第2編 国家公務員倫理審査会の業務

第1章 職員の倫理意識のかん養及び倫理的な組織風土の構築

2 倫理的な組織風土の構築

倫理保持の徹底を図るためには、職員一人ひとりの倫理意識をかん養するだけでなく、各職場において倫理的な組織風土を構築していくことが極めて重要であり、各府省等に対して、上述した懇談会や制度説明会、国家公務員倫理月間などの機会を通じて、職場での相談を促す環境づくりや、組織内外の相談・通報窓口の周知と利活用促進に向けた要請を行うとともに、倫理的な組織風土構築のための取組例などを幅広く周知し、各部局での取組の参考にしてもらうこととしている。

また、倫理審査会からの働きかけを踏まえ、多くの府省等において組織外に弁護士事務所等を活用して設置する外部窓口が設置されている。倫理的な組織風土を構築する観点からは、相談・通報の体制を整備するのみでは足りず、それが利用されることが重要となる。これら窓口の利用が促進されることは、その組織が倫理保持を重視していることを示すことになるだけでなく、違反行為に対し早期に認識・対処することで事態の深刻化を防ぐことにもつながるものである。

こうした観点から、令和2年度においては、次の(1)及び(2)の業務を実施した。

(1)相談・通報窓口の周知

組織内外の相談・通報窓口の体制整備は各府省でほぼ整えられてきたが、職員に対するアンケート結果によると相談・通報窓口の存在を知らない職員も依然として一定数存在することから、相談・通報窓口の一層の周知に取り組んだ。具体的には、国家公務員倫理月間の時期に合わせて作成している職員向けパンフレットに倫理審査会が設置している公務員倫理ホットラインの連絡先並びに各府省等が設置する相談・通報窓口の内部窓口及び外部窓口の連絡先を記載する欄を設け、各府省等が当該欄に必要事項を記載した上で職員に周知することとした。また、職員が常時携帯できるように配布している国家公務員倫理カードについて、各府省等ごとの相談・通報窓口が記載されているものを配布した。

職員に対するアンケートによれば、相談・通報したことにより不利益な取扱いを受けるおそれがあるのではないかなど、相談・通報に対して懸念を持つ職員もいるため、相談・通報窓口を周知する際には、相談・通報者が不利益な取扱いを受けないよう万全を期していること、匿名による相談・通報も受け付けていること、通報後の流れなども併せて周知するとともに、各府省等に対してこれらの事項を周知するよう要請した。


研修教材やパンフレット等に掲載している公務員倫理ホットラインの周知例

(2)相談しやすい職場環境の構築

職員を対象とするアンケート結果を見ると、倫理法・倫理規程に違反すると疑われる行為を見聞きした場合には、約7割の職員が上司など職場の他の職員に相談する、約2割の職員が所属組織等の相談・通報窓口に相談すると回答している。このように倫理法・倫理規程に違反すると疑われる行為を行ってしまう前に、あるいは倫理法等違反といえるか必ずしも判然としなくとも疑義が生じた際に、当事者が立ち止まり、職場の身近な上司・同僚に相談を持ち掛けたり組織内外の窓口に相談することは、倫理法・倫理規程違反を未然に防止し、事態の深刻化を防ぐ上で効果的である。

そこで、倫理審査会が行う研修・啓発活動や各府省への研修支援の教材等において、繰り返し職場でのコミュニケーション・相談等の重要性を強調するとともに、実際にそうした事態に直面した場合にどのような行動がとれるかグループ討議を行わせたり、官房長等との懇談会や倫理事務担当者向けの倫理制度説明会等の機会を捉え、各組織の窓口においてこうした相談等も受け付けていることを周知すること、相談しやすい職場環境を構築することなどを促した。

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