第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

第6章 人事行政分野における国際協力

 平成17年1月より、中国及び韓国の中央人事行政機関と日中韓人事行政ネットワークを構築し、各種協力事業を実施している。令和元年9月には、我が国では10年ぶりの開催となるトップ会談を札幌市において開催し、今後の具体的な協力の方向性について確認するとともに、新たな協力覚書に合意・調印した。また、同年6月に韓国・ソウル市において局長級会談を行ったほか、同年11月には、中国・広州市において「三国における公務員の採用制度」をテーマに三国共催シンポジウムを開催するなど様々な人的交流を実施した。

 主要国の人事行政機関の幹部職員等を、毎年招へいし、人事行政の最新の実情について意見交換を行っている。令和元年度は、ドイツ及び英国から政府幹部職員を招へいし、「高齢化の進展に対応した公務員人事管理の状況」をテーマに、日本行政学会との共催による国際講演会を実施した。

 アジア諸国の公務員制度改革を継続的に支援し、日本の公務員制度に高い関心を持つ国との人的ネットワークを構築するため、平成29年度から、アジア諸国の人事行政機関の専門家を招き、意見交換を実施している。第3回となる令和元年度は、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン及びタイの5か国から専門家を招へいし、公務における国民の信頼確保に関する意見交換を実施した。

 ベトナム政府が令和元年8月から実施している戦略的幹部養成研修に関し、人事院及び他府省の幹部行政官OB等をベトナムに派遣し講義や討議等を行うとともに、ベトナムでの研修成績優秀者を対象とする訪日研修の企画立案・実施について支援を行った。

(1)日中韓人事行政ネットワーク

人事院は、平成16年11月の日中韓首脳会議において承認された「日中韓三国間協力に関する行動戦略」に基づき、人事行政分野における協力枠組みとして、平成17年1月に、中国人事部(現:国家公務員局)及び韓国中央人事委員会(現:人事革新処)との間で日中韓人事行政ネットワークを発足させ、現在まで各種協力事業を実施するなど、日中韓協力の一翼を担っている。

令和元年9月5日、一宮なほみ人事院総裁、傅兴国 (フー・シングオ)中国国家公務員局長、黃曙鍾(ファン・ソチョン)韓国人事革新処長が出席し、我が国では10年ぶりの開催となる第8回日中韓人事行政ネットワーク・トップ会談を札幌市において開催した。本会談では、これまでの協力活動を振り返りながら今後の具体的な協力の方向性を確認するとともに、新たな協力覚書に合意・調印した。これにより、本ネットワークは、協力関係を一層強化する方向で継続されることとなった。あわせて、長時間労働の是正、仕事と育児・介護との両立支援の推進、ハラスメント対策など、「職場環境の改善」に関し、三国の人事担当機関の長がそれぞれの取組について紹介しつつ、意見交換を行った。

このほか、同年6月に韓国・ソウル市にて、第9回局長級会談が開催され、人事院事務総局総括審議官、中国国家公務員局弁公庁副主任、韓国人事革新処企画調整官が出席し、今後3年間の協力の枠組みとなる第9次協力計画を策定するとともに、トップ会談の開催に向けた事前協議を行った。

さらに、同年11月、中国・広州市にて、「三国における公務員の採用制度」をテーマとして、三国共催シンポジウムが開催され、人事院人材局試験審議官、中国国家公務員局公務管理第一局長、韓国人事革新処人材採用局長が団長として出席し、公務員の採用における公正性の確保等について発表及び質疑応答が行われた。

(2)主要国政府幹部職員等招へい事業

人事院は、人事行政の専門機関として、各国人事行政機関との交流を通じて人事行政分野における協力を推進するとともに、我が国の公務員制度が直面する課題に関し、各国の経験や取組から示唆を得ることを目的として、毎年、主要国の人事行政機関の幹部職員等を招き、人事行政の最新の実情について意見交換を行っている。平成22年度からは、日本行政学会との共催により、2か国から政府幹部職員等を同時に招き、国際講演会等を実施している。

令和元年度においては、ドイツ及び英国から政府幹部職員を招へいし、「高齢化の進展に対応した公務員人事管理の状況」をテーマとした国際講演会を令和2年1月に開催した。

講演会においては、ドイツ連邦内務・建設・祖国省公務員局長常任代理のフランツ・パルム氏から、ドイツにおける人口の高齢化の状況、高齢職員を対象とする柔軟な勤務形態や年金制度の実情等について、英国雇用年金省人材・組織力局長のデビー・アルダー氏から、英国における年齢別人口構成の変化、高齢職員に対する雇用機会提供の実情、高齢化に伴う問題を能力伸長や心身の幸福の面から捉え直すことの必要性等について説明があった。

本講演会には各府省職員、研究者等約90人が参加し、被招へい者に対し、多くの質問が寄せられた。

(3)アジア諸国人事行政担当機関職員招へい事業

経済成長や政治の民主化を進めるアジア諸国においては、専門能力を持つ士気の高い公務員が行政を担うよう、欧米型の近代的な公務員制度を範としつつ、公正で能率的な仕組みの構築に向けた改革が進められており、人事行政分野の改革においては、我が国の公務員制度に強い関心が寄せられている。

人事院では、こうしたニーズを踏まえ、アジア諸国の公務員制度改革を継続的に支援し、人的ネットワークの拡大を図るため、平成29年度から、アジア諸国の人事行政機関の専門家を招き、公務員人事管理の現状や公務員育成に関する意見交換を実施している。

第3回となる令和元年度は、インドネシア人事委員会副コミッショナーのヌルハスニ・アヌワル氏、マレーシア公務員庁給与部人事・施設担当課長のノルバヤ・オスマン氏、ミャンマー連邦公務院公務員研修所(上流域)研修部長のキン・サン・ユ氏、フィリピン人事委員会人事政策・基準局長のロドルフォ・エンカホナード氏及びタイ人事委員会事務局メリットシステム保護課長のカモンラック・オーンアーリー氏を招き、「公務における国民の信頼確保」を共通テーマに、各国の発表や質疑応答を通じて意見交換を実施した。

(4)ベトナム戦略的幹部養成研修に対する支援

ベトナムの国家指導者養成機関であるホーチミン国家政治学院(ベトナム共産党直属)は、5年ごとに選ばれる共産党中央委員の候補を選抜・育成するため、令和元年8月から、副大臣級・局長級の現職幹部を対象に「戦略的幹部養成研修」を実施している。この研修に関し、独立行政法人国際協力機構(JICA)のプロジェクトの一環として、当該研修プログラムの中で日本の行政や公務員制度を伝えるためのコースを実施した。具体的には、人事院及び他府省の幹部行政官OB等をベトナムに派遣し、公務員制度、環境政策、公的財政管理をテーマに、講義や討議等を行うとともに、ベトナムでの研修成績優秀者を対象とする訪日研修の企画立案・実施について支援を行った。

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