第1編 人事行政

第2部 グローバル社会を切り拓く国家公務員を育てるために

第2章 国際人材の確保・育成に関する人事院及び各府省における取組

第1節 人事院における取組

2 行政官短期在外研究員制度

(1)制度等の概要

行政官短期在外研究員制度は、中堅行政官にも海外に派遣する制度の制定を求める声が強くなったことを踏まえ、増大する国際関係業務に適切かつ迅速に対処し得る人材の育成を図るものとして昭和49年度に発足した制度である。

派遣される研究員は、在職期間がおおむね6年以上、かつ係長級以上の行政官であり、各府省の長が推薦する者のうちから、人事院の選抜審査を経て決定する。研究員は6か月間又は1年間、諸外国の政府機関、国際連合等の国際機関等の派遣先で実務的な課題について調査・研究活動に従事し、専門的な知識・技能等を習得する。

本制度の修了者は、帰国後、国際的視野をいかした業務に携わるなど各方面で活躍しており、研究員が帰国後に提出する研究報告書は、海外の制度、実情に関する最新の情報として、関連する行政分野で活用されている(コラム⑦参照)。

(2)派遣人数

昭和49年度の制度発足以来、令和元年度までに派遣した研究員の総数は1,534人、派遣先国(地域)は34となっている。派遣した研究員の総数を派遣先国(地域)別の内訳で見ると表2-2のとおりであり、米国(724人)、英国(309人)、オーストラリア(100人)、フランス(70人)、ドイツ(62人)、カナダ(55人)への派遣者数が多くなっている。

表2-2 行政官短期在外研究員派遣状況(派遣先国(地域)別)
表2-2 行政官短期在外研究員派遣状況(派遣先国(地域)別)のCSVファイルはこちら

コラム⑦ OECDでの業務を経験して

特許庁総務部企画調査課課長補佐(知財動向班長) 立花 啓 氏

行政官短期在外研究員制度で、フランスの経済協力開発機構(OECD)に1年間派遣された。

OECDでは、知的財産に関する調査研究を行うとともに、科学技術政策に関する調査を行うエコノミストのチームの一員として業務に携わった。ドイツ人上司の下、スペイン人やコロンビア人など様々な国籍の人々と共に仕事ができたのは、国際機関ならではであった。そのような環境の中で、日々、情報やデータを集め、議論し、分析を行った。

また、加盟各国の代表団が集まる国際会合を開催した。これらの経験を通して、データ分析などの専門知識を深めるとともに、外国語への慣れや実践力の向上にもつなげることができた。外国人の働き方や習慣の違いを目の当たりにし、学ぶことも多く、海外経験の少なかった私にとっては、転機となる重要な体験となった。

帰国した後、現在は、知的財産と経済との関係についての調査研究や統計作成を担当している。また、欧州特許庁など外国の知的財産庁のエコノミストとの定期的な会合に参加して意見交換を行っている。これらの業務は、OECDでの業務内容に直接関係するものであり、そこで得た専門性と国際経験を存分にいかすことができている。

外国の機関で外国人に囲まれた環境で業務を行うことは、国内で国際業務を行うこととは大きく異なる。刺激的であり、苦労することも多いが、その経験はその後の業務や生活においても大いに役立つものである。これから派遣される方は、貴重な機会を楽しんできてほしい。

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