第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

第4章 新型コロナウイルス感染症をめぐる対策

 新型コロナウイルス感染症をめぐる主な対策として、人事院では、勤務時間割振りの特例、出勤困難な場合の特別休暇、職員の健康確保、抗体検査、災害補償、特殊勤務手当の特例に係る対応を実施したほか、第1章又は第3章において既述したとおり、給与勧告、採用試験、人材確保、研修についての対応を実施した。

(1)勤務時間割振りの特例及び出勤困難な場合の特別休暇

ア 勤務時間割振りの特例

新型コロナウイルス感染症の発生状況等を踏まえ、人との接触機会を減らす観点から、各府省においてより柔軟に時差出勤を行うことができるよう、令和2年2月25日に「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第6条第2項の規定により勤務時間を割り振る場合の休憩時間の特例について」(令和2年事務総長通知)を発出し、午前11時30分から午後1時30分までの時間帯に休憩時間を置く場合、その前後の連続勤務時間を最大6時間まで可能とする勤務時間割振りの特例を措置した。

イ 出勤困難な場合の特別休暇

新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、令和2年3月1日に「新型コロナウイルス感染症拡大防止において出勤することが著しく困難であると認められる場合の休暇の取扱いについて」(令和2年職員福祉局長通知)を発出し、職員若しくはその親族に発熱等の風邪症状が見られる場合又は小学校等の臨時休業その他の事情により子の世話を行う必要がある場合等で勤務しないことがやむを得ないと認められるときは、常勤職員、非常勤職員とも、出勤困難な場合の特別休暇(有給)の対象として差し支えない旨を各府省に対して示した。その後、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律(令和2年法律第4号)が公布・施行されたこと等を踏まえ、同年3月27日に同通知を改正し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)に基づく外出自粛要請の対象となった場合で勤務しないことがやむを得ないと認められるときを同休暇の対象として取り扱って差し支えないこととした。

また、新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律(令和3年法律第5号)が公布・施行されたこと等を踏まえ、この改正で新たに設けられた感染症法に基づく患者に対する宿泊療養・自宅療養の協力要請の対象となった場合で勤務しないことがやむを得ないと認められるとき等が同休暇の対象となることについて、同通知の規定上明らかにする等の改正を令和3年2月13日に行った。

(2)職員の健康確保

職員の健康確保の観点から、令和2年3月4日に「新型コロナウイルスに感染した職員に対する指導区分の決定及び事後措置に係る手続について」(令和2年職員福祉課長通知)を発出し、新型コロナウイルス感染症に罹患した者に対する規則10-4(職員の保健及び安全保持)に基づく就業禁止の決定について、手続の簡素化を可能とすることを各府省に対して周知している。

また、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえ、令和2年4月6日、同年5月13日、同年6月10日及び同年12月4日に「新型コロナウイルス感染症の感染防止に向けた職場における対応について」(令和2年職員福祉課長通知)を発出し、新型コロナウイルス感染症の感染防止行動の徹底や風邪症状を呈する職員への対応、感染疑いが生じた場合の対応等について各府省へ周知した。

さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、令和2年4月15日に「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた人事院規則10-4に基づく健康診断の実施等に係る対応について」(令和2年職員福祉課長通知)を発出し、採用時等の健康診断及び定期の健康診断について、予定していた時期に実施することが適当でないと判断する場合は、延期しても差し支えない旨を各府省へ周知した。

令和2年5月7日に「新型コロナウイルス感染症に関する妊娠中の女子職員の業務軽減等の取扱いについて」(令和2年職員福祉課長通知)を発出し、妊娠中の女子職員について、感染のおそれの心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師等から指導を受けて職員が請求した場合、在宅勤務を命じる等の措置を講じなければならないことについて各府省へ周知した。

(3)抗体検査への対応

令和2年5月29日に指令14-1(新型コロナウイルス感染症に係る抗体検査を受ける場合における職員の職務に専念する義務の免除に関する臨時措置について)を発出し、同年6月1日より、新型コロナウイルス感染症に関する抗体保有状況を把握するために行われる抗体検査を受ける場合において、職員が勤務しないことがやむを得ないと認めるときは、公務の運営に支障のない範囲内で、勤務しないことを各府省等において承認することができるようにした。

(4)災害補償

新型コロナウイルスにさらされる業務に従事したため発症した疾病については、公務上の災害となる。このため、公務災害の認定を速やかに行うこと等について、令和2年3月31日に発出した「新型コロナウイルス感染症に係る公務災害及び通勤災害の認定について」(令和2年補償課長通知)及び同年6月5日に発出した「新型コロナウイルス感染症に係る人事院規則16-0(職員の災害補償)第20条の規定による報告等について」(令和2年補償課長通知)で各実施機関に対して周知した。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、同年5月29日に規則16-4(補償及び福祉事業の実施)を改正し、令和元年度の補償の実施状況等の人事院への報告の期限を延長した。

各実施機関において、新型コロナウイルス感染症について公務上の災害と認定した件数(人事院が実施機関から報告を受けた件数)は、令和3年3月31日現在で32件である。

(5)特殊勤務手当の特例

新型コロナウイルス感染症の発生に伴い、大規模な体制による国内感染拡大防止対策が実施され、著しい特殊性を有する業務が臨時的に発生したことから、新型コロナウイルス感染症対策のための緊急措置に係る作業に従事した場合に、特例的に1日につき3,000円(感染者等の身体への接触を伴う作業等に従事した場合は4,000円)の防疫等作業手当を支給できるよう、規則9-129(東日本大震災及び東日本大震災以外の特定大規模災害等に対処するための人事院規則9-30(特殊勤務手当)の特例)を令和2年3月18日に改正し、同感染症流行地域からチャーター機で帰国した邦人への対応、感染者が発生したクルーズ船に係る対応、入国拒否対象地域からの入国者に対する空港検疫(水際対策強化策導入当初に限る。)等の作業に適用した。

その後、同感染症の拡大に伴い、対応業務が長期化・多様化していることを踏まえ、上記以外の特殊性の高い対応業務に従事した場合にも、1日につき1,000円(感染者等の身体に接触して行う作業に長時間にわたり従事した場合は1,500円)の防疫等作業手当を支給できるよう、規則9-129を令和2年11月27日に改正し、入国拒否対象地域からの入国者に対する空港検疫や刑務所における陽性の被収容者の看護等の作業に適用した。

(6)給与勧告への対応(詳細は第1章1及び2のとおり)

勧告の基礎となる「職種別民間給与実態調査」について、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を考慮し、例年より時期を遅らせた上で、2回に分けて実施した。特別給等に関する調査については、令和2年6月29日から実地によらない方法により先行して実施し、実地が基本となる月例給に関する調査については、感染症予防対策を徹底した上で、同年8月17日から実施した。これらの調査結果に基づき、同年10月7日、国会及び内閣に対し、特別給に関する報告及び勧告を行い、同月28日には、同様に月例給に関する報告を行った。

(7)採用試験の実施(詳細は第3章1(1)のとおり)

2020年度国家公務員採用試験については、緊急事態宣言の発出など新型コロナウイルス感染症に係る状況を踏まえ、一部の試験について試験日程の延期等の対応を行って実施した。また、各試験の実施に当たっては、マスクの着用、手指消毒のほか、三つの「密」(密閉・密集・密接)を回避するため、距離を置いた座席配置や試験実施中の換気など感染防止対策を講じた。

(8)オンラインによる人材確保活動の展開(詳細は第3章1(2)のとおり)

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、対面型での人材確保イベントの開催が制約を受ける中、学生等へのアピールの機会を可能な限り確保するため、初めてオンラインを活用した大規模イベントを開催したほか、インターネットやSNSを通じた情報発信を強化するなど、各府省や大学等と連携しながら人材確保活動を積極的に展開した。

(9)研修の実施(詳細は第3部第2章のとおり)

研修については、実施時期の延期、現場訪問の中止など研修内容の見直し、1コース当たりの研修員数の削減など年間実施計画を大幅に見直し、3つの「密」対策など感染防止対策を適切に講じた上で実施した。また、一部の研修について、インターネットを活用しオンラインで実施した。

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