第34回(令和3年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

気象庁 高層気象台

  100年以上の長きにわたり高精度な高層気象観測を継続し、得られた観測データは、天気予報をはじめ、地球環境・気候変動の研究・監視・評価のための基盤情報として活用され、国民の生命・財産を守る防災気象情報の根幹を支えるなどし、公務の信頼を高めることに貢献したことが認められました。

 
 
 
 

☆はじめに、高層気象台ではどのような業務を行っているのでしょうか。

高層気象台は、気象庁の施設等機関のひとつで、茨城県つくば市に施設を置き、大正九年の設立以降、高層気象(気温、風など)、オゾン、紫外線、太陽及び大気の輻射の観測技術基盤を順次構築して、その精密な観測を継続して行ってきました。また、この観測技術及び気象測器の試験・改良に関する調査業務、観測データの精度を担保する品質管理、国内外への技術支援を行っています。

 

☆大正九年に設立されて以降、一〇〇年以上にわたり高精度な高層気象観測を継続されていますが、日々の業務の中で、特に御苦労の多い点や御留意されている点をお聞かせください。

高層気象台では、世界気象機関の基準に従い、国内一六地点ある高層気象観測所の一地点として、気球に吊るしたラジオゾンデと呼ばれる観測機器を一日二回(九時と二一時)飛揚して、高度約三〇㎞までの気温・湿度・風の観測を、どのような気象条件でも欠かすことなく毎日実施しています。
 また、国内で唯一、オゾンゾンデと呼ばれる観測機器をより大きな気球に吊るして、高度約三五㎞の超高層までのオゾン観測を毎週一回実施し、オゾン層保護のための観測を行っています。ラジオゾンデ等の飛揚に際しては、観測機器の性能を確実に発揮するために、飛揚前に基準器と比較するなどの点検を丁寧に実施しています。 また、高層気象観測精度を支える校正業務においては精緻な調整作業が必要となります。特にオゾンの観測機器はアジア地区の基準器として世界的な精度維持にも寄与するものなので、より慎重な取り扱いが求められます。

 

☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。

高層気象台では、観測技術の精度向上を目指した観測手法や観測機器の試験・改良、全国の高層気象観測の精度を担保するための観測機器の確認(校正業務)、国際的な技術支援などに継続的に取り組んでいます。
 平成二年には、輻射観測用測器等の校正装置の開発や波長別紫外域日射観測等の新たな観測手法の開発を行い、その成果が認められて運輸大臣表彰を受賞しています。このように、地道な取り組みが業務に反映されて、それが評価されることは、やりがいのあることだと感じます。

 

☆台風や豪雨などの気象に関する災害が発生している中で、高層気象台が行う取組や期待される役割などについてお聞かせください。

高層気象台で得られた大気の観測データは、数値予報モデルや高層天気図等の予報のための基礎資料として利用され、気象庁による精度の高い天気予報の提供に貢献しています。
 また、地球上の生物に影響のあるオゾン、紫外線、太陽及び大気の輻射の精密な観測データは、紫外線情報等として広く国民に提供され、紫外線による健康被害の予防に生かされているほか、地球温暖化など気候変動の監視に関する情報、地球環境・気候変動の研究・監視・評価のための基盤情報として活用されるなど、国民の生命・財産を守る防災気象情報の根幹を支えています。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

高層気象台は、世界で初めてのジェット気流発見や、国際的な観測網の基準となる観測地点としての活動などにより、世界で高く評価されています。
 今日の高層気象台があるのは、歴代職員の不断の努力と関係機関の御支援、地域の皆様の支えや御協力があったからです。
 今後も、先人の方々の想いを引き継ぐとともに、高精度な高層気象観測を行う世界の基準観測地点として国際的に貢献する観測所として、誇りと強い使命感をもって業務に取り組んでまいります。

 
▲大正13年のジェット気流観測報告書
 
▲オゾン/紫外線域日射観測の様子
 
▲ラジオゾンデによる観測の様子
 
 
 

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