第1編 人事行政

第2部 公務職場の魅力と課題を考える~国家公務員の意識調査データを通して~

第3章 調査結果から見た公務職場の魅力と課題~公務職場の魅力と活力を高めるために~

第2節 公務職場の魅力と課題

2 コンプライアンス

国家公務員には、法令に従う服務義務が課されており、職員のコンプライアンスが極めて重要であることは言うまでもない。

コンプライアンスに関する職員の認識については、平成28年度調査で肯定的な評価がなされていたが、今回調査においても引き続き肯定的な評価がなされており、特に【法令の理解・遵守】の領域は最も肯定的な評価がなされている。個々の職員としては、法令やルールを理解し、それらを遵守している認識が高いことが読み取れる。

この領域に属する質問項目については、平成28年度調査の時よりも平均値が高くなっている。これは、平成28年度調査から今回調査までの間に、幹部職員による倫理法等違反の事案や公文書管理に関する不適切な取扱いなど複数の不祥事が発生したことを受けて、不祥事の再発防止のため、公務員倫理や公文書管理に係る研修・啓発等が頻繁に行われるようになったことも寄与していると考えられる。

コンプライアンスの観点では、【ハラスメント防止】の領域も関係するが、この領域に属する質問項目も平成28年度調査より平均値が高くなっており、肯定的な評価がなされている。人事院としても、令和2年度にパワハラを防止するための新たな人事院規則を制定・施行するなど各種ハラスメント防止に関する人事院規則を整備し、職員によるハラスメントを禁止しているほか、職員以外の者が職員から受けたセクハラ被害に関する相談窓口を設けるなど、各種施策を通してハラスメントの防止等に関する職員の意識の向上や啓発等に努めているところであり、こうした施策による一定の効果が表れているものと考えられる。

もっとも、「セクハラの防止度」についての男女の認識や「パワハラの防止度」についての一般職層と管理職層の認識にギャップが見られること、これらの質問項目に比べて「同僚へのハラスメント行為の不存在」の平均値が低いことを踏まえると、他者からはハラスメントと受け取られる言動が職場でなされていることがうかがわれることから、ハラスメント防止対策を引き続き推進する必要がある。また、30歳台と係長級の職員について、「同僚へのハラスメント行為の不存在」、「カスハラへの対応策」といった質問項目の平均値が他の属性の平均値と比べて低くなっており、30歳台や係長級の職員が実務担当者として比較的困難な業務を担当する中で、所属する府省庁の業務の範囲や程度を明らかに超える外部からの苦情などいわゆるカスタマー・ハラスメントに相当する言動に担当者として対応することを余儀なくされている場合があることも考えられる。

また、コンプライアンスに関する領域のほとんどの質問項目で、審議官級以上の平均値が職制段階別で最高値となっており、課長級や室長級も審議官級以上に次ぐ平均値となっている。このように、部下や後輩職員に範を示すべき立場にある職員のコンプライアンスに関する意識が高いことは、評価すべき点であるとも考えられる。しかしながら、今回の意識調査を実施した後、幹部職員や管理職員が倫理法等違反で処分される事案が複数発生しており、こうした一連の不祥事により、行政や公務員への国民の信頼が揺るがされ、日々職務に精励している多くの職員の士気にも悪影響を与えかねない事態が生じていることも事実である。

(対応方策)

コンプライアンスに関して不断の取組を行うことは、コンプライアンスに対する職員の感度を高めるとともに、組織やその職員に対する国民の信頼感を高め、その組織に対する魅力の向上にもつながるものである。組織としてコンプライアンスに関する研修を実施することは重要であり、特に幹部職員や管理職員に対する研修を一層徹底する必要がある。

各府省庁においては、役職段階別研修においてコンプライアンスに関する内容を盛り込むとともに、国家公務員倫理月間をはじめとした啓発期間においてコンプライアンスに係る研修を定期的に実施しており、ほとんどの職員が毎年のようにこのような研修を受講している。研修の内容も、制度的な解説だけでなく、具体的な事例も取り入れるなど職場の実態を踏まえたものとなっている。職員としては、このように提供された研修等の内容を、「他人ごと」と思わずに、職員自身の業務や職場の状況に照らして咀嚼そしゃくすることが、コンプライアンスに対する感度を高める上で重要となる。

組織を束ねる立場にある幹部職員や部下を持つ管理職員の意識は、組織風土の醸成に大きく影響を与えるものであり、部下職員にとっても、コンプライアンスを考える上で一つの手本となるものである。事あるごとに、自分自身がコンプライアンスについて思いを巡らせ、また部下に対してメッセージを発信していくことが重要である。そのメッセージは、抽象的なものや制度的なものだけでなく、所属する組織に合致した具体的なものとし、メッセージを受け取った職員が「自分ごと」として捉えられるようにすることが肝要である。