第1編 《人事行政》

【第2部】 次世代の行政の中核を担う30代職員の育成と公務全体の活性化 〜意識調査を通じて課題と対策を探る〜

第3章 課題と対応の考察

第2節 対応の考察

1 職場環境面の対応 〜いきいきと働くための職場環境づくり〜

(1)若手職員の意見を積極的に取り入れた業務効率化・合理化の推進

今回調査の結果から、職場環境面については、まず、長時間労働の是正と業務改善という課題がみられた。

長時間労働の是正については、30代職員、課長級職員とも、多くが業務量に応じた職員の配置を求めている。この点については、平成29年の人事院勧告時の報告でも指摘したとおり、まずは各職場における管理職員による業務管理の強化や業務の削減・合理化が不可欠であり、これらを進めてもなお恒常的に長時間の超過勤務を行わざるを得ない場合には、業務量に応じた要員が確保される必要がある。

一方、業務改善については、府省のトップの強い取組姿勢が求められるところであるが、30代職員調査では、回答者の8割以上が業務改善について意見を持っていることが明らかとなった。より効率的な業務遂行を進める観点から、各部署の業務において30代職員が積極的に新しい提案やチャレンジを行うことができるような場を設け、上司も含めて一体的に改善に取り組み、その結果として実際に業務改善が図られれば、自らの勤務環境が改善されるだけでなく、成果、やりがいの実感を通じて、モチベーション向上にも好影響を及ぼすものと考えられる。

府省によっては、既に若手職員が中心となって「業務改革チーム」を組織し、業務改革の検討を行うなど業務効率化に向けたボトムアップ型の体制を構築しているところもあり、今後、そのような取組を参考として若手職員のアイデアを活かしていくことも考えられる。その際には、人事当局や上司等には、若手職員が積極性と主体性を持ってそれらの業務に携わることができるよう、体制整備や業務負荷への配慮等の支援を行うことが求められる。

(2)人事当局・管理職員・職員の連携、コミュニケーションを踏まえた適正な業務配分と人事配置

業務負荷が高いことについては、30代職員、課長級職員とも認識を一にしているが、4割以上の30代職員が偏りのない業務分担を求めているのに対し、課長級職員では、そのような回答は1割台前半にとどまっている。

特定の職員への業務の過度な偏りや集中は、モチベーションの低下や体調面への悪影響をもたらす。今回調査の結果からは、管理職員は、これまで以上に、部下職員と十分なコミュニケーションを図り、業務の量や分担を日常的に把握して配分するよう努めるとともに、人事当局は、各部局の業務の繁閑を把握し、臨時的に応援要員を配置するなど柔軟な人事配置を行うよう努める必要がある。

人事配置については、職員の適性に応じて行うよう求める意見が課長級職員に多い。また、30代職員は約6割が現在の仕事が自分に合っていない、どちらでもない又は分からないと答えている。長期的・計画的な人材の育成と選抜の観点や時々の行政需要の状況から、常に職員のその時点での適性に合った人事配置ができるものではないが、人事当局は、管理職員と十分な連携をとって一人一人の職員の適性を把握し、可能な限り人材育成と職員の適性のバランスを考慮した配置に努めるとともに、職員への説明等を通じてモチベーションの維持・向上を図ることも考えられる。

○ 民間企業等における取組例

民間企業においては、会社及び社員がWin-Winの(共に利益を享受する)関係を築くことは会社全体のパフォーマンスの向上につながるものであり、社員の特性だけでなく、社員のキャリアに関する意向、社員の置かれている育児・介護等の家庭状況など様々な情報を加味した人事配置を行わなければならないとの考え方から、社員の持つ知識、経験、スキル等をデータベースで管理し、「見える化」に取り組んでいる事例がみられる。既に一部企業においては、「見える化」した情報の具体的な利活用を図る試みが始められており、これらの情報に基づき、各部署のハイパフォーマーを客観的に分析し、各社員とどの程度一致するかを判断することで、その社員が特定の部署に異動した場合の活躍確率を求め、人事異動計画の判断材料としている例もある。この企業では、人事異動計画は最終的に人が判断する点においては従前と変わらないものの、人事という経験と勘で判断していたものがデータ上からも見えてくることが確認できたことの意義は大きかったとしている。

(3)職員の事情に応じた柔軟な働き方の促進

30代は、結婚・出産等のライフイベントが生じる時期であり、仕事と家庭をいかに両立していくかという課題が近い将来への不安として顕在化している。

もとより、公務に支障のない範囲で、一人一人の職員が置かれている事情に応じた働き方ができる選択肢を整備することは、職員の能力を十分に発揮させる土壌となるものである。両立支援に係る制度は、近年、整備が進められているところであり、人事院としても社会経済情勢を踏まえつつ、更に改善すべき点はないか不断の見直しを進めている。一方で、不安の解消には、制度の整備にとどまらず、制度を利用しやすい環境整備や個別の事情への対応が不可欠であり、人事当局において個別の状況を把握して丁寧に対応するとともに、制度の利用に伴い周囲の職員の業務負荷が過重となることがないような体制づくりを行うことが必要である。また、仕事と家庭生活の両立のイメージを具体的に持てないことも職員の不安の原因となっていると考えられるため、実際にこれらの制度を活用し、活躍している職員に助言をしてもらう機会を増やすことも有効であると考えられる。

柔軟な働き方の一環としては、リモートアクセスの活用も有効と考えられる。既に政府全体として進めることとされ、実際に携帯電話やパソコンから答弁資料の確認を行うことにより国会待機時間を減らすなどの成果を上げている府省もあり、セキュリティ上の問題や設備の整備の状況等を踏まえつつ、これらの先進事例も参考に活用を進めていくことが望ましい。