第1編 《人事行政》

【第2部】 次世代の行政の中核を担う30代職員の育成と公務全体の活性化 ~意識調査を通じて課題と対策を探る~

はじめに

人事院は、平成27年度の年次報告書第2部において、国家公務員の在職状況(年齢別人員構成)の変化と人事管理への影響を取り上げ、40代と50代の職員数が20代と30代の職員数の約2倍となっており、20年後を想定すると公務で経験を積んだ管理職員やベテラン実務者が極めて少なくなるなどの問題意識の下、その原因や影響、課題等について考察した。

また、平成28年度の年次報告書第2部においては、魅力ある公務職場の実現に資することを目的として、職員の意識を調査し、その結果を報告した。この調査は、行政職俸給表(一)が適用される本府省職員を対象として、民間企業や地方公共団体、外国政府において広く実施されている「従業員満足度調査」の手法を活用し、初めて府省横断的に国家公務員の意識を多角的・包括的に調べたものである。同報告書では、調査の結果に基づき、国民や社会に奉仕できること、仕事のやりがいがあること、コンプライアンス等の面で職場環境が良好であることなどが公務職場の魅力となっていることを確認し、一方で、職員の人事配置や人材育成の方向性、職場の活力の低下、業務負荷の影響等については、将来の公務運営の課題となることを明らかにした。

あわせて、同報告書では、調査結果から職員の属性別の満足度の傾向についても分析をしており、年齢別でみると、30代の職員の回答の平均値が最も低いことを指摘した。

30代職員は、採用後まだ数年といった経験の浅い20代の職員と40代以上の管理職員の間で、役職段階で言えば係長・課長補佐級として、まさに、現在、実務の中核となって活躍している世代に当たっていることから、この世代が抱えている課題は、多くが公務職場全体に関わるものであるとも考えられる。また、将来に目を向ければ、30代職員は、10年後、20年後には、経験豊富な管理職員又はベテラン実務者として質の高い公務サービスを提供することが期待される層でもある。

30代職員が高い意欲をもって日々の業務でいきいきと活躍できる職場を実現することは、現下の公務職場の活性化につながるものであり、30代職員の育成を適切に図っていくことは、将来の公務能率を維持・向上させるために不可欠な要素である。

これらのことから、30代職員を取り巻く環境等について整理した上で、平成28年度に実施した調査の対象のうち30代職員及びその上司に当たる課長級職員に対して改めて具体的な項目についてアンケート調査を行うなどして、30代職員や公務全体を取り巻く課題を考察するとともに、それらに対する方策についても提起したい。

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