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第1編 《人事行政》

【第2部】 東アジア諸国と我が国の公務員制度

第3章 我が国の公務員制度と今後の国際協力

第1節 我が国の公務員制度

4 給与その他の勤務条件

国家公務員も憲法第28条に定める勤労者として、同条の労働基本権の保障が及ぶとされているが、国家公務員は、その地位の特殊性及び職務の公共性に鑑み、憲法で保障された労働基本権が制約されている。その代償措置として、人事院が国会及び内閣に行う勧告に基づいて、法律により給与その他の勤務条件を定める仕組みを採っている。

人事院は、毎年、国家公務員の給与について国会及び内閣に対して必要な勧告を行い、基本的に完全実施されている。人事院が給与勧告を行うに当たっては、労使交渉等により決定された民間賃金水準に準拠することが適当であることから、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本としている。このため、人事院は、約12,400民間事業所(平成26年調査)を対象に民間企業従業員の給与を調査した上で、主な給与決定要素である役職段階、勤務地域、学歴及び年齢を同じくする公務員と民間企業従業員の給与額を対比させ精緻に比較して、官民較差を算出し、これを解消するよう公務員給与を改定する勧告を行っている。勤務時間・休暇等給与以外の勤務条件についても、民間準拠を基本に決定している。

国家公務員の給与は、長期雇用を前提とした処遇体系として、国公法が定める職務給の原則に基づき、基本給である俸給と、扶養手当、住居手当、通勤手当、地域手当等の諸手当とから構成されている。人事院の給与勧告においては、給与水準の改定のみならず、職員団体等からの要望や意見等の聴取も行うなどして、俸給及び諸手当の配分や制度の見直しも行っている。

公務員給与については、公務員の職務を取り巻く環境の変化に対応するとともに、職員の年齢構成の変化、民間における給与制度の見直し等を考慮した不断の見直しが必要である。平成27年4月からは、地域間の給与配分の見直し、世代間の給与配分の見直し、職務や勤務実績に応じた給与配分を行う給与制度の総合的見直しが行われている。

ASEAN諸国では、これまで西欧型の労使交渉による勤務条件決定はシステム化されていないが、今後、民主化等が進むにつれ、職員から給与決定等のプロセスへの参加要求が高まることも考えられる。その際には、民間給与調査や官民比較等の技術面だけでなく、勧告制度等給与決定制度をいかに構築するかということも課題となり得るものと考えられる。


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