第1編 人事行政

第2部 人材確保に向けた国家公務員採用試験の課題と今後の施策

はじめに

近年、国家公務員志望者の減少や若年職員の離職者の増加が続き、行政を支える人材の確保が困難な状況にあるとの指摘が各方面からなされ、人事院としても強い危機感を持っている。

国家公務員志望者の減少の背景についてはこれまでも様々な指摘がなされてきたところであるが、人事院が2021年度に実施した就職活動を終えた学生向け意識調査によれば、国家公務員を就職先として選択しなかった理由として、長時間労働や業務の他律性等を始めとする勤務環境に対する不安が主な理由の一つとして挙げられていた。また、人事院が同年度に総合職新規採用職員を対象に実施したアンケートでも、優秀な人材を確保するためには、超過勤務や深夜勤務の縮減が最も重要との回答が得られたところである。

こうした状況を踏まえれば、国家公務員志望者を確保していくためには、各府省における働き方改革を進め、職員の能力を十分に引き出し、組織のパフォーマンスを向上させることが重要であることは言うまでもない。人事院としても、このような認識の下、2021年の人事院勧告時に行った「公務員人事管理に関する報告」において、良好な勤務環境の整備のための方策として、長時間労働の是正や柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等に関する方策の検討を表明したところである。

一方、上記の学生向け意識調査において、国家公務員を就職先として選択しなかった理由として最も多かったのが「採用試験の勉強や準備が大変」であった。採用試験準備を負担と捉える背景には、国家公務員やその職場のイメージが低下しているがゆえに、試験を受けてまで国家公務員になりたいと思う学生が減っていることが可能性として考えられる。こうした状況の中で志望者を増やしていくためには、上記のような職場環境の改善を始めとする様々な取組とともに、採用試験の在り方に関しても、志望者にとって受験しやすくするような方向性で見直しを行うことも必要不可欠である。

このような課題認識に基づき、本稿においては、採用試験の在り方に焦点を当てることとした。具体的には、採用試験の実施結果や採用状況を詳細に分析・紹介するとともに、上記の学生向け意識調査を始めとする各種調査結果や、大学教職員・各府省人事担当者への個別ヒアリングを通じ抽出された課題を踏まえ、採用試験の今後の在り方について、人事院として必要と考える見直しに向けた施策を述べることとしたい。

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