第33回(令和2年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

公正取引委員会事務総局 取引部取引企画課 消費税転嫁対策調査室

  平成26年4月以降の消費税率の2段階引上げに際して、顕在化しづらい消費税の転嫁拒否行為を捕捉するため、全国の全ての事業者に対する書面調査の実施、数千件に及ぶ勧告・指導を行い、多額の利益を回復するなど、公正な取引の実現に大きく貢献したことが認められました。

 
 
 
 

☆はじめに、公正取引委員会事務総局取引部取引企画課消費税転嫁対策調査室ではどのような業務を行っているのでしょうか。

「消費税率が引き上がったのに取引先大企業が消費増税分を支払ってくれない」―このような消費税率引上げ分の負担を中小事業者に押し付ける行為(「消費税転嫁拒否行為」といいます。)を取り締まる業務を行っています。この行為は全国津々浦々あらゆる取引で起こり得る一方、中小事業者が自ら被害を訴えることは困難です。このため、被害の有無を尋ねる調査票を毎年全ての事業者に送付すること等で情報収集を行い、違反事業者に対して問題行為の是正と被害額の支払を求める行政指導を行っています。この業務は税率八%引上げ直前の平成二五年十月に始まり、以来、書面調査の実施件数は四千万件を超え、約三千五百件の指導を通じて約二七万名の被害者に総額約七九億円分の不足額が支払われました。

 

☆日々の業務の中で、特に御苦労の多い点や御留意されている点をお聞かせください。

消費税転嫁拒否行為の取締手段は行政指導のみであり、指導に従っていただけないときの罰則はありません。私たちの活動は、違反事業者の任意の協力の下、迅速に行政目的の実現を図ることを旨としており、調査の段階から違反事業者の理解と協力を引き出していくことがとても重要です。しかし、調査対象企業に連絡を取ろうとしても電話に出ていただけなかったり、資料の提出を拒否されるなど、調査が難航する場合も少なからずあります。そのような場合でも、相手の主張・説明に十分耳を傾けるとともに丁寧な説明を尽くすことで、最終的には相手方の理解と協力を得、指導・改善に至っています。
 留意している点に関しましては、情報を提供くださった方を違反事業者からの報復措置の危険に晒すことはあってはならないことであり、違反事件調査に当たっては情報提供者をお守りするということに最も神経を使っています。情報の取扱いに万全を期することは当然ですが、違反事業者に接触し調査を行う際は、調査の端緒を悟られたり疑われたりすることがないよう、あらゆる工夫を行い、二重三重にカモフラージュを施しながら調査を実施しています。

 

☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。

私達の業務の大きな目的のひとつは、違反事業者に違反行為を取り止めさせ、被害者に対して不利益額を支払わせる等により、被害者の救済を図ることです。違反事業者の多くは、取引先が本当は陰で泣いていることを認識していないのですが、我々も情報提供の存在を悟られないため、そのような話はできません。そのため、違反事業者に法令の趣旨等を十分に説明し、指導に納得いただき、改善のための支払等を行ってもらっています。真摯に対応することにより、なかなか納得してもらえなかった事業者の代表者から「今後は、取引先とは十分に話し合い、納得してもらえない契約変更等は行わない」と言っていただけた時は、苦労が報われたと感じた瞬間でした。また、無事に被害者への不利益額の支払等の改善が行われた際も、被害者のほっとした声が聞こえてくるようで、やりがいを感じる時です。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

今回、このような栄誉ある賞を受賞することができ、大変光栄に存じます。この七年間で消費税の転嫁対策を通じて取引公正化を大きく進展させることができたのは、ひとえに、勇気をもって情報を提供くださった皆様と、調査に真摯に御協力いただくとともに指導内容をよく理解し、迅速に改善いただいた皆様のお陰です。今回の受賞はそういった皆様の御理解・御協力があってのものと考えます。この受賞を励みとして、今後より一層公務に精進し、皆様の当委員会に対する信頼を裏切らぬよう、様々な声に耳を傾けるとともに、先入観にとらわれることなく、適正な手続で事実をしっかり見極めてまいります。

 
▲事情聴取を行う消費税転嫁対策調査室の職員
 
▲事業者に送付した書面調査票
 
▲消費税転嫁対策調査室執務室の様子
 
 
 
 

-総裁賞受賞者一覧に戻る-

 

Back to top