうか。

国土地理院基本図情報部くにかぜ撮影チームは、国土の適切な保全・管理、災害対応のために、保有する測量用航空機「くにかぜ」で、日本全国の空中写真撮影を実施しています。 平時においては、災害に備えるための国土の現況把握や、我が国の管轄権の根拠となっている離島等の現況把握のため、各地の空港を拠点として飛び立ち、飛行高度二千m~六千mの上空から撮影を実施しています。また、災害が発生した際は、被害状況の把握のため、直ちに被災地に向かい、機動的かつ広域的な空中写真の撮影を実施しています。昭和三五年の初代くにかぜから現在のくにかぜⅢまでに撮影した空中写真の総面積は、九〇九,五七〇平方キロメートルにのぼります。日本の国土の様子を記録したこれらの空中写真は、国土地理院のホームページで公開しています。

 

☆厳しい自然環境の下での低潮線保全区域の海上巡視の作業は、職員の肉体的・精神的に極めて苦労の多い業務であると推察しますが、日々の業務の中で、特に苦労の多い点や留意されている点をお聞かせください。

厳しい自然環境の中、六〇年間にわたり空中写真の撮影に御尽力されていますが、日々の業務の中で、特に御苦労の多い点や御留意されている点をお聞かせください。
 撮影は狭い機内で気流に揺られながら、時に五時間以上連続して行うこともあり体力を消耗します。災害に備えてシフトを組み、災害発生の一報を受けると、昼夜を問わず出勤し、短時間で撮影準備を行います。災害対応での撮影は時間との戦いであり、ミスが許されない緊張感を伴います。フライト中も雲の出現などで撮影に障害がある場合、飛行高度を下げるなど、状況に応じた判断が求められます。安全確保を第一にしつつ、あらゆる状況にも対応できるよう常に体調を万全に整えておくことを心がけています。 また、撮影に関するスキルアップも欠かせません。測量に関する知識はもちろんのこと、適切に作業を進めるため、気象や航空、無線に関する知識を習得するために努力しています。

 

☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。

くにかぜ撮影チームは、災害発生時に被災地の空中写真を関係機関に速やかに提供するため、撮影に当たってのコース計画作成、運航調整から撮影実施、撮影後の画像処理に至るまでの一連の工程を、昼夜を問わず実施しています。撮影した空中写真は関係機関に提供され、人命救助や被災状況の把握等に有効活用されているとともに、国民の皆様へも情報を提供するため、使命感を持って取り組んでいます。また、チームが連携して任務を成し遂げ、皆様から感謝の言葉をいただいたときには達成感を与えられます。

 

☆今後の業務への抱負をお聞かせください。

私たちは先人たちが残してきた空中写真や地図といった国土の姿を現した貴重な記録を今に受け継いでいます。この先人たちの努力を引き継ぎ、国民の皆様に提供し続けていくことが与えられた役割です。 空中写真は地図を作成する際に活用されますが、このほかにも長期間継続的に撮影した空中写真は、国土の開発状況などの変遷を示す貴重なデータとなります。平常時に撮影しているからこそ、災害時においてもこれと比較することにより、被災箇所の迅速な特定が可能となります。 平成七年一月一七日に発生した阪神・淡路大震災で撮影した空中写真は、関係機関で活用され、多くの報道機関でも被害状況を伝える資料として使用されました。また、発災から二一年目の平成二八年一月一七日に放送されたテレビでのドキュメンタリー番組でも、都市直下地震での貴重な検証資料の一つとして当時撮影した空中写真が用いられました。空中写真が災害の状況や教訓を後世に伝える資料として活用され、将来の被害の低減に役立てられればと考えています。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

くにかぜ撮影チームは六〇年間にわたり、一貫して空中写真の撮影を実施し、国土の姿を明らかにして皆様に提供してきました。また、災害が発生した際には、被害状況把握や応急復旧、復興に寄与してきました。今後も皆様の生活の基盤となる正確な地理情報を提供するとともに、国土の正確な把握に努めていく所存です。ついては、先人の技術や知見、測量技術者としての誇りを継承しつつ、職員一丸となって業務に取り組んでまいりますので、今後も御支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 
▲▲撮影した空中写真(災害対応)
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
(平成23年5月)
 
▲測量用航空機「くにかぜ」
 
▲撮影した空中写真(災害対応)
兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
(平成7年1月)
 
 
 

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