第34回(令和3年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

海上保安庁 海上保安学校

  70年の長きにわたり海上保安官の育成を担い、令和3年度をもって延べ約2万人の海上保安官を輩出しており、開校から今日まで、国民の安全・安心確保を使命とした海上保安制度の維持に直結する人材の育成に尽力し、公務の信頼を高めることに貢献したことが認められました。

 
 
 
 

☆はじめに、海上保安学校ではどのような業務を行っているのでしょうか。

海上保安学校では、開校七〇周年を迎え、これまで永きにわたり初任の海上保安官の育成を担い、令和三年度をもって延べ約二万人に到達しました。開校から今日まで国民の安心・安全確保を使命とした海上保安制度の維持に直結する人材の育成を続け、海上保安庁全職員約一四,〇〇〇人のうち、約七割を当校出身者が占めています。 当校は、全国各地から採用された学生に対し、海上における犯罪の取締り、領海警備、海難救助、環境保全、災害対応、海洋調査、船舶の航行安全等の活動をするために必要な専門知識・技術の習得、強靭な気力・体力の練成のほか、海上保安官及び公正な国家公務員として必要な人格の形成を目標とし教育訓練を行っています。全寮制の下、卒業後の業務に応じた五課程三コースに分かれ、現場経験の豊富な教職員が、専門的かつ実践的な授業及び訓練を行い、海の上という厳しい自然環境の中においても、「海の平和を守る」という使命を果たせる人材の育成を行っています。

 

☆七〇年にわたり海上保安官の育成を担い、開校から今日まで国民の安心・安全確保を使命とした海上保安制度の維持に直結する人材の育成に御尽力されていますが、日々の業務の中で、特に御苦労の多い点や御留意されている点をお聞かせください。

昨今の離島周辺や遠方海域における領海警備体制を早期に確立するため、平成二六年度以降、学生が大幅に増加したことに伴い、校内の施設及び実習船、教育資機材の拡充、教育カリキュラムの見直しなど教育環境の整備を行いました。。
 毎年、春と秋に分かれて入校する六〇〇名を超す学生は、高校卒業直後の者や社会人経験がある者など幅広い層に亘っています。こうした学生に一年又は二年という短い期間で、海上保安官として必要な気力・体力を養う訓練をはじめ、海上犯罪の取締りなどの海上保安業務の遂行に必要な学術及び技能を修得させるため、また、船舶の運航に必要な海技士及び小型船舶操縦士、無線通信技士など、数多くの国家資格を取得させるため、様々な授業及び訓練、乗船実習などの細密なカリキュラムを実行しています。更には、学生個々の学力及び体力レベルに合わせた指導及びトレーニングなどを適切に行い、一定の水準以上にレベルアップできるよう努めています。 また、当校での生活面においては、校内の諸行事のほか、地域の皆様に支えていただきながら、スポーツ交流や各種イベントに参加させていただくこと等を通じて、良好な人間関係の構築や社会人としての責任ある行動等を自ずと体得していけるよう思慮しています。

 

☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。

誰もが入校当初、右も左も分からない状況から始まりますが、一カ月、半年と経過していく中で授業や訓練を通して幾多の試練を乗り越えていく学生の姿を目の当たりにした時は、大変頼もしく感じます。また、単に試験の合格や課題のクリアを目標に掲げるだけでなく、海上保安官に必要な人格陶冶に研きが見られた時には、教育現場にとってこの上ない喜びを実感することができます。

 

☆今後の業務への抱負をお聞かせください。

平成二八年一二月、「海上保安体制強化に関する方針(関係閣僚会議決定)」において、尖閣領海警備体制の強化と大規模事案の同時発生に対応できる体制の整備、海洋監視体制の強化、原発等テロ対処・重要事案対応体制の強化、海洋調査体制の強化、これらの体制を支える基盤整備が決定され、海上保安業務対応能力の向上を図るための人材育成の重要性が示されました。海上保安学校における教育訓練への期待と必要性が更に高まりつつある中、教務・教育の効率化、学習・情報環境の改善による教育効果の最大化を図り、現場が求める人材を輩出するため学校教育のICT化を推進しています。今後、益々多様化及び複雑化する海上保安業務に適確に対応していける人材を育成していきます。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

当校は、「海上保安学校学生は、正義仁愛の理念に基づいて、学生としての自覚と誇りを持ち、学術技能の習得につとめ、規律と責任を重んじ、身体を錬成し、不撓不屈の精神と品性の陶冶に努めなければならない。」という教育理念に立脚し、皆様の期待に応え続けていけるよう、日本を取り囲む海から全力で貢献し得る若き海上保安官の育成に努めて参ります。

 
▲訓練(カッターレース)の様子
 
▲訓練(小型船舶操縦実習)の様子
 
▲卒業の様子
 
 
 

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