第1編 人事行政

第2部 人材確保に向けた国家公務員採用試験の課題と今後の施策

第4章 人事院として取り組むべき採用試験見直し

第1節 2022年度中を目途に方針を打ち出すべき施策

2 幅広い専門分野の人材が受験しやすい総合職試験の実現

(1)「教養区分」受験機会の拡大

第1章のとおり、総合職試験全体の申込者数が減少し続ける中、専門分野に関係なく受験できる「教養区分」の申込者数は堅調に推移している。また、各府省からもコミュニケーション能力が高い者が多い等の理由から、「教養区分」合格者数を更に増やしてほしいとする声が多い。

採用率が他の試験区分と比べ高い状況も踏まえれば、各府省の採用実績とのバランスを図りつつ、多くの志望者が「教養区分」を受験しやすくなるよう受験機会を拡大する必要がある。2021年度までの「教養区分」第1次試験地は東京都・大阪市の2地域であり、首都圏・近畿圏以外の学生にとっても受験しやすい状況に改善していくことが重要となっている。このような課題認識に基づき、2022年度試験から第1次試験地に札幌市・福岡市を追加することとしたところであるが、更なる試験地拡大についても準備を進めることとしたい。

(2)人文科学専攻者が受験しやすい試験区分

第1章のとおり、採用者に占める人文科学専攻者の割合が上昇傾向にある。また、現行の総合職試験においては、人文科学専攻者の多くが「法律区分」等で合格し、採用されている。すなわち、人文科学専攻者の多くは、自らの専攻以外の専門科目を公務員試験のために追加的に勉強することが必要になっている25

こうした状況を踏まえれば、人文科学専攻者が自らの専攻分野で受験しやすい試験区分を設けることは、採用試験の間口拡大の一環として有効な施策と考えられることから、具体的な試験区分の在り方について、各府省のニーズを踏まえながら、早急に検討を進めることとしたい。

25現行試験でも人文科学系分野の一部(心理・社会・教育)に対応する「人間科学区分」があるが、採用が一部の府省に限られており、採用者数も少数にとどまっている。事務系区分として幅広い府省での採用を視野に入れている人文科学専攻者は、「法律区分」等を受験しているものと考えられる。
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