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第1編 《人事行政》

【第2部】 東アジア諸国と我が国の公務員制度

第1章 東アジア諸国等における公務員制度改革の取組と人事院の支援

第3節 国際機関を通じた腐敗防止の取組への貢献

2 腐敗の防止に関する国際連合条約

(1)腐敗の防止に関する国際連合条約の策定、活動等

上述したOECD外国公務員贈賄防止条約の採択等、腐敗問題に対する国際的な議論の深まりを受け、2000年12月、腐敗行為の防止に関する包括的な条約を起草するための政府間特別委員会が国際連合総会決議によって設立され、2003年10月31日、「腐敗の防止に関する国際連合条約(以下「国連腐敗防止条約」という。)」が国際連合総会において採択され、2005年12月14日に同条約が発効した。2015年4月現在、ASEAN諸国を含む175の国等が同条約を締結している。我が国は、2003年12月に署名し、2006年に締結について国会承認を得たところ、必要な国内法の成立を待って締結することとしている。

この条約は、腐敗を、民主主義の制度及び価値、倫理上の価値並びに正義を害するとともに、持続的な発展及び法の支配を危うくする重大な問題であるとし、腐敗行為を防止し、及びこれと戦うため、公務員に係る贈収賄、公務員による財産の横領等一定の行為の犯罪化、犯罪収益の没収、財産の返還等に関する国際協力等について規定している。

国連腐敗防止条約には、人事行政に関し、公務員の採用、昇進、退職等人事管理において、効率性・透明性原則及び能力、公平、適性等の客観的基準原則に基づくことや、適正な給与等の設定の促進等とともに、公務員の誠実性、廉直性及び責任感を高めるよう求める規定が盛り込まれている。

同条約の履行のため、締約国の制度・実施体制の整備、締約国間の協力の推進、実施状況の把握・評価が必要であり、2006年から、およそ2年に1回、締約国会議が開催されている。近年においては、2009年11月にカタールで開催された第3回締約国会議における決議において、①腐敗防止措置に係る分野における知見の蓄積、②腐敗防止措置について締約国間における情報・経験の交換の促進、③腐敗防止措置のベストプラクティスの集積等、④腐敗防止のための市民社会も含めた関係部門間の協力の促進の4項目を主な任務とした防止措置作業部会が設置された。

(2)人事院の関わり

我が国は未締結の署名国であることからオブザーバーとしての参加となるが、人事院は、所掌する一般職国家公務員に関連する議題が取り上げられる会合に、我が国政府の代表の一員として職員を派遣してきている。2012年には、公務員の行動規範、公務員制度における効率性・透明性原則及び客観的基準の確保、腐敗防止に係る教育及び訓練の促進、公共調達等に係る利益相反や腐敗及び財産報告制度等が議題として取り上げられた第3回防止措置作業部会において、多様な方策による現状の把握・分析に基づき課題を明確化した上で、腐敗防止に向けたより効果的な予防策を策定するという我が国の教育及び訓練における積極的方策について説明を行うなどした。


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