第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

第3章 多様な人材の確保・育成等

1 人材の確保

(1)採用試験の実施

2020年度国家公務員採用試験の実施に関しては、緊急事態宣言の発出など新型コロナウイルス感染症に係る状況を踏まえ、総合職試験の第1次試験を二度延期して7月5日に実施するとともに、第2次試験では院卒者試験の政策課題討議試験、大卒程度試験の専門試験(記述式)の実施を見送った。また、海上保安学校学生採用試験(特別)、専門職試験(大卒程度試験)及び一般職試験(大卒程度試験)の第1次試験の実施を延期し、それぞれ7月19日、8月2日、8月9日に実施した。各試験の実施に当たっては、マスクの着用、手指消毒の実施のほか、三つの「密」(密閉・密集・密接)を回避するため、距離を置いた座席配置や試験実施中の換気など感染防止対策を講じた。

(2)オンライン啓発活動・人材確保活動の実施

令和2年度においては、これまで顕在化していた若者の進路選択の早期化や就業意識の多様化に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、大学の講義や民間企業等の採用選考活動等がオンライン化するなど、人材確保をめぐる状況も大きく変化した。

こうした新たな動きを踏まえ、人事院としては、コロナ禍にあっても学生等へのアピールの機会を可能な限り確保するため、イベントのオンライン対応を迅速に進め、各府省や大学等とも連携しながら人材確保活動を積極的に展開した。本年度新たに行った主な取組は以下のとおり。

①公務志望者の関心が高く、例年多くの参加者が集う「公務研究セミナー」「総合職中央省庁セミナー」「一般職各府省合同業務説明会」について、人事院として初めて大規模にオンラインを活用して実施した。いずれのオンラインイベントにおいても、例年の対面型イベントより多くの参加を得るとともに、参加者アンケートからは、参加者の満足度が高く、移動の費用・時間などの負担を軽減できたことや、場所や服装を意識せずに多くの府省の話を一度に聞けることなどのメリットを挙げる回答が多かった。

②イベント会場の使用に制限がかかる中、大学と連携しオンラインを活用した「国家公務員ガイダンス」等の業務説明の場を設け、国家公務員が社会への貢献とやりがいを感じられる職業であるという魅力をアピールするとともに、各府省における働き方改革の取組や職業生活への多様な支援等に関する情報を提供した。

③中途採用についても、民間企業における実務経験等を有する者を対象とした経験者採用試験に係る各府省合同業務説明会をオンラインで実施するなどし、より幅広い周知に努めた。

また、これらのイベント開催とともに、インターネットを通じた情報発信を強化するため、既存のホームページやフェイスブックに加え、若年層に普及しているツイッターやインスタグラムにおいても採用情報に特化したアカウントを新設した。これらの各媒体を活用した情報発信に当たっては、各媒体の特性に応じたコンテンツ編集を行いつつ、媒体を相互に連携させながら、採用試験・業務説明会等に関する情報、各府省が求める人物像、現役職員からのメッセージなどを積極的に発信し、公務志望者により具体的なイメージを持ってもらえるよう努めた。

(3)国家公務員中途採用者選考試験(就職氷河期世代)の実施

就職氷河期世代に係る国家公務員中途採用者選考試験の実施について政府からの要請を受け、人事院において必要な検討を行い、各府省とともに、1966(昭和41)年4月2日から1986(昭和61)年4月1日までに生まれた者を採用するための国家公務員中途採用者選考試験(就職氷河期世代)を実施した。具体的には、令和2年11月から令和3年2月にかけて、人事院が第1次選考として基礎能力試験及び作文試験を統一的に実施し、その通過者の中から各府省が第2次選考として採用面接等を行って最終合格者を決定する形で実施した。

同選考試験(就職氷河期世代)においては、当初の採用予定数157人に対し、申込者数は10,943人、第1次選考通過者数は1,009人、合格者(採用内定者)は199人であった。

(4)デジタル区分の新設等

「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月25日閣議決定)において、令和4年度以降の実施に向けて総合職試験に新たな区分(「デジタル」(仮称))を設けることや、出題などに関する検討を人事院に要請することとされた。これを受けて人事院において必要な検討を行った結果、令和4年度から、総合職試験にデジタル区分を新設し、また、一般職試験の電気・電子・情報区分をデジタル・電気・電子区分として見直す方針とし、令和3年4月に公表した。

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