第1編 《人事行政》

【第2部】 在職状況(年齢別人員構成)の変化と人事管理への影響

第3章 在職状況の変化がもたらす課題と人事管理上の対応

第2節 課題と人事管理上の対応

2 職員の育成・活用に関する課題

各役職段階に応じた行政官として必要な能力・資質を持つ職員を育成していくためには、人事当局が、個々の職員をどのように育成していくかという視点に立ち、職員の能力・適性に応じた計画的な配置を行い、多様な勤務機会を計画的に付与したり、専門能力を高めさせていくことが必要である。こうした職務経験を通じた育成に加え、職員の自発的な能力向上への意欲を高めていくことや節目節目における研修の機会を有効に組み合わせること等を通じ、適切に人材育成を行うことが必要となっている。

(1)職場における人材育成

職員の人材育成については、職場における執務を通じた人材育成が基本であり、職員の能力・適性を踏まえた計画的な配置や若年層の気質を踏まえた育成手法を通じ、若年層の仕事への取組意欲を高めながら必要な育成を着実に行い、併せて管理職層のマネジメント経験を積み上げていく取組が必要である。

第1章で述べたように、各府省においては、職員の能力開発のための人事配置の柔軟化を行っている府省や個々の職員へのキャリアパスの提示によってモチベーションの向上を図るとともに計画的な育成を行っている府省も見受けられるところである。

人事評価の実施等を通じた職員の能力・適性の把握や必要な指導助言を管理職員が行うとともに、人事担当部局が、各職種や職場における人員構成や将来ニーズを踏まえたキャリアパスのイメージを策定し、これに基づく計画的な配置を行っていくことが、人材育成の観点からも重要となっている。

この点に関しては、第1章で述べたような職場におけるマネジメントを経験する機会の減少を補完するため、人事院としては、地方機関の係長等を対象とした各府省合同研修において、業務と職員のマネジメントを考える機会を提供すること等により、職員のマネジメント能力を高めることを主眼とした研修機会の拡充を図ることとする。特に、地方機関の若年層や中堅層の職員が業務の合間に、短期間で参加できる研修の機会を拡充し、その活用を促していくこととしたい。

(2)研修の充実

近年、定員合理化や社会経済情勢の変化等により公務運営の環境が一層厳しくなる中で、職員の育成が、従来行われてきた各職場における職務を通じた人材育成だけでは十分に行うことが困難になってきている。このため、これを補完するための職場を離れて他府省等の職員と能力を高める機会である研修の果たす役割が重要になっている。

人事院としては、職務を通じた人材育成を補完するため、若手職員を対象に柔軟な思考につながる気付きの機会を与え、また、国民全体の奉仕者としての職業倫理を涵養するための研修を着実に実施するとともに、上記(1)で述べた地方機関の係長等を対象とした研修の実施を含む業務や人のマネジメント能力を向上させるための研修カリキュラムの拡充を行っていく。

特に、自ら気付き学び取ることを苦手とする傾向にある若者の気質を踏まえると、節目節目において、それぞれ異なる職場で働く同程度の経験を持つ者が集まり、府省の枠組みを超えて自らが国家公務員として果たすべき役割を再認識したり、これからの能力の開発・向上に取り組む動機付けを行うことが重要である。人事院としては、各府省の行政運営の中核を担うことが期待される職員等を対象としている行政研修について、更にきめ細かいタイミングでもこれを提供すべく検討してまいりたい。

このほか、本節1(2)に述べた女性職員の登用拡大のための研修、1(3)に述べた中途採用職員を対象とした研修、5(2)に述べる再任用職員のモチベーションの維持のための取組への支援等も含め、各府省等と連携しつつ、各種人事施策の推進に当たって必要となる研修の充実を可能なものから着実に実施していく。

(3)研修受講機会の拡充

各役職段階に応じた国家公務員として必要な能力・資質を持つ職員を育成していくためには、職員の能力・適性に応じて多様な勤務機会を計画的に付与し、その勤務を通じて人材を育成していくことを基本としつつ、節目節目における執務を離れた研修を有効に組み合わせることによりこれを補完することが必要となっている。

他方、第1章で述べたように、各府省においては、職員の業務多忙により必要な研修機会の付与を行う人事管理上の余裕がない状況となっており、国家公務員としての能力・資質の向上のために必要な研修受講機会が職員に十分に提供されていない面もある。人材育成がもたらす中・長期的な効果を踏まえると、必須とすべき年間研修受講日数を設定するなど、職員の研修受講機会の確保のための取組も進めていく必要がある。

(4)多様な経験による人材育成・活用

職員の人材育成の観点からは、公務内外において多様な経験を積ませることにより、個々の職員の能力を伸ばしていくことも重要である。このため、他府省、地方公共団体、独立行政法人等への出向や官民人事交流による民間企業等への派遣の機会の拡充等を図ることが考えられる。また、グローバル化に対応できる人材を育成していくためには、長期在外研究員制度等の活用により留学の機会を確保するとともに、各府省において職員の国際機関等への派遣の機会を増やしていくことも重要である。

職員がその能力と経験を公務外で積極的に活用することは、個々の職員のモチベーションの向上にもつながることから、そうした観点からも、例えば、国際協力や国際標準化、地方創生等の分野において、上述のような機会の拡充を図ることが必要である。

諸外国における知識の継承のための取組

既に職員の大量退職期を迎えている英国及び米国並びに今後迎えることとなるドイツでは、職員の大量退職に伴って経験知まで失われるおそれがあるとして、以下のような知識継承のための取組を行っている。なお、フランスでは、業務に必要な知識やノウハウは公務員の採用・育成・研修機関で習得するものと考えられており、世代間の知識の継承のための特別な取組は行われていない。

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